自民党雑記:激しい派閥抗争が起こる可能性

アゴラ 言論プラットフォーム

選挙が終わり、解散がない限りこれから3年間も国政選挙がないとされる中、自民党の周辺がどうもにぎやかに感じます。臨時国会が8月3日に召集されるもわずか3日間の会期予定。その間に先日の参議院選挙を受けて参議院議長、副議長を決めること、及び安倍氏の追悼演説が見込まれています。野党はそんな会期では議論を尽くせない、と噛みついていますが、そもそも夏休み期間でコロナで封印されていた議員の外遊も増えており、お盆も近い中、現実的ではないでしょう。日本版「北戴河会議」のような状況も見て取れます。自民党を取り巻くいくつかの話題を拾ってみましょう。

自民党HPより

まず、安倍氏の国会追悼演説で甘利氏が演説をする予定になっている件ですが、立民の西村幹事長が「国会追悼演説は他党がやるのが慣例になっており、極めて逸脱している」と述べています。西村氏もあまり人気が上がらないのは主張が下手だからでしょう。まず、「慣例」という言葉を使ったことは一切の改革や改善をしないという意味であり、本来革新派である立民がそれを言ってはおしまいよ、であります。

もう一点、過去、国会議員の追悼演説は戦後だけでも500以上あるわけですが、直近の場合でも2019年に宮川典子氏を野田聖子氏が、2020年に望月義夫氏を佐藤勉氏が、2021年には竹下亘氏を小渕優子氏が行うといった具合に自民党員を自民党員が演説するケースが増えています。これは小選挙区制導入後、遺族の意思が重視されたこともあります。よって「極めて逸脱」しているわけではありません。甘利氏は3A(安倍、麻生、甘利)と言われ、麻生氏が葬儀での弔辞を述べた点を考えればナチュラルでしょう。逆に野党で適任者はいますか?2012年、「世紀のバトン」を渡した野田佳彦氏でしょうか?

次の話題に行きましょう。石破茂氏、浜田靖一氏ら超党派4名が台湾入りしています。このところ、欧米議員が台湾入りし、蔡英文総統らと会談しています。蔡氏も降ってわいたように外交が忙しくなっています。残念なことに台湾外交は台湾での外交が主で相手国ではなかなか実現しません。9月の安倍氏国葬には台湾にも声をかけていることからどなたか高位の方が来られる可能性はあるでしょう。

ところでこの石破氏らの訪台に中国外務省はあまり吠えていないように感じます。訪台の目的はもちろん安全保障もありますが、安倍氏が築いた日台関係を補完するためともされます。このところ、さえなかった石破さんには適任かもしれません。やらせてあげたらよいでしょう。中国外務省が本当に怒り心頭なのはペロシ下院議長の訪台計画で、これには相当やきもきしているようです。明日、バイデン-習電話会談があるのでその際の話題になる可能性もありますが、ペロシ氏はアメリカNo3のポジションだけど現職閣僚でもない石破氏とは反応が違うとなればちょっと寂しい気もします。

最後に安倍氏無き自民党、領袖なき安倍派の行方です。田原総一朗氏が「激しい派閥抗争が起こる可能性がある」と指摘しています。この可能性は私もないとは言い切れないと思います。田原氏は特に触れていませんが、私は現職の閣僚と党幹部ら実権トップ組の粒が小さい点が気になっています。悪く言えば風が吹けば飛びそうな感じがするのです。大物が鎮座し、抑えを利かせる感じではありません。例えば安倍政権の時は麻生氏が圧倒的凄味で閣僚のボディガードだったし、党は二階氏がにらみを利かせました。

今の顔ぶれはどれもポピュリズム政治にどっぷりつかってきた方ばかりなので自分の強い意志で動く人は少ない気がします。その派閥のキーパーソンに急浮上しているのが菅元総理。確かに官房長官時代の菅氏が全盛期だったのはトップではない要職、影のドンというポジションがはまり役だからです。本人も大好きでしょう。とすれば無派閥の菅氏が何らかの綱引きに影響力をもらす公算はあると思います。

産経には「菅前首相に副総理起用説、本人否定的も焦点は求心力維持」とあります。副総理をやっても党内からは文句は出ないと思いますが、副総理の兼任にどの大臣ポストにするかといえばそれは岸田氏も悩むでしょう。つまり岸田氏がやりにくくなるのです。菅氏の実務処理能力は高いのですが、あの「携帯価格引き下げ」は業界からは怨嗟の声ですので菅氏は今回の内閣改造では表舞台には立たない方がよいと思います。

自民党は大きな組織になり過ぎました。若い議員にとって大臣になれる党ともいわれます。まるで甲子園に行ける高校に入るようなもので、その高校が好きで入ったわけではないのと同じなのです。駅伝だって原監督がいるから青学は強いけれど監督が代わればトップ10にも入れなくなるかもしれません。つまり影響力を持つ人と引っ張られる人の関係で組織は動くものなのです。高市さんなどはその典型でしょう。

その点からは菅氏の暗躍と同氏への影の権力集中は今後の自民党を占う意味でも重要かもしれません。

自民党は魑魅魍魎なり、という日が来るでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月28日の記事より転載させていただきました。

タイトルとURLをコピーしました