ソニー初のゲーミングブランド「INZONE」シリーズに属する第1弾製品である4K表示対応モニター「M9」、およびヘッドセット「H9」/「H7」/「H3」が本日(8日)、発売開始となった。発売開始を記念し、銀座のソニーストアでユーザー向けイベントが開催され、製品開発担当者、およびバイオハザードの総合ディレクターである川田将央氏を招いだトークショーがユーザー向けに公開された。
なお、銀座ソニーストアでは、予約制の体験イベントを7月31日まで実施中。さらに7月10日までの間、「INZONEガールズ」がお出迎えし、製品説明をしてくれるという。
INZONEシリーズの詳細については、別途ニュース記事をご覧いただきたい。
ブラビアの高画質技術を活用したM9
トークショーでは同社 モニター設計担当の竹田右京氏が、M9の特徴について解説。同氏はソニーに入る前、さまざまなゲームをプレイしていて、ゲームの映像をきれいに映せるゲーミングモニターを設計したかったのだそうだが、「まさかこんなに早く実現できるとは思わなかった」と本人も驚いたのだという。
INZONEのゲーミングモニターはM9と「M3」(年内発売予定)の2種類が用意されているが、このうちM9については高画質を求めるユーザー、M3は高速駆動を重視するユーザー向けの製品となる。
M9では144Hz駆動と4K表示を組み合わせてはいるのだが、直下型駆動のLEDバックライトを採用し、IPSパネルではあるものの高い色再現性とコントラストを実現。オープンワールドゲームや、バイオハザードシリーズのようなシネマティックなゲームと相性が抜群だという。
特に4K解像度によって、フルHDでは再現できないディテールを再現できるほか、直下型バックライト部分駆動により、DisplayHDR 600認証も取得していて、暗いシーンでは暗く、明るいシーンでは明るく、トーンジャンプせずにすべての階調を再現できるのが特徴だとした。ちなみに大型のTVでは直下型LEDの制御も比較的容易なのだが、27型クラスだと周囲への光の漏れを考慮しなければならず、開発においてもっとも苦心したという。
「この直下型LEDバックライト駆動は(液晶TVの)ブラビアでも採用されている技術。エッジバックライトでローカルディミングを行なう製品と比較して、ピンポイントの明るさをシャキッと再現できる。M9を使えば、これまでのディスプレイでは見えなかった暗闇の中にあるディテールなど、ゲームにおいて新たな発見をしてもらえると思う」と語った。
一方M3はまだ開発段階だが、240Hz駆動でFPSゲームといった高い競技性のゲームに適している。DisplayHDR 400も取得予定で、sRGBカバー率99%を実現するとしている。
いずれの製品も、デザインコンセプトとしてはキーボードとマウスの配置の自由度を高めており、ゲームに集中できるようにしたという。また、OSD操作は背面のジョイスティックで行なえるが、より簡単に設定が行なえるよう、ソフトウェア「INZONE Hub」により、マウスで操作できるようにしているのが特徴だとした。
音にこだわった現代のゲームにこそヘッドセット
ヘッドセット製品については、同社 ヘッドセット設計担当の生出健一氏が解説。同氏はヘッドフォンの設計を10年以上担当しているのだが、近年のゲームコンテンツの“音”へのこだわりが高まっていることを実感しているため、ワクワクしながら設計できたという。
今回のINZONEシリーズで特に注力したのは音質のバランス面よりも「定位」だ。平たくいえばサラウンド技術や立体音響技術となるわけだが、前後左右のみならず上下の空間も再現できるようにし、ゲームの臨場感や没入感を高めてくれる。特にPlayStation 5のTempest 3Dオーディオとは相性が抜群だという。
一方で装着感にもかなりこだわっており、側圧(左右から頭を挟み込む力)を弱めるだけでなく、素材もかなりクッション性に優れたものを採用することで、10時間以上装着しても疲れないつけ心地を実現したという。
また、H9にはノイズキャンセリング機能も搭載されており、ソニーのこれまでのノイズキャンセリングの技術を活かすことで、エアコンや同居者の生活音を消去し、よりゲームへの没入感を高めてくれる。さらにH9とH7はUSBドングルで接続するが、PlayStation 5では連携機能も実装しており、ゲーム音とチャット音のバランスや音量などをPlayStation 5側から調節できるようにしたという。
生出氏は「今回のINZONE製品は私たちヘッドフォンチームが自信を持っておすすめする製品」と胸を張る。ゲームで活用できるのはもちろんのことだが、同氏はWeb会議でも使っており、「1日中つけていられる」とアピールした。
INZONEによる再現でゲームクリエイターの苦労が報われる
ゲストとして招かれたカプコンのバイオハザード総合プロデューサーの川田将央氏は「事前にソニーさんよりお声がけを頂いて、M9とH9を試す機会を得たのだが、バイオハザードと非常に相性がいい商品であると思った」と語る。ゲーミングモニターと言えばこれまで高リフレッシュレートばかりが謳われていたのだが、映像の美しさも重要であると改めて気づかされたという。
「3Dグラフィックスで自然を表現するというのはなかなか難しいのだが、M9なら先まで細くなっている木々の枝、モヤがかかっている奥行きのある建物など、クリエイターが意図したディテールまでを再現でき、思わず目を近づけてゲームをしたくなった。ここまできれいだとなかなかごまかしが効かないなと思った」のだという。
「これまでのゲーム、カットシーンの多くはプレレンダリングだったりしたのだが、最近はハードウェアの性能が高まっているため、リアルタイムレンダリングでシームレスな演出が可能になっている。27型で4K解像度は、このシームレスな表現に拍車をかけてくれるし、高いコントラスト比を活かし、エフェクトが多く入り交じるようなシーンでも美しく表現してくれる」とも語った。
一方で効果音についても、「いろんな工夫でさまざまな音を収録しているのだが、それがきっちり再現できているだけでなく、上下の定位もすごく、ゲームに臨場感を与えてくれる。サウンドクリエイターはいろいろ工夫して作っているのだが、ここまで再現されるとクリエイターとしてもうれしい。実際上下の定位の良さは、音作りをしているクリエーターも驚いたほど」と述べた。
また、製品の外観についても、「これまでのゲーミング製品では見られないような特徴的なデザインとなっていて、購入者が箱から出す際のワクワク感、ドキドキ感が得られるのではないか」とした。
トークショーの後の質問コーナーでは、INZONEの今後の展開について問われると、竹田氏は「勝手なことはあまり言えないのですが、私の希望としてはまずヘッドセットとモニターでPC業界に参入していって、できればほかのペリフェラル——マウスやキーボード——にも展開したいと思っている」と応えた。
一方川田氏からは「Xperia Z3 Tablet Compactというタブレットを未だに愛用しているのですが、そろそろ……というところでタブレットはどうでしょう」というアグレッシブな要望が飛んだ。竹田氏と生出氏は両氏ともタブレットやスマートフォンにおけるゲーミングの広がりについて認識しているとしつつ、現時点では「タブレット自体はモニターに対抗してしまう」とコメント。一方で「モニターにタッチをつけたらどうでしょう」と川田氏に投げかけた。「それは新しい何かができるかもしれません。(そういうのができたら)ゲームとしても考えなければならないですね」と答えた。
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