もはや我々は宿に泊まるたびに旅行をしているといっても過言ではありません。いや過言か。
とはいえ、たとえ素泊まりで寝るだけの場所であっても、妙に印象に残ってしまう宿というのはあるものです。
今までに泊まった宿の中で、特に印象に残っている思い出の宿について、ライターに聞きました。
思い出の宿たち
こんにちは、編集部 石川です。
当サイトで8月にヒットした記事がこちら。
この記事ははげます会限定記事ということで非会員の方は途中までしかお読みいただけないのですが(すみません!)それにもかかわらず異例のヒット作となりました。
そんなわけでこの記事にちなみまして、この記事ではライター&編集部のメンバーに「今までに泊まってよかった宿/印象に残ってる宿」をきいてみました!
深夜の空港内を臨むトランジットホテル
泊まった人:
拙攻
トランジットホテルって憧れますよね。一度だけ、思い切って韓国・仁川で泊まりました。やたらと割高だし、わざわざホテルとらなくても空港には無料の寝床が点在しているので、これはかなりの贅沢です。
内装はごく普通の小綺麗なホテルなんですが、窓からの景色。これが最高です。とっくに灯を落として閑散とした空港通路がどーんと眼前に広がります。このわくわくするほどの寂寥感。夜の砂漠のようです。見たことないですけど。
この晩はカーテン全開で、「10番ゲート」と「ダンキンドーナツ」の冷たい光に抱かれながら眠りました。
イタリア・とんがり帽子のようなゲストハウス
泊まった人:
月餅
イタリアの”かかと”らへんに位置するアルベロベッロという街に行った時のことです。
ゲストハウスを予約していたのですが、ほぼ非観光地で、英語が通じず、空港からの電車を間違えまくり、チェックイン時間を大幅に遅れてしまいました。
迷子になり途方に暮れていると、中年女性と中学生くらいの女の子が車から降りてきて「ゲッペー?」と聞いてきました。ゲストハウスのオーナーさん親子でした。
名前からアジア系と推測し、町中を車で探し回ってくれていたのでした。
オーナーさんも英語が話せないため、終始娘さんの、中学で習っているという英語を介してコミュニケーションを取りましたが、直接言葉が通じなくてもやさしさが伝わってくるオーナーさんのお人柄に、いい宿を当てたなあ~としみじみと思いました。
アルベロベッロは「トゥルッリ」というとんがり帽子のような家屋が世界遺産認定されていて、オーナーさん別宅のトゥルッリに泊まれたことも、素敵な記憶としてたまに思い出します。
指輪が溶けてなくなる温泉
泊まった人:
宮城剛
高校生のとき(1990年代前半くらい)に家族旅行で宿泊した国民宿舎が、古くてボロボロで楽しかったです。
ロビーにカラフルで綺麗なニッキ水という飲料が売っていたのですが、何年も置きっぱなしのようで埃まみれでした。
大浴場が源泉掛け流しの温泉で湯の花が泳ぎまくりで成分がきつかったらしく、母がしていた指輪が溶けてなくなりました。
縦ならびのツインルーム
泊まった人:
林雄司
松山に行ったときに泊まったホテルがベッドが縦並びのツインルームでした。ネットで見かけてどうしても泊まりたかったのでひとりでツインに泊まりました。リュージュ気分。
泊まってみると奥のベッドはほぼ手が届かず、手前のベッドに寝て帰りました。
東京の山奥の宿で謎の声を聞いた
泊まった人:
井口エリ
記事「東京の山奥で滝行をした」で紹介した宿なんですけども、東京の山奥で滝行し、自家菜園で作った野菜や手作りのこんにゃくなんかを食べてすごく良かったです。
このあたりには武蔵御嶽神社の神主が主人を務める宿坊がたくさんありますが、私が泊まったところもそのひとつ。
宿坊の中には祭壇があって、ひとつひとつが神社みたいで面白いです(宿泊者限定の御朱印ももらえました)。
そんな場所だからか、宿で不思議な現象が起こって面白かったです。(怖い話だったらごめんなさい)
宿について荷物を置いて一休みをしていた時、同行した友達(Kちゃん)が大家さんに電話していたんですよね。
