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映画やゲーム、ファンタジー小説には人間の死体を操るネクロマンサーが登場しますが、アメリカ・ライス大学のエンジニアはクモの死体をロボット化して操作する「ネクロボット」技術を開発しました。生きていたころのクモと同様に、器用かつ繊細に物体をつかむことができるこの技術には、野生の昆虫の捕獲やマイクロデバイスの部品の組み立てといった用途があると研究者らは語っています。
Necrobotics: Biotic Materials as Ready‐to‐Use Actuators – Yap – Advanced Science – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202201174
Rice engineers get a grip with ‘necrobotic’ spiders | Rice News | News and Media Relations | Rice University
https://news.rice.edu/news/2022/rice-engineers-get-grip-necrobotic-spiders
クモの死体から作られた「ネクロボット」が動いている様子は、以下から見ることができます。
Lab manipulates deceased spiders’ legs with a puff of air to serve as grabbers – YouTube
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柔らかい素材で作られたソフトロボットを研究しているライス大学機械工学科のダニエル・J・プレストン助教らの研究チームが「ネクロボット」を開発したきっかけは、床に足を丸めたクモの死骸が落ちているのを見つけたことでした。
研究チームによると、人間の腕は関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉の働きにより曲げ伸ばしができるとのこと。
一方クモは屈筋という筋肉で足を曲げ、体液の圧力で足を伸ばしています。死んだクモの足が丸まるのも、圧力が抜けたことで足が縮む力だけが残るのが理由です。
さっそくこのメカニズムをエンジニアリングに生かそうと考えた研究チームは、クモを冷凍して安楽死させてから頭胸部、つまり8本の足がつながっている胴体部分に注射針を刺して接着剤で固定しました。
この状態で注射針から空気を流すと圧力によって足が開き、空気を抜くと足が閉じます。
この働きにより、ネクロボットはクレーンゲームのクレーンのように物をつかむことが可能です。生きているクモは、足についている弁を使って8本の足を別々に動かしますが、クモが死ぬと弁の働きもなくなるので、空気圧だけで8本の足を全て操作できます。
1つのネクロボットが足を開閉できる回数は1000回ほど。それ以上になると摩擦が発生し始めますが、これは関節部分の乾燥が主な原因なので、ネクロボットをポリマーコーティングすることで克服できると研究チームは考えています。
プレストン氏は「小さなスケールで物体を選別したり移動させたりするような反復作業や、マイクロエレクトロニクスの組み立てのようなものまで、ネクロボットにはさまざまな用途が検討できます」と話しました。
また、論文の共著者であるTe Faye Yap氏は、「クモは元からカモフラージュされているので、自然界にいる小さな昆虫を捕獲するのにも使えるかもしれません」と付け加えました。
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