はたしてどのインスタント麺が冷やし中華化にむいているのか?
家で仕事をしている者のお昼時の味方、袋のインスタント麺。年がら年中お世話になっているこの袋麺であるが、夏がいよいよ高温化してしまって、この暑さでは食べる気が起きない。
ためしに水で締めて砂糖とお酢を加えてみると冷やし中華化した。食べると勝機が見えた。パーティーの始まりだ。
これだけたくさん種類があるなかでどの袋麺が冷やし中華化にむいているのだろうか? 全昼袋麺の民たちよ、一緒に調子に乗ろうぞ。
- 袋ラーメンを買い集めてきて全部冷やし中華にする
- 新しい人類はラーメンを冷やし中華と呼ぶ
- 冷やし中華用インスタント麺はさすがの完成度
- 袋ラーメンの冷やし中華化スタート
- 酢と砂糖を小さじ1入れるだけ
- ラーメンは獣っぽいぞ
- 昔ながらの揚げてる系袋麺に
- 冷やし中華にもたらされたスナック的カジュアルさ
- とんこつは冷やし中華になるのか?
- バリカタは冷やし中華界に早すぎた新星
- 辛ラーメンどうなるんでしょうか…
- 唐辛子そのものやないですか…
- カレーうどんもある
- 冷しカレーうどんなんてものはない
- 興味本位で焼きそばの冷やし中華化
- すっぱい冷やし焼きそばの出来上がり
- 二郎ラーメンあったぞ
- オラオラ系は冷やし中華に合う
- レジェンド登場
- レジェンド、おかえりください…
- うまそうなのはこれだ! 生麺タイプの担々麺味
- その時、歴史は動いた
- 塩をやるのを忘れていたが…
- 塩冷やし中華にレモンしぼりたい
- 人新世の袋麺
- ライターからのお知らせ
袋ラーメンを買い集めてきて全部冷やし中華にする
たくさんの袋麺を買い集めてきたのだが、そもそも袋麺には冷やし中華もあるわけで…
※これから色々な袋麺を冷やし中華にしていきますが、忙しい方はこの水色枠だけを見ていけば概要が分かって便利です。
ラ王、正麺、今日は買い漏れたが中華三昧あたりが袋の冷やし中華としてメジャーだろうか。
新しい人類はラーメンを冷やし中華と呼ぶ
わざわざラーメンの袋麺を冷やし中華化しなくてもラ王冷やし中華を買えばいいのである。もちろん。
だけど手があまり伸びない。冷やし中華の味は醤油とごましかない。「これを何回も食うのか」と思うと複数入った袋麺に伸びた手が止まってしまう。これが今までの人類である。
だが一般的なラーメン袋麺を冷やし中華化できれば一気に味のバリエーションが増える。スーパーのラーメン売り場は冷やし中華売り場となる。それが気候に合わせた新しい人類である。
冷やし中華用インスタント麺はさすがの完成度
ラ王冷やし中華を食べてみる。くわっ!!
ここ最近、普通の袋麺を冷やし中華化して食べていたので専用の冷やし中華を食べてみるとその「ちゃんとしてる」度合いに声が出た。音にすると「ぐぬぬ」であるし続くセリフは「やりおるわい」である。
「袋麺を使って冷やし中華ができるか?」という点ではこれを超えることはないだろう。本物を目指して作られているのだから。
今から私達はちがう道で頂上を目指す。そして本物を超えるのだ。
冷やし中華用の袋麺はさすが本物。ここに野生の冷やし中華たちが挑んでいく。野良犬がドーベルマンに勝つ日は来るか!?