この時Kちゃんが電話していた理由は忘れました。家を空けるから、という感じだったけど一泊二日でわざわざ電話しないと思うので…。
Kちゃんが電話を切った後、友達の電話から「アハハハハ」と男とも女ともわからないような、機械を通した笑い声が聞こえてきました。
私は単純にKちゃんが電話を切り忘れたんだと思い、「Kちゃん電話切れてないよ」と声をかけたのですが、電話は切れていました。
しかも、私は友達の電話の方から声がしたと思いましたが、Kちゃんは私の座っている長椅子の方向からしたように感じたそうです。
声の方向は違くとも、ふたりとも同じような謎の声を聞いていたことにゾッとしました。
でも、嫌な感じはしないしむしろ清々しくて、幽霊的なものじゃなくて、なんかトトロ的なものだと思っています。
そしてこの後、宿で動画を撮ったらぴょこぴょこ跳ねる緑の光が写って「座敷童では!?」と興奮しましたが、今は普通にiphoneの構造上の性質によって発生する光反射かなと思っています。
でも謎の声を聞いた後だったのでその時は本当に座敷童かなと思っちゃいました。
奥多摩には普通に何かいると思います。
宮島の景色と『伝染るんです。』
泊まった人:
唐沢むぎこ
高校時代に家族と行った、「宮島 錦水館」がステキでした。厳島神社の近くの海の眺め、瀬戸内の素材を使った絶品の料理に、家族全員「良すぎるなあ…」と呆然としました。
私が最も歓喜したのが、館主さんセレクトのブックカフェです。本棚の中に、当時とても読みたかった吉田戦車『伝染るんです。』があったのです。宮島の景色そっちのけで全5巻を読みました。いつか館主さんとお話しがしたいです。
福岡で有名なラブホテル「チャペココ」
泊まった人:
小堺丸子
やはり福岡で有名なラブホテル「チャペココ」ことチャペルココナッツではないでしょうか。宿泊はしていないのですが、5時間コースで取材させてもらい、とても楽しかったです。
福岡で知名度No.1のラブホ「チャペルココナッツ」のメニューが凄い!
THEラブホな見た目ですが、とにかく料理が豊富(567種類のメニュー※取材時)で美味しく、滞在時間を飽きさせないように色んなものが用意されています。絵本もあるくらいなので家族でも楽しめるし、カラオケし放題なので女子会にもピッタリ。
目の前はコンビニで、自由に外に出てOKなので通常のホテル使いが可能です。また福岡に行った時はできればチャペココに泊まりたいと思っていますし、皆さんも一度行ってみてほしいです。
オフ会でまさに「作品に出てきそうな宿」
食べた人:
米田梅子
5年ほど前のことです。
仲がいいTwitterフォロワーを誘って、好きな漫画に出てくる舞台を巡る一泊二日の小旅行オフ会をしました。場所は愛知県 尾張北部です。
せっかくなら泊まる場所も作品に出てきそうな宿にしようと、老舗の旅館を選びました。
Webの情報から、とても古い旅館であることは察していたのですが、実際に行ってみると想像以上にレトロ。
玄関へと続く小道、小さくともどっしりとした日本家屋の佇まいは、舞台セットのような「The 旅館」。
夏休み期間の連続昼ドラマに出てきそうな趣です。
内装もかなり年季が入っていて、全体的に明度が低い。お風呂・お手洗いは他のお客さんと共同。障子と襖で区切られているだけで鍵の無い和室も逆に新鮮で、タイムスリップしたような気持ちになりました。
客を選ぶ旅館だと思いますが、この旅行のテーマである漫画の世界は昭和初期の日本。まさに「作品に出てきそうな宿」で、オフ会メンバーと目をキラキラさせながら過ごしました。
質問にも快く答えてくれたり、わざわざ庭を見せてくれたりとおかみさんの心遣いもありがたく、いい宿、いいオフ会だったな〜と記憶しています。
ちなみに愛知県江南市 松里旅館という宿です。
洞窟みたいな暗さの部屋
泊まった人:
安藤昌教
僕が出張中に家族がコロナ陽性になったため出張先から帰れなくなり、隣町のホテルで自主隔離となりました。(自分は感染していませんが家族からの感染を防ぐため)
長くなりそうだったので安いところを探して入ったんですが、部屋に窓がなくて照明も足元に間接照明があるだけの洞窟みたいな暗さの部屋でした。
あまりの閉そく感に耐えられなくなり、夜な夜なマンガ喫茶に朝までプランで入って原稿を書いたりしていました(なら部屋いらないのではと思った)。なんであそこまで暗くする必要があるのか。
朝食付きで1階のイタリアンレストランで食べるんですが、ずっと和食だったのも謎です。
沢田マンションに素泊まり
泊まった人:
こーだい
今年の5月に高知の沢田マンションに泊まりました。
日本最大の違法建築物として軍艦島マンションの通称で有名になった物件です。
マンションなので基本的には入居者しか入れないんですが、2部屋だけ素泊まり用の宿として貸し出されてるんですね。
初日、管理人夫婦に挨拶しようと屋上の管理人室に行ったら、部屋の前に軽トラが駐車されてて時空が歪んだのかと思いました。
車の通れるスロープがあったり一部の廊下が意図的に広く作られたりしているおかげで、ルートを選べば地上から最上階まで車でアクセスできるとのことでした。
その他にもツッコミどころを挙げ始めるとキリがないんですが、一緒に泊まった友人が「他人の夢に迷い込んだみたい」と言い出すほど無茶苦茶な世界で、ここを散策するためだけでも高知まで来た甲斐があったと思いました。
なお部屋の内装は常識的な価値観で美しく仕上げてあり、自炊設備も充実しているにも関わらず一泊3500円で泊まることができます。
JR高知駅からもそこそこ近いので高知観光の拠点に最適です。
部屋が扇形のビジネスホテル
泊まった人:
石川大樹
新卒で入った会社で医療システムのSEをやってたのですが、導入病院が全国にあるのでけっこう出張が多かったんですよね。そこで飲み会の席なんかでたまに話題になってたのが「名古屋に部屋が扇形のホテルがある」。円柱形の建物を放射状に分割しているので、部屋が扇形らしいんです。
結局、名古屋出張の機会はなくその会社は辞めたのですが…。その7~8年後くらいでしょうか、デイリーで岐阜のイベントに出たんですよ。イベントが終わったらその日のうちに東京に戻るつもりが、打ち上げで飲みすぎて最終の新幹線を逃してしまって…。
仕方ないから途中まででも移動しておこうと思って、名古屋まで移動したんです。そこで空室のあるホテルをなんとか見つけて、チェックインしたら…部屋が扇形だったんです!
「ほんとにあったんだ…」というツチノコを見つけたような気持ちと、10年ごしの伏線回収に思わずテンションMAXになってしまいました。
ホテルの名前は憶えていますがあえて伏せようと思います。もし名古屋で部屋が扇形のホテルに当たったら「ここが…!」と思ってください。
ビジネスホテルの部屋に無理やりベッド
泊まった人:
ぬっきぃ
高校の修学旅行先が沖縄だったのですが、先生が黒板に図を書きながら「1日目と2日目がいいホテル過ぎて予算の関係で3日目はビジネスホテルの部屋に無理やりベッドを入れる形になります。図を見るとテトリスみたいだね」と説明してくれました。
その説明にギャルが「じゃ、ベッド揃ったら消えるんじゃね?」と返し、先生は「消せるもんなら消してみろ」と締め、その場は終わりました。
1日目2日目はオーシャンビューのホテル!しかし!前日の台風の影響の雨で外は灰色!何も見えず、外にも出れず誰かが持っきた64とプレイステーション2で遊びました。
そして迎えた3日目。
1〜2人用の部屋に無理やり押し込まれたベッドは、どのブロックが落ちて来ても消えそうもない配置で並んでいました。
いろんなところに泊まりたい
素敵な宿から妙なホテル、そしてちょっと怖い話まで、幅広いエピソードがありました。しかし旅先での出来事はそれらひっくるめて、すべて「旅情」の一言でいい思い出と化します。
旅行にも慎重にならざるを得ない状況が続きますが、また気兼ねなく楽しい旅ができることを祈って…!それまではデイリーポータルZでお楽しみください。(関係ない話題からの我田引水)