オフィス回帰の流れが強まってきたことで、在宅勤務を継続しつつも必要に応じて出勤し、オフィスで仕事をする機会が増えてきているのではないだろうか。そのせいで、もしかすると新たな課題に直面している人がいるかもしれない。たとえば自宅と職場のPC環境がアンバランスで仕事が進まなかったり……など。
特に業務効率に直結しやすいモニター周りの差は大きく感じられるものだ。在宅勤務中に自宅のモニター環境を充実させたものの、ノートPCだけ持ってオフィスに出勤したら生産性が激下がりした。逆にオフィスのマルチモニター環境の快適さに改めて気付き、自宅環境のアップグレードの必要性を痛感したなどといったことはないだろうか。
そんな人に強くおすすめしたいのが、EIZOのプレミアムモニターの新製品「FlexScan EV2490」(以下、EV2490)だ。モニター製品は数あれど、ほかとは一味も二味も違う機能を備えている。最初に答えを言ってしまうと、 今あなたが持っているモニターも有効活用できちゃう、というのがミソ。たった1本のケーブルでモニター同士を数珠つなぎして、マルチモニター化できてしまうのだ。 なんだかすごく気になるこの製品、早速どんなものなのか見ていこう。
USBハブと有線LANポートを内蔵する圧倒的使いやすさ
新登場のEV2490は、23.8型のフルHD(1,920×1,080ドット)液晶モニター。基本性能はビジネス用途ど真ん中のスペックだが、 特徴としてまず挙げられるのは「USB Type-C対応」であることだ。 これは、外部モニターとしての圧倒的な「使いやすさ」につながる要素。USB Type-C搭載モニターは今や珍しくないが、早速ここにEV2490の一味違うポイントがある。
USB Type-Cは、最近のノートPCやデスクトップPCの多くが装備している端子だ。Thunderbolt 3/4やUSB4という名称になっている場合もあるが、このポートが DisplayPort Alternate Modeという映像出力の規格に対応していると、モニターにUSB Type-Cケーブルを1本接続するだけで映像出力が可能になる。
また、ノートPCと接続した場合、映像出力と同時にモニター側からの給電も可能なため、別途ノートPCに充電用のACアダプタを接続しなくて済む。 EV2490はUSB PDで最大70W出力となっており、大容量バッテリを搭載するノートPCでも高速充電できる。 ノートPCを携帯して自宅とオフィスを往復しているような場合でも、サクッと1本接続するだけで映像出力&給電ができ、かさばるACアダプタを持ち歩く必要がなくなるのは利点だ。
で、ここまでは世の多くのUSB Type-C搭載モニターと特に変わるところはない。しかし、 EV2490で特徴的と言えるのが、ドッキングステーションに匹敵する機能をモニターにも内蔵していることだ。
EV2490のUSB Type-Cに接続することで、 映像出力と給電に加えて、モニター側に用意されているUSB Type-Aポート×3、有線LANポート、内蔵スピーカーまたはオーディオ(ヘッドフォン)出力端子が使えるようになる。
たとえばUSB接続のWebカメラ、外付けHDD/SSD、マウスやキーボードなどの周辺機器をモニター側にまとめて接続し、その上で安定した通信が可能な有線LANポートを使う、といった機能拡張が可能だ。
USB Type-C接続ならこれらがすべて1本で完結するので、出社もしくは帰宅した後、コネクタを1つ差し込むだけで、周辺機器も含め万全の状態でPCを使い始められる。 コンパクトなノートPCほど基本的には外部インターフェイスは少なくなるため、それを補うためにオプションのドッキングステーションが用意されていたりするが、EV2490ならそんな追加アイテムは不要なのだ。
既存のUSB Type-Cモニターともデイジーチェーンできる
「いやいや、USBハブ機能を備えるUSB Type-C搭載モニターなら、それほど多くないけれどほかにもあるよ」と言いたい人もいるだろう。しかし、そこからもまた一味、二味も違うのがEV2490だったりする。
EV2490には実はもう1つ、USB Type-Cのダウンストリームポートも用意されている。これを使うことで、もう1台のEV2490、または他社製のUSB Type-C搭載モニターとのデイジーチェーン接続が可能になるのだ。
たとえばノートPCから1台目のEV2490とUSB Type-Cで接続し、さらにそのEV2490から2台目のEV2490に別のUSB Type-Cケーブルで接続すると、あっという間にマルチモニター化が実現する。
2台の外部モニターを接続しようと思うと、通常はPC側からケーブルを2本伸ばさなければならない。わずかとは言え手間は増えるし、大体は接続方法がDisplayPortとHDMIなど、ケーブルの種類が変わることになる。場合によっては変換アダプタを組み合わせなければならないケースもあるだろう。
しかし、EV2490だとモニターが2台でも3台でも(※3台目の対応はPCのGPU性能による)、ノートにつなぐのはケーブル1本だけ。もちろん1台目のEV2490のUSBハブ機能は有効のままで、2台目以降もUSB通信が行なわれていればハブ機能が利用できる。
また、先ほど書いたように、 2台目のモニターについては必ずしもEV2490である必要はない。USB Type-C対応ならEIZO製でも他社製でもデイジーチェーン接続が可能だ。2台目のモニターの仕様が「デイジーチェーン非対応」であっても問題なし。 これはかなり強力で、既存のモニターも有効活用したい(おそらく大多数の)人にはありがたい機能と言えるだろう。
USB Type-C非搭載モニターもデイジーチェーン、EV2490をサブモニター的に使うのも全然アリ!
でもって二味目(実質三味目になるが)がさらに強力だ。 なんとUSB Type-Cポートのないモニターであっても、2台目以降の外部モニターとしてデイジーチェーン接続できるのである。
方法は、USB Type-C – DisplayPort変換ケーブルを使い、1台目のEV2490のUSB Type-Cダウンストリームポートと、非搭載モニターのDisplayPortをつなぐだけ。これで非搭載モニターにも映像が出力される。EIZOの直販サイトEIZOダイレクトでは、手持ちのモニターとEV2490を接続するためのUSB Type-C – DisplayPort変換ケーブル「CP200」を「EV2490」とセットにしたお得な商品も用意している。
USB Type-Cモニターは、ここ数年ラインナップとしては増えてきたものの、 HDMIやDisplayPortしかないモニターを使っている人もまだまだ多いはず。その資産を無駄なく活用してマルチモニター環境にできるパワフルさはEV2490ならではのもの。 この機能には思わず導入してみたくなるほどの魅力があるのではないだろうか。
また、 CP200にはもう1つ紹介したい利用方法がある。それは映像出力可能なUSB Type-Cポートを備えていないデスクトップPCを2台、EV2490に接続したい場合も、利用できるというものだ。
どういうことかと言うと、EV2490には映像入力ポートとして、USB Type-C、DisplayPort、HDMIがそれぞれ1基ずつ装備されている。たとえば、EV2490を映像出力対応のUSB Type-Cを備えていない2台のPCにつないで使いたい場合に、DisplayPortかHDMIを使うