10年後の自分に投資しよう

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オリンピックが終わりました。決定したのが2013年9月ですから約8年も前のことです。私の母親は「うれしいことだけど、私は果たしてその時生きているか」と呟いていましたが、元気にテレビ観戦したようです。時間というのはあっという間に過ぎていき、10年という一つの区切りも何もしなければ振り返っても何も思い出せない日々になってしまいます。

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本田健氏は自己啓発書の作家ですが、氏の「〇〇代にしておきたい17のこと」シリーズを一度は手にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。私も読みましたし、氏の講演にも行きましたが、具体的中身よりも10年一区切りの間に何かを残していくという発想に強い印象を持っています。

私も60歳になったのでこれからの10年を様々な角度からどう生きていくか、どう楽しむのか、ビジネスは、プライベートは、と考えています。その中で確実なベースポイントは健康でなければどんな計画も成就しないという点です。

健康にもいろいろあります。肉体や身体の健康から精神面の健康までオールラウンドに管理しなくてはいけません。ゆとりと笑顔で物事に対処できるか、失敗しても深い傷を負わず、すぐに立ち直れるといったリスク管理を含め、さらに太く、たくましく生きていくことが最大のキーワードになります。それゆえに週3度のかなり激しい運動はこの1年ぐらいはさらにパワーアップし、ビジネスも経験値からくる厚みと対応のオプションが増えてきたと思っています。

一方、私の病的な投資癖は相変わらずで会社のお金も自分のお金もすっからかんになるほど10年先を見据えて投資しています。個人の貯金は定期預金の残高が20代女性の貯金以下だと思います。その代わり、あちらこちらに投資していて確実に実を付けて戻ってきてはまた投資を繰り返しています。

多分、こう聞かれると思います。「60歳になってまだ投資するんですか?一体いくら欲しいのですか?」と。私は幾ら欲しいという考えは何十年も前から全くないのです。投資とは将来に対する予想とそこから生まれるであろうリターンが思惑通りになるか、自分自身へのからだを張った高尚なゲームなのです。

このブログではしばしば将来予想を書いています。それははたと思いついたとか、どこかでかじった入れ知恵というわけではなく、自分がそこにお金を投資したらどうなるか、というシュミレーションやリスク考察をして述べています。もちろん当たらないことも多々ありますが、当てに行っています。

2012年だったと思いますが、ソニーの株があり得ないほど下落し1000円を大幅に割ったことがあります。その時、このブログで「これは大底。この会社の価値はこんなに安いものではない」といった趣旨のことを書きました。それを読んだある方がそこに財産の多くをぶち込んだそうです。数年後、その方からお礼を言われ、「はて、なんで?」と聞けばおかげで麻布にビルを購入できました、と。そのソニーの株価は今は11000円台です。なぜ、パナソニックでもシャープでもなくソニーだったか、それは他社と比べ、社内に「ビフィズス菌」がたくさんあるように感じたからです。

私は不動産事業が主力ですが、10年も前から「アセットライト戦略」が主流になると言い続け、自分は持つ側になると決めていました。一般消費者がモノを持たなくなる時代が進んでいるのはあえて説明しなくてもお判りいただけるでしょう。次は自動車がシェアになります。住宅はすでにシェアハウスが選択肢の一つとして市場に溶け込んでいます。私は先々、住宅の分譲という発想も捨ててもよいかと思っています。日本のマンションや住宅は古くなったものは価値がないうえに建て替え問題すらあるのならある時点で強制終了させてしまえばよいのです。それゆえに私は7年前に実験的に住宅の22年リースを行いました。リースですから22年経つと終わり。ただし、更新のオプションはついています。人も22年たてばライフスタイルが変わっているのだからこれのほうが間尺に合うと思うのです。

私がすごい、と思った人にゲーム会社、カプコンの辻本憲三氏がいます。氏が50代にしてカリフォルニアでワイナリー事業を個人で始め、今では入手困難なワインとして非常に高い評価を得ています。ゲームとワイン、全く違うものでも両立できるのです。あるいは坂本孝氏もブックオフと俺のシリーズで有名なレストラン経営をしました。器用な方もいるのです。

とすれば誰でもチャンスがあるともいえます。埋もれている才能を発掘するには一歩踏み出す、そのためには自分への投資をしてみることです。何もない10年よりやりがい、生きがいのある10年は素晴らしい人生になることでしょう。

今回、金メダルを取った中で何人か印象深い選手がいましたが、ボクシングの入江聖奈さんは現役の大学生。そして来年は就活してボクシングは大学時代をもって止めるそうです。この方の人生には素晴らしいジャンプがある気がします。金メダルの栄光にとらわれず、全く違う道でゼロスタートを切る勇気はなかなかできないものですね。ご立派です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月9日の記事より転載させていただきました。

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