バイデン外交はロシアに対峙できるか?

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ウクライナをめぐってアメリカとロシアの緊張が一気に高まっています。既にいつ、何が起きてもおかしくない最高レベルの警戒感にありますが、なぜか不思議なのは肝心の欧州からほとんど声が聞こえてこないことです。

バイデン氏とプーチン氏 米露首脳会談 NHKより

ドイツは政権交代でショルツ新政権が発足したばかりですが、三党連立のバランス感ある内政を主軸としています。外相のベーアボック氏はそもそも緑の党の党首でこのような紛争にどれだけの知見と判断力があるかは未知数です。一方、フランスは大統領選挙を4月10日に控え、そもそもこの時期にタッチーな問題であるウクライナに関与したくないしその暇もありません。

結局、地政学的に一番距離のあるアメリカが全面関与することになるのですが、アメリカもウクライナ問題についてアメリカの軍部を投入するつもりはないと明言しています。また、19日のバイデン大統領の声明で「経済制裁を強化」「ロシアがドルを使えなくする」但し「侵攻の規模によっては(これら制裁内容を)考慮する」という発言から小規模な侵攻なら容認するのか、という弱腰外交との批判も高まっています。(最後の侵攻の規模うんぬんについては後日、実質、発言撤回をしています。失言だった可能性があります。)

そもそもアメリカが20世紀以降、対外戦争を行ったのは日本、朝鮮、ベトナム、湾岸、イラク、アフガンなどで大小10以上ありますが、割と負けているのです。朝鮮戦争は勝ち負けなし、ベトナム、アフガンは負けています。イラクは戦争には勝利したけれど中身が悪すぎました。アメリカは武器を作り、売るのは上手ですが、現場(戦場)に行くのは苦手なのです。今回はそもそも民主党政権であるバイデン氏が戦争をするわけがなく、そこは足元を見られているのです。

では足元を見たのはプーチン氏だけか、といえば習近平氏も同様です。そしてこのところ、厄介なことに金正恩氏がこれに「参戦」してきました。うがった見方をするとこの3名はつながっているのではないか、という気もしないでもないのですが、アメリカは弱腰で口先だけだというのがばれてしまっています。

交渉の矢面に立つのはブリンケン国務長官で、一人で飛び回っています。年齢ないし健康的問題があるのか、あるいは失言癖を恐れてか、バイデン氏自身が前線に立つことはありません。私にはバイデン氏の執行能力に疑問符をつけています。

またバイデン氏のところに各国首脳が「アメリカ詣」をしていない点も気になっています。つまり、ワシントンの司令塔内で身内に厳重に囲まれたままであるのです。岸田首相も対面会談を求めていますが、せいぜい電話で対面は実現しません。春には日本来日をするといってますが、それも様々な世界情勢次第では実現するのか、まだ何とも言えません。こう見るとバイデン氏は日本だけではなく、全面的に外交会談を絞っているとしか思えず、その理由の真意が見えないのです。

ウクライナについてはロシアがどこまで侵攻するのか、やるか、やらないかではなく、国土のどこまで実効支配する気なのか、というレベルの話とみています。個人的にはウクライナの国の真ん中を流れるドニエプル川の東側を全部取るのがもっとも現実的かと思います。これには首都キエフの半分が入ります。

問題は仮にこれを実行した際、アメリカの課す制裁がそれほどの内容でなければ北朝鮮もICBMを放ち、アメリカを挑発するとみています。しかし、アメリカは北朝鮮と交渉する準備も意思もほとんどない状態です。専門チームはありますが、優先度が低いのか、政権幹部が触りたくないのか、避けているのが現状です。また北朝鮮にとってこれ以上のアメリカの経済制裁は限られ、金正恩氏にとって「怖いものなし」というスタンスに見えるのです。

ではこの「やんちゃ」に対して中国がどういう態度を示すかですが、今回は案外黙認するのではないかとみています。それは自身の台湾問題にかかってくるためです。習近平氏の足元が内政的に盤石ではないという危機感が表れ始めている点も見逃せません。一方、北朝鮮から中国に貨物列車が久しぶりに入ったので中朝貿易が一部で再開している可能性はあり、中国は北朝鮮をうまく利用するのだとみています。

仮にロシア、中国、北朝鮮に好き放題やられ、欧州から冷たい態度をとられた場合、バイデン氏は窮地に追い込まれますが、彼か副大統領が君臨する体制は変わらず、秋の選挙で上下院両方とも共和党に取られた場合、アメリカの国家運営が機能しなくなる最悪シナリオも考えられます。

アメリカは敵が多い国です。今までは政治的経済的な理由から面従腹背だったところもずいぶんありますが、今後のリーダーシップを維持できるか、瀬戸際にあるように見えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月24日の記事より転載させていただきました。

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