赤いやつが、クライミングをする時にあると便利な道具です。
今やどこのご家庭にあると言っても過言ではない3Dプリンター。Twitterを見てると、かなり多くの人が3Dプリンターで日々なにかを作っています。だからきっとみんな持っているのでしょう(偏ったタイムラインです)。
不便を感じたとき、「こういうの欲しいな」と思ったらすぐに作れるのが3Dプリンターのいいところ。生活の道具も作るんですが、特に趣味があると使う場面が増えたりします。
(編集部より)自作ツールを紹介するリレー連載「工夫の鬼」第2回です。ライターや編集部員が、ふだんから実際に活用している自作のツールをご紹介します。不定期連載。
1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)
前の記事:ハナマサの辛いやつにハズレが無い説
登山と3Dプリンターの親和性が高い
僕の趣味の一つが登山なんですが(※)、登山は多くの道具を使います。道具を出来るだけ使わないスタイルの登山もありますが、色んな道具を使いこなすのも楽しいです。
※…他にはサバイバルゲーム、カメラ、ドローン、鼻笛など色々やって遊んでいます。
登山をしていると、道具に関して細かい不便や、もっと改善できるなという気持ちが湧いてきます。そんなとき、3Dプリンターがあれば自分で解決することが出来るのです。
と言っても、クライミングなどに使うガチッとした道具を自作すると壊れた時に死んでしまうので、壊れても命に関わらない便利道具を作ってきました。
以前、「冬はずっとキャンプ用のテーブルを作ってた」という記事でひたすら折りたたみテーブルを作ってた話を書きましたが、テーブル以外にもいろいろ作ってきました。
例えばこんなのとか。
割り箸三脚自由雲台
下に割り箸を3本挿すと三脚になる自由雲台です。自由雲台ってのは、カメラを載せて自由な角度に出来る道具です。
金属製の自由雲台って地味に重いので自作しました。
スマホ(iPhoneX)を支えることも出来ます。
三脚自体を作ったこともあります
三脚って重ければ重いほど安定して撮れるので、良い三脚は重いんですよね。でも、登山だと重い三脚はあまり持ちたくない。
ところが軽い三脚は高さが低いし、ちょうど良いものが無かったので作りました。
脚を展開してカメラを載せるとこんな感じになります。
脚は2段階に展開します。伸ばすと少し高くなります。
更に、ストック(杖)と組み合わせて高くする機能もあります。
道具を組み合わせることで機能が拡張されるのって、なんかお得な気分がします。装備の軽量化に寄与しますし。
テント用の自在は一瞬で作れる
テントの張り綱を調整する「自在」が無駄に大きくて嫌だなと思ったので、小さいものを自作しました。形が単純なのでCADで設計するのも一瞬だし、小さいのでプリントするのも一瞬です。こういうものは作ってしまうに限る。
ABS樹脂で作っているので強度も弾力性も十分あります。
蓄光フィラメントがあったので、暗闇で光る自在も作ってみました。蓄光なので数十分くらい経つと光らなくなっちゃいますが。
クライミングの道具も作りました
クライミングの道具と言っても、カラビナとか確保機みたいな金属の器具は作れません。あくまで、壊れても死なない道具。
これはプリクリップをするための道具です。
プリクリップ(略してプリクリ)とはなにか?
クライミング、特にフリークライミングは岩の壁に付けられた金属の輪っか(ピンとかボルトと呼ばれている)にクイックドロー(2つのカラビナを短いスリング(紐)で連結した道具)を掛けて、下のカラビナに自分のロープを掛けることで(割りと)安全に登っていきます。
1本もクイックドローとロープが掛かっていない状態で落ちてしまうと地面まで落ちてしまいます。なので、1本目を掛けるまでは絶対に落ちないように登るんですが、どうしたって落ちる可能性はゼロではないので、時として「プリクリップ」をします。
プリクリップとは、地面から届かない場所にあるボルトにクイックドローやロープを掛ける行為です。
ちなみに、「プリクリップをするのは邪道であり甘え」と言う人もいて賛否両論だったりしますが、僕は趣味でやってるだけなので安全第一。落ちるかもしれないし落ちたら怪我するなぁという場所ではプリクリします。趣味でクライミングしてるおじさんとしては、スタイルや思想より怪我しないのが大事です。
プリクリップアタッチメントの下側には1/4インチネジのナットが入れてあって、三脚のネジと互換性があります。なので、「6mの棒にカメラを付けると、ほぼドローン」の記事に出てくる3mや6mの棒の先に付けることが出来ます。
実際に、岩場ではるか上にあるボルトに、ロープとクイックドローを掛けると、こんな感じの使い方になります。
ロープを挟む部分もあるので、すでに掛けられているクイックドローにロープを掛けることも出来ます。
写真だと分かりにくいと思って動画も作りました。クライミングをしない人にはサッパリ意味が分からないかもしれないけど。
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もうちょい普通の道具を紹介します
クライミングの道具を紹介しても刺さる人が少なそうなので、分かりやすいものを紹介しましょう。
「ケース」もたくさん作りました。
正解は、カロリーメイトのケースでした。
同様に割れやすいリッツの専用ケースも作りました。
真空断熱タンブラーのコンテナ
サーモスの真空断熱タンブラーにピッタリ入る、3段分割コンテナなんてのも作りました。
円筒形のコンテナですが、三段重になっているので砂糖、コーヒーの粉、お菓子などを入れておけます。
調味料ケースも自作しました
最初から書いてるように、登山では装備を小さく軽くするのが大事なので、コンパクトに複数の調味料を持っていけるケースなんてのも作りました。
外蓋を開けると小さい穴が開いた中蓋があって、調味料を振りかけることが出来ます。
中蓋を外して調味料を追加出来ます。
ドローンのケース
Mavic miniというドローンを持っているのですが、純正のケースはそこそこ大きくて、登山用のザックに入れるとスペースを取って邪魔なので最低限の大きさのケースを作りました。
ケースばっかり作ってた時期もありました
一時期、取り憑かれたようにケースばかり作ってた時期があり、家にはまだまだケースが存在します。これは素麺のケース。
ヘッドランプを上から吊るすクリップ
ケース以外の変わった道具だと、ヘッドランプのベルトをまとめて、ランタンのように吊り下げて使うためのクリップなんかも作りました。
これまでの道具も全部そうですが、サラッと「作った」って書いてますが、実際は試作と改良の繰り返しで、失敗作を山のように作っています。
モデルデータはだいたい無料で配布してます
これまでに作ったものの大部分は、thingiverseというWebサイトで公開しています。コチラ。
使用条件はいろいろですが、家に3Dプリンターがある方はプリントしてみてください。大体は、商用不可で個人が楽しむのは自由という条件です。
ネジなど金属部品も組み合わせるものがあるので、作るのはちょっと面倒かも知れませんが…。
1000個以上作ったらしい
3DCADで作って3Dプリンターに送る時に「*.stl」っていうファイルが作られるんですが、数を調べたら1000を越えていました。修正して上書きしちゃうことも多いので、おそらく1500個くらいは作ったかなと。
2018年の5月から4年とちょっと、ずいぶん作ったもんですね。