袋ラーメンの冷やし中華化スタート
それではインスタント麺の冷やし中華化を紹介しよう。一番スタンダードなものとして、生麺タイプの袋麺のしょうゆ味を選んだ。これを冷やし中華化するのは初めてである。
酢と砂糖を小さじ1入れるだけ
冷やし中華のレシピを見ると酢と砂糖が入っている。そこで袋麺のスープの素に酢と砂糖を小さじ1ずつ入れてみたところちゃんと冷やし中華になった。
今日は「スープの素に酢と砂糖を小さじ1ずつ入れたもの」を冷やし中華のタレとする。
麺を水で締めてタレをかけて完成であるが注意点としては
・タレは全部使うと味が濃すぎる
・表記時間どおりに茹でると硬い
くらいだろうか。袋に書いてある時間を茹でて水で締めると硬い気もするので少しゆですぎるくらいがよさそう。
ラーメンは獣っぽいぞ
食べてみると獣! 冷やし中華にはない動物性のうまみがまず来る。そうだ、ラーメンは鶏ガラとか豚骨とかがベースにある。どんぶり一杯分のスープに効かせまくるための動物うまみがぎゅ~っとたれに凝縮しているのだ。
それが悪いかといったら全然そんなことなく、ひょえ~新しぇ~!という味。動物系だしを効かせ来るという冷やし中華の新しい波である。私たちはボードをかついでこの波に乗るしかない。
正麺(生麺タイプの袋麺) 醤油味
鶏や豚の味を強く感じるニューウェーブ冷やし中華 75点
昔ながらの揚げてる系袋麺に
ここからやったことのない領域に入っていく。昔からある袋麺はたいてい麺が揚げられている。揚げ麺の冷やし中華化である。
冷やし中華にもたらされたスナック的カジュアルさ
食べてみる。揚げ麺独特のスナックっぽさ。いやいや、悪くない。おいしい。このスナック的な気軽さは冷やし中華にはなかったものだ。もっとどっしりとして重いもの。
味噌味なのも悪くない。地方によってはこういう冷やし中華もあるのかなというちょっとした珍しさ。一方「味噌ラーメンが酸っぱいのはおかしい」という酸味への違和感も生まれる。味によって酢の量は調整が必要なのかも。
スナック的なことや味噌味は本物の冷し中華から遠のいていくのも事実。ちょっと違うんだな、が麺とスープで2つあると違和感が際立ってくる。
だけど夏に熱い熱いサッポロ一番を食うのかと思うと、こちら。温度は美味しさの一つ。
サッポロ一番 みそ味
スナック感と変化球スープで珍しい冷やし中華に 65点
とんこつは冷やし中華になるのか?
バリカタは冷やし中華界に早すぎた新星
とんこつと言えばバリカタとか言うしな、と極力硬めにした…それでもバリカタは怖く2分くらい茹でてしまった。水で締めるとカタ、くらいの硬さ。噛むとごわし。ごわし。硬さはやがて噛むのに疲れてきた。
豚骨味の冷やし中華は味噌よりも合っているように思う。でもそれは豚骨系のラーメンに酢を入れたことがあるからかもしれない。結局はなじみの問題であるのか?
新しい味を探るときにぶち当たる問題、それが「結局なじみの味が一番美味しい」問題である。
うまかっちゃん 濃厚新味
とんこつ冷やし中華に一筋の光明を見せるもカタは要らない 70点
辛ラーメンどうなるんでしょうか…
唐辛子そのものやないですか…
先にタレをなめてみると唐辛子味としか言いようのない味で、これは……と思って食べてみるとやはり唐辛子味。うまみより何より辛味が支配した世界。水が配給制になっている世紀末である。お兄さんが持ってる野球のバットに釘ささってますね、みたいな状態。この殺伐とした世界は温かいスープで味わうよりも強烈なのではないか。
蒙古タンメン中本も冷しが辛いというし、冷やし中華化は辛みを増すのかもしれない。
辛ラーメン
冷やし中華化は辛さを上げるのでは? 30点??(辛さ強い人は高いだろう)
カレーうどんもある
冷しカレーうどんなんてものはない
おいしそう!という見た目に崖に向かって走り出し、一口食べて「やらなくていい!」と叫びながら断崖絶壁から身投げするような体験。
味は「理屈上は」おいしいはずなのだが、違和感が先にきてしまう。
もっとも違和感を感じるのが「カレーがすっぱい」という点ではないか。すっぱいカレーはなくはないが、それが冷やし中華になっているという二重に違和感がある。
すっぱさは腐敗の兆候でもあるし、私達はかなりすっぱさに敏感なのかもしれない。
マルちゃん カレーうどん
すっぱいカレーになって食べたことのない味に 55点
興味本位で焼きそばの冷やし中華化
すっぱい冷やし焼きそばの出来上がり
袋麺の焼きそばも冷やし中華になる。これはやった者がいまだかつていないだろう。
一口食べるとユリイカ! やらない理由がわかる。あ~すっぱいすっぱい。ソースがそもそも酸っぱいのにお酢を加える意味がわからない。
加えて、水で締められたことで焼きそば特有の麺の油分がなくなっている。油を切った酸っぱい冷し焼きそばの完成なのである。
油がなくなるのも酸味が加わるのもそれ自体は悪いことではないのに、この流れではいいことがまるでない。料理というのは文脈であるのだなと分かる。
日清 焼きそば
油を落としたヘルシー酸っぱい冷し焼きそば 45点
二郎ラーメンあったぞ
オラオラ系は冷やし中華に合う
二郎系と思しき袋麺を冷し中華化。うまっ! 味のインパクトが強い。ここまで悪い流れが続いてきていたが、ここに来て復活である。
動物系のだし感が強いというわけではなくベースにある感じで、ガツン部分はにんにくとしょうゆである。にんにくしょうゆ味の冷やし中華は店でも出してほしい。こうした開拓のよさが冷やし中華化でもある。
麺がワシワシ、たしかに。ワシワシとして冷やし中華にも合う。ただし顎が疲れそう。
一方「これ本来のスープにした方がよさが味わえるんだろうな」という印象もある。余ったタレは捨てることになるし冷し中華化は夏のぜいたく。
マルちゃん ZUBAAAN! にんにく旨豚醤油
にんにく醤油味で冷やし中華の領域が拡張された 80点
レジェンド登場
袋麺というからにはチキンラーメンは外せないよなと思う一方、チキンラーメンは麺に味がついているので湯がいて水で締めることができない。
なので数十秒ゆがいて放置してふやかして水でさっと温度を低くして砂糖と酢をかけるということにした。
レジェンド、おかえりください…
酸っぺえ。チキンラーメン味は残すことに成功した。ただしその分「チキンラーメン+お酢+砂糖」感は否めなくなった。
これはやはり冷やし中華の本来からだいぶ遠いものなのだと思う。ラーメンというくくりは同じだが、味のついた麺はかなり印象が違う。
人間の欲してる成分的にはうまいに違いないのだが……私達が冷やし中華にもとめているのは「おなじみの」味なのだということもわかる。
チキンラーメン
酸っぱさや甘さが邪魔。チキンラーメンで食べたい。冷やし中華からはだいぶ遠い 60点
うまそうなのはこれだ! 生麺タイプの担々麺味
その時、歴史は動いた
みなさま、いよいよ今日のその時が来ました。やってよかった、ラ王の担々麺味の冷やし中華化。どろっとした赤いタレがまず美味そうだが食べてみると鮮烈なラー油の香り。これはいい…!! もしかしたら冷やし中華が今一歩踏み出すべきなのは「良いラー油」なのかもしれない。
真夏に担々麺を食べるのは気合がいるが、これなら手軽においしい。冷やし中華のごまと醤油に割って入れる味。
考えてみれば担々麺に「ごま」要素が入っているのが大きいのかもしれない。これも新しいラー油ごまだれ冷やし中華とも言えるだろう。やはり私達が冷やし中華に求めるのは「本来の味」であるのか。
ラ王担々麺味
ラー油が本格的でごまの風味と合って抜群にうまい 90点
塩をやるのを忘れていたが…
塩冷やし中華にレモンしぼりたい
日清のラーメン屋さんシリーズは揚げたタイプの袋麺で価格も安いもの。それの塩を試した。サッポロ一番みそラーメンと似た結果になると思ったが……なぜかこれがバチッとはまった。
塩味がなぜか冷やし中華として全く違和感がない。ああ、レモンを絞りたい。パクチーもいいしラー油もいい。ここをベースに香りを足していけば躍進するはず。そのままでもおいしいが将来性を見てしまう。冷やし中華界の21世紀枠。
日清のラーメン屋さん 函館しお味
塩味は冷やし中華に超むいてる。 85点
試食を終えて、私たちは「冷やし中華」という確たるイメージの味を追い求めているのだと気づいた。そこからずれた違和感が大きすぎると拒絶をするし、そこからぎりぎり一歩はみ出すくらいが新規領域の美味しさがある。
いや、そもそもラーメンを水で締めただけでも栄養素的な条件からはおいしいはずで、そこに酢や砂糖を入れるのも本来の「冷やし中華」という概念に近づけるためのものだ。結局私達の舌は歴史の文脈を感じ取れるようになっている。
そしてこの後は残飯処理のメシが続いた…!!
人新世の袋麺
日本の四季が「春夏秋冬」から「春殺す気か秋冬」に変わりつつあります。人新世だそうです。こんな気候にしたのは人間の活動によるものと科学者の方たちが何十年も研究して証明したそうです。これが人の手によるものであるならば、人の手によって袋麺も冷やし中華にしましょう。それが私達にできることではないでしょうか。他にもできることはたくさんありますが、とりあえず冷やし中華から始めてみてます。
ライターからのお知らせ
今日はニセモノの冷やし中華たちが本物の冷やし中華を超えるものを目指した話とも言えるわけですが、そんなコントを書いてました。
ここ一ヶ月くらい記事も書かず仕事もせず舞台のコント書いてまして、ようやく素晴らしいものができてきたので記事に戻りました。
くだらなさのためのコントの舞台です。くだらなさは詩と同じような認知の遊びだと私は考えます。日々情報を認知するのに疲れたあなた、どうぞあなたの脳を遊ばせに来てください。
明日のアーvol.8 本人コント公演「カニカマの自己喪失」
2022年8月5日(金)~7日(日)
東京都 吉祥寺シアター