ここ数年で無料で使える公衆Wi-Fiサービスの環境が整ってきている。特にNTTドコモが提供している「d Wi-Fi」(旧名称docomo Wi-Fi)は非常に快適で、筆者自身、外出先で利用する機会がかなり増えてきた。通信キャリア大手のサービスということもあり、提供箇所が多いのも魅力だろう。加えて、ドコモ回線を使っていなくてもd Wi-Fiを利用できるという大きなメリットがある。ここでは、d Wi-Fiを使うためにはどうすればいいのか紹介する。
ドコモ回線ユーザーでなくてもd Wi-Fiは無料で利用できる
まず始めに、「d Wi-Fi」がどういったサービスか、簡単に紹介しておこう。
d Wi-Fiは、NTTドコモが提供している公衆Wi-Fiサービスだ。従来NTTドコモは、ドコモ回線ユーザー向けに公衆Wi-Fiサービス「docomo Wi-Fi」を提供しており、ドコモ回線ユーザーであれば基本無料で利用できるサービスとなっていた。
それに対しd Wi-Fiは、2020年3月25日より提供が始まった「dポイントクラブ会員向け」の公衆Wi-Fiサービスだ。docomo Wi-Fiとの大きな違いとなるのが、利用している携帯回線キャリアを問わず、dポイントクラブ会員であれば無料で利用できる、という点。
つまり、ドコモユーザーでなくとも、dポイントクラブ会員であればd Wi-Fiを無料で利用できるのだ。
dポイントクラブ会員向けのサービスとして位置付けられてはいるが、実質的にはNTTドコモが提供する公衆Wi-Fiサービスであり、それが利用キャリアを問わず誰でも無料で利用できるというのは、かなり思い切ったサービスと言える。他キャリアなどが提供する公衆Wi-Fiサービスにとっても、かなり大きなインパクトがあるのではないだろうか。
ちなみに、従来のdocomo Wi-Fiは2022年2月8日でサービス提供が終了しており、現在はドコモユーザー向けの公衆Wi-Fiサービスもd Wi-Fiに一本化されている。
また、ドコモ回線ユーザーでなくても利用可能なだけでなく、1アカウントにつき最大5台の機器まで同時接続で利用できる点も大きな進化点。それも、スマホだけでなく、タブレットやPCなど、機器を問わず利用できる。docomo Wi-Fiは1アカウントにつき1台しか利用できなかったので、利便性が大きく高められている。
加えて、安全性も引き上げられている。d Wi-Fiでは一部を除いて暗号化方式にWPA2を採用。IEEE 802.1Xのユーザー認証規格にも対応しているため、公衆Wi-Fiサービスではあるが、安全性も申し分ないものとなっている。
【表】d Wi-Fiの特徴 | |
---|---|
利用可能ユーザー | dポイントクラブ会員であれば誰でも利用可能 |
同時接続数 | 1アカウントにつき最大5台まで |
Wi-Fiセキュリティ | 一部を除きWPA2対応 |
ユーザー認証 | SIM認証、アプリ認証、WEB認証、IEEE802.1X認証 |
料金 | 無料 |
d Wi-Fiエリアの確認は「Wi-Fi SPOT検索」サイトが便利
d Wi-Fiは、コンビニエンスストアやカフェ、駅などで広く展開されている。そして、エリアとなっている店舗などでは、以下に示すようなステッカーが貼られていることも多く、このステッカーを目印として探せばいい。
とは言え実際には、d Wi-Fiのエリアになっている店舗であってもステッカーが貼られていないことも多い。よく利用する場所であればある程度検討も付くかもしれないが、知らない場所でいきなりエリアを見つけるのはほとんど不可能に近いだろう。
そこで活用したいのが、d Wi-Fiのエリアを簡単に検索できるNTTドコモによる「Wi-Fi SPOT検索サイト」だ。
Wi-Fi SPOT検索では、地名、駅名などを入力して全国のd Wi-Fiエリアを検索できるのはもちろん、スマホなどの位置情報を活用して現在地周辺のd Wi-Fiエリアも検索できる。今すぐ利用したい場合には、現在地周辺を検索すればいいし、出張などで遠隔地に出掛ける場合などでも、あらかじめエリアを確認しておけるので便利だ。
d Wi-Fiを利用するには事前設定が必要
d Wi-Fiは、誰でも無料で利用できるとは言っても、いきなり接続して利用できるわけではなく、以下のような事前設定を行なっておく必要がある。
- dアカウント発行
- dポイントクラブの会員登録
- dポイントカードの利用登録
- d Wi-Fiの利用登録
- d Wi-Fiパスワードの登録
これは、ドコモ回線ユーザーも含めて必要な作業であり、これらを行なっていない場合にはd Wi-Fiは利用できないので注意が必要だ。
ではここからは、この事前設定の手順を紹介する。
今回は、ドコモ回線を持っていないユーザーが、PCからdアカウントを新規発行し、dポイントクラブ会員になるとともに、dポイントカード利用登録の手順を紹介するが、ドコモ回線ユーザーも、スマホを利用する場合でも手順はほぼ同じだ。
dポイントクラブサイトから登録を行なう
dアカウントの発行と、dポイントクラブの会員登録、dポイントカードの利用登録は、「dポイントクラブ」のサイトで同時に行なえる。dポイントクラブサイトの右上にある「登録」ボタンを押す。
続いて、「ドコモのスマホ以外(※)でアクセスしている方」の下にある「dアカウントをお持ちでない方」ボタンを押す。
次はdポイントカードの選択だが、スマホを持っているので物理カードが不要という場合には「オンライン発行dポイントカード番号」を選択すればいい。もちろん、必要ならほかの物理カードを選択してもいい。
その後、指示に従って個人情報などを入力し作業が完了すると、dアカウントの発行とdポイントクラブへの入会、dポイントカードの利用登録が完了となる。
d Wi-Fiの利用登録とd Wi-Fiパスワードを設定
次は、d Wi-Fiの利用登録の手順だ。登録はスマホまたはPCで行なうが、ここではPCからの登録方法を紹介する。なお、スマホからは「dアカウント設定」アプリを利用すれば簡単に登録が可能だ。
まず、dポイントクラブサイト内の「d Wi-Fi」ページを開き、その中の「今すぐお申し込み」ボタンを押す。すると、d Wi-Fiの利用登録ページに遷移するので、内容を確認して作業を進め、手続きを行なう。この作業が完了すると、d Wi-Fiの利用登録は完了だ。
最後に、d Wi-Fiパスワードの設定だ。こちらは、d Wi-Fi利用時に入力を求められるユーザー認証用のパスワードで、こちらもあらかじめ登録しておく必要がある。
そのためには、ブラウザから「d Wi-Fi設定サイト」にアクセスし、必要なら登録したdアカウントでログインする。
次に、「ID/パスワード」の項目を開き「パスワードを設定する」ボタンを押す。そして、半角英数字記号で5~7桁の任意のパスワードを登録。「d Wi-Fiパスワードの設定が完了しました。」と表示されれば、事前作業は終了だ。
ログイン認証が不要となる「0001docomo」の利用がおすすめ
以上の設定が終了すれば、いつでもd Wi-Fiの利用が可能となる。では、実際にd Wi-Fiへの接続手順を紹介しよう。
d Wi-FiのSSIDは「0000docomo」と「0001docomo」の2種類が用意されている。どちらを利用しても速度などに違いはないため、どちらか一方のみを設定しておけばいいが、ここでは双方の接続手順を紹介する。
「0001docomo」への接続手順
続いて「0001docomo」への接続手順だ。こちらは、もともとはドコモ回線ユーザー向けに、SIM認証を利用することでログイン認証を省き簡単に接続できるアクセスポイントとして用意されているものだ。
ただ、PCでもきちんと設定することで、ブラウザを利用したログイン認証を省いてd Wi-Fiに自動接続し利用可能となるため便利だ。
まず、d Wi-Fiのエリアに入り、PCに表示されるWi-Fiアクセスポイント一覧から「0001docomo」を選択して「接続」ボタンを押す。すると、ユーザー名とパスワードの入力に切り替わるので、ユーザー名には「dアカウント名」に「-dwifi@docomo」を加えたものを入力する。
たとえば、dアカウントが「pcwatch」だった場合には「pcwatch-dwifi@docomo」と入力することになる。パスワードには、d Wi-Fi設定サイトで登録したd Wi-Fiパスワードを入力する。あとは、証明書の発行先が「wrfs.m-zone.jp」となっていることを確認して「接続」を押し、「接続済み」と表示されたら完了だ。
以上に間違いがなければ、0000docomo接続時のようなログイン認証不要で、0001docomoに接続される。また、一度問題なく接続できれば、それ以降は0001docomoのエリアに入ると自動接続されるようになる。
なお、PCに4G/5G対応のワイヤレスWAN機能が搭載され、ドコモ回線契約のSIMを装着している場合には、0001docomoをSIM認証で利用可能となる。あらかじめ、そのSIMで契約している電話番号に紐付いたd Wi-Fiの登録が完了している必要はあるが、この場合には、IDやパスワードの入力も不要となる。
スマホならドコモユーザーはSIM認証、非ユーザーはアプリ認証が便利
スマホでのd Wi-Fi接続手順は、PCと比べて非常に簡単だ。
ドコモ回線のユーザーであれば、SIM認証による自動ログインが利用できる。NTTドコモで購入したスマホを利用している場合には、特に設定不要でd Wi-Fiに接続できるはずだ。
自動で接続できなかったり、AndroidのSIMフリースマホを利用している場合
iPhoneも基本的には設定不要でSIM認証でd Wi-Fiに接続できる。ただ、自動で接続されなかったり、ドコモ回線のSIMをSIMフリースマホなどに装着して利用している場合には、以下の設定で接続できる。
ドコモ回線以外のユーザーによる「dアカウント設定」アプリの利用
それに対し、ドコモ回線以外のユーザーは、「dアカウント設定」アプリの利用がおすすめだ。
スマホにdアカウント設定アプリをインストールし、登録したdアカウントを設定するとともに、d Wi-Fiへの自動接続設定を有効にしておく。これで、d Wi-Fiのエリアに入ると自動的に0001docomoに接続されるようになる。
速度は接続場所によって違うが必要十分な速度が得られる
では、d Wi-Fiがどの程度の速度で利用できるのか、いくつかのエリアで速度をチェックしてみた。
まず、カフェやハンバーガーショップなど6箇所ほどのエリアで速度チェックしてみたところ、中には上り、下りとも200Mbpsを超えるというように、非常に高速に通信できる場所もあった。
ただ、すべてのエリアで100Mbps超の高速通信が行なえるわけではなく、上り、下りとも30~80Mbps程度の速度というところが多かった印象だ。
また、0000docomoと0001docomoの速度も比較してみたが、こちらは明確な差は見られなかった。そのため、どちらに接続しても同様の速度が得られると考えていいだろう。
エリアによってバックボーンの速度に差があったり、ユーザーに開放する帯域を制限している場合もあって、速度差につながっているのかもしれない。
とは言え、以前の公衆Wi-Fiサービスのように、非常に遅くてまったく使い物にならないということは、今回試した限りではまったくなかった。最も遅い場合でも20Mbps以上の速度が確認できたので、これならWeb会議を行なう場合でもほぼ問題ないはずだ。
さらに、どのエリアでも上りが下り同等以上の速度が発揮される点も魅力的だ。モバイル通信の場合、5G通信であっても上りの速度がかなり遅い場合が少なくないが、d Wi-Fiなら上りの速度にも余裕があるため、比較的大容量のファイルも短時間で転送可能だろう。
無料で利用できるd Wi-Fiを便利に活用しよう
このように、dポイントクラブの会員になるだけで誰でも無料で利用できるd Wi-Fiは、想像以上に快適に利用できる。もちろん、利用できるエリアが限られるため、好きな場所で使えるわけではないものの、行きつけのカフェなどがエリアになっているなら利用しない手はないだろう。
新型コロナウイルス感染拡大以降、テレワークが拡がり、読者の中にもカフェなどで業務を行なっているという人も少なくないはずだ。また、一時に比べて外出制限が緩和され、出張の機会が増えている人も多いはずだ。そういった場面で、無料のd Wi-Fiを利用すれば、モバイル通信のコストも抑えられることになる。
公衆Wi-Fiサービスということもあり、通信速度は利用時点の接続ユーザー数などによって左右される可能性はあるが、一昔前のようにまったく速度が出ないということはほぼないだろう。外出時に快適なデータ通信を利用したい場合には、ぜひd Wi-Fiを活用してみてもらいたい。
コメント