中国経済のアキレス腱:経済政策的に詰んできている習近平氏

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中国経済の雲行きが怪しいのですが、その中で悪い悪いとずっと言われて続けているのが不動産。不動産こそ中国経済のアキレス腱であり、これが機能しなければ非常に厳しい試練が待ち受けることになります。その中で最近話題になっているのが住宅ローンの不払い運動ですが、これがより大規模になれば経済が廻らなくなる可能性もあると思います。そのあたりを見てみたいと思います。

中国で結婚する条件は、といえば家があることとされます。つまり、家も買えない男は価値なし、というぐらい不動産への執着が強い国です。先日、香港の不動産が廃れつつある今でも高額で取引されていると申し上げましたが、中国人の不動産神話は本当に根強いものがあり、信じるものは不動産なり、と言ってもよいほどなのです。

とすれば中国人にとって不動産が一心同体のようなものである中で購入した物件がいつまでも完成しないとなればこれは怒り心頭でしょう。不動産向け融資規制といった習近平体制の不動産バブル退治が強烈だったこともあり、多数の不動産開発会社は倒産の瀬戸際にあるとされます。当然、資金繰りが廻らないのですが、更にコロナで仕事ができないという追い打ちが起きます。これが開発途上の物件が遅々として完成せず、引き渡しが出来ない理由になっています。

問題はこれだけではありません。中国の不動産購入では頭金の比率が大きいのです。概ね2-3割、ひどい場合には7割というのもあったようですが、平均6000万円の物件で25%の頭金の場合、1500万円相当を契約時に払います。日本なら頭金は貯金なり親なりに援助してもらうことも多いと思いますが、中国ではこれをローンで賄うわけです。金利は概ね4.5%、すると未完成の物件のローン金利だけで年間675000円かかり、更に住宅ローンですから元本返済もあるのでしょう。その住宅はいつ完成するかわかりません。これでは購入者は怒り心頭なのが分かります。

このローンに対して不払い運動が中国各地で展開され、現在その不払い元本が8兆円規模あるとされ、これが連鎖反応を示せば、更に膨れ上がり、試算では20兆円規模を超えるとみる分析もあります。これで困るのは銀行で体力的に持ちません。その為に地方政府が開発業者に住宅完成を急がせているのですが、住宅市況も悪化してきており、次に待ち構えるのは売るに売れないという事態が想定されます。

この話、日本のバブル崩壊の時と似ている部分も多く、最大の被害者は住宅購入者で高値掴みの住宅のローンを延々と支払い続けるバトルに陥ってもおかしくないでしょう。

開発業者の最大手である恒大集団は中途半端な状態に放置され続けており、7月末には再建計画を発表する予定でしたが、それも出せず、現在もその内部の様子はうかがい知れません。但し、経営不振になってから既に相当の時間が経っていることを考え合わせると実質的に国営か政府の管理下に入っているとみています。他に大手だけでも軒並み経営不振が伝えられていますが、倒産企業が限定されているところを見ると政府が潰すなという指示を出している公算もあると思います。

なぜ、潰さないのか、といえば現在起きている負の連鎖と言えども連鎖という鎖が繋がっているのです。この鎖が切れるとパニックに陥るのです。例えばリーマンショックの時はまさにこの鎖が切れたわけです。一瞬のうちに大混乱に陥いったあのシーンからはまだ14年しかたっていません。記憶に新しい人も多いでしょう。

ただ、個人の不動産購入者、銀行、開発業者、政府という役どころを考えた場合、個人購入者は数が多く、一律のコントロールが効かないという難点があります。上記の鎖の話で言えば一番切れやすいのが個人購入者である点も見逃せないのです。

中国は不動産バブルをずっと維持してきました。GDPの29%も占める不動産は潰すわけにはいかないという威信もあったのでしょう。私が見る限り、今はかなりギリギリの綱渡り状態だと思います。中国の7月の物価上昇率は2.7%で2年ぶり水準で着実に物価が上がっています。しかしながら、中国中央銀行はむしろ逆で利下げをもくろんでいます。しかしそうすると中国の資本流出が余計悪化するというジレンマに陥るのです。どう見ても経済政策的に詰んできているようにも見えます。

私は習氏の三期目よりも経済が意図せずしてコントロールを失う事態にならないか、非常に心配しております。

習近平中華人民共和国主席 共産党新聞より

では今日はこのぐらいで。。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月15日の記事より転載させていただきました。