ふだん長崎のローカル記事をよく書いてるおかげで、
「懐かしい。」
という感想メールを頂くことがけっこうある。
懐かしいと言うからにはもちろん、以前長崎に住んでいたという方々からだ。
そしてたいていの場合、感想の他に昔よく通った食べ物屋の思い出なども書いてあるのだが、そこでなぜか
「長崎のお好み屋が懐かしいです。」
というコメントが多いことに、ある時、気付いた。
それも同じ人が何度もそう書いているのではなく、ぜんぜん別の何人もが、お好み焼き屋について言及しているのである。
※2006年9月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。1軒目のお店は残念ながらすでに閉店されていますが、続く2軒目、3軒目は現在も営業中のようです。
お好み焼き屋めぐりを
言われてみると、たしかに長崎には燻し銀的な、渋いお好み焼き屋をちらほら見かける。でもどうして長崎の思い出として、お好み焼きなんだろう?
そこで今回は、なぜか多くの人が懐かしんでいるお好み焼き屋の様子を見て回ることにした。
「商店」と書いてあるけど、お好み焼き一筋
最初に訪れたのは、三ツ幸商店というところ。
まずこの外観からして、たしかに
「おおおっ!」
と唸らされるものがある。
さっそく中に入ってみよう。
近い
入ると、目の前でいきなりおばちゃんが焼いている。
距離感がすごく近い。というか余分なスペースがまったくない。店内はカウンターのみ。で、椅子の後ろはすぐ扉。そしてその後ろはすぐ外。
まさに目の前で作られたものを、目の前で食べる。
感覚的には台所で食べるような斬新さがあった。
安い
そしてメニューが激安!
なんと一番安いお好み焼きは160円である。
いろいろ追加すると値段が上がっていく仕組みだが、それでもかなり安い。
ちなみに、「肉タマちゃん」と書いてあるのは、額に「肉」と書いたアザラシ(イメージ図)のことではない。肉と卵とちゃんぽん麺が追加されているという意味だ。
皿はない
皿はなく、鉄板の上で直接食べる。
そのすぐ近くでは、おばちゃんが別のお好み焼きを焼いている。
今回、何店かお好み焼き屋を巡ったが、どこも皿はなく、鉄板から直接取って食べていた。どうも、そういう文化らしい。
客のほとんどは常連のようで、なごやかムード。
バーのカウンターで常連客がマスターと会話しながら飲むような感じ。それのお好み焼き版。
常連になると、おばちゃんは顔を見ただけで注文内容がわかるようだ。学生さんが来た時、
「19番やろ?焼いとくけん」
と言っていた。あと女性客が多いのが意外な感じがした。
やがて私の分が焼きあがった。
うめええええっ!!
お好み焼きはストレートにうまかった。
まさに直球、ストライクのおいしさだ。
しかもこれで290円。
(イカタマ+野菜大盛り)
今どきこんな金額で昼メシが済んでしまうって、驚異的ではないだろうか? また来よう。というか、ハマってしまいそうだ。あ、そうか。こうして頻繁に通っていたかたが、長崎を離れて懐かしんでいるというわけか。なるほどなるほどなるほど。
食べ物の不思議な魅力
私も実家の茨城(つくば)を離れて今長崎に住んでいるわけだが、帰りたくなる時はやはり地元の食べ物屋の味を思い出した時だ。「丸長」という店の辛~いつけ麺を思い出して、何度食べに帰りたくなったことか。
食べ物には不思議とそういう魅力がある。
●お店データ |
ソフトクリームが有名な、お好み焼き専門店
次に訪れたのはソフトクリームが有名なところ。
なんでも13段とか15段とかのソフトクリームを作ってくれるらしく、やはり複数の方から「子供の頃よく食べた」「人気のスポット」というメールを頂いていたところだ。
看板には「お好み焼き専門店」と書いてあるが、その横には「ソフトクリーム」の文字。ちょっとした禅問答のようだ。
さっそく、名物のソフトクリームを注文。
でかい・安い・おいしい
どーん! 長い!
そして特筆すべきはその値段。なんと、120円なのだ。
120円!
120円なのに、どうしてこういうことになってしまったのか。
私が訪れた日も、ひっきりなしに子供や大人がソフトクリームを買いに来ていた。
何段なのか?
ところでコレ、実際は何段なんだろう?
私のところに来たメールでは、人によって13段だと言う人もいれば、14段だという人も。かと思えば15段だと言う人もいた。
一体本当は何段なのか、お店の人に尋ねてみた。
すると・・・。
「機械が変わったけん、今は何段かわからんさね。」
とのことだった。昔、機械(ソフトクリームをひねり出すマシン)が変わる前は「何段」というのが明確にあったそうで、その時は12段。なので、公表値としては一応今も12段ということにしてるらしい。
お好み焼き屋だよ
おっと、そういえばここはお好み焼き屋だった。
お店の中はこんな様子。
やはり、どこか懐かしい感じが漂う店内。
訪れた時は夏休み真っ最中で、ファミリーの姿が多く見られた。
たしかに懐かしい
私は初めて来たから本当は懐かしくなんかないはずなのだが、でもなぜか懐かしい。ここだけ、まったりとした時間が流れているようだった。
最終兵器
3つ目に訪れたのは、「くらた」というところ。
ここも長崎の懐かし系お好み焼きとして有名で、やはり何人ものかたから「懐かしい」「おやじさんがイイ」とのコメントを頂いていたところだ。
開けっぴろげ
お店を発見した瞬間、「おお~。」と思わず感嘆の声が出てしまったこの外観。ドアが開けっ放しだ。
エアコン?
そんなものは無いさ。
これは凄いぞ
こちらがこの店の主人、倉田さん。
どうだろう、この雰囲気。
実はもう、店内に入った瞬間から私はこの雰囲気に魅了されまくっていた。なんだかわからないが、これは凄いぞ!
超近い
まるでサシで焼いてもらっているような距離感。
詰めれば4、5人くらいは座れると思うが、それでも4、5人だ!
長崎風お好み焼き
ここでのお好み焼きは、今まで見たことが無い、かなり特殊な作り方をしていた。これが昔の長崎風らしい。初めに具材を混ぜずに、まず薄い生地を焼いて、その上に具材を順々と乗せていく。
と、ここでおもむろに
お好み焼きの横でおやじさんが焼きそばを作り始めた。
しかも、ものすごい美味そうなオーラを漂わせている。
「ああ、それも頼めばよかった!」
と私がつぶやいたら、これは私に食わせてやろうと思って作り始めたのだという。ありがとう、おやじさん!!
その焼きそばが先に出来上がった。
たまんねぇ!!
麺はちゃんぽん麺、さらに長崎ではよく皿うどんにかけるソースとして定番の「金蝶ソース」をたっぷりかけて作られた、いかにも長崎な焼きそば。これがもう、なんというか最高にうまい!
できたてのアツアツのものを鉄板から直で食べる。
しかも訪れた時は真夏の8月。エアコンはなし。
食べながら汗がだらだら出てくるが、それがかえって快感だった。冬にアイスを食べるのがうまいように、真夏に食べる焼きそばがうまい!
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タオル王子
暑いのは私だけではない。おやじさんも暑い。
やはりユニフォームの肩袖などで汗を拭くより、タオルで拭くのが効率的に汗が取れる。
金蝶ソース
さきほど焼きそばにかけていたのは、こちら。
「金蝶ソース」と言って、かけたものすべてが長崎風味になる魔法のソースである。
そしてお好み焼きが焼けた。
薄い生地を焼くことからスタートし、徐々に具を盛りながら焼かれたお好み焼きは、最後は2つに折り曲げられてタコスみたいな形状になった。
味はもちろん、うまい。
こうして、昔ながらの長崎の味を満喫したのであった。
焼き終えて
一仕事終えたおやじさんは、外で風に吹かれながら新聞を読んでいた。通りを歩くおばちゃんに話しかけたり、ビールを持って遊びに来た常連客と世間話をしてのんびりしていた。
いいなぁ、この雰囲気。
こういう昔ながらの店って、今、日本中でどれくらい残ってるんだろうか? おそらく全国にいくつかはあると思うが、しかしものすごく貴重な存在なのではなかろうか。
というわけで、メールですすめてもらった店3つを巡ってみた。いわば「ちょっと見てきて」のお好み焼き版のようなものだが、いずれもすごくイイお店だったので、これをきっかけにこれから何度も通うことになりそうだ。つまりミイラ取りがすっかりミイラになってしまったようなカタチだ。
…んん?ちょっと違うか。
それは、お好み焼きを食べに行って自分がお好み焼きになってしまった時のことを言うのであろう。だから今回の場合、「お好み焼きを食べに行った人がお好み焼きを食べて来た」、が正解か。 んんん??つまり私は何が言いたいのだ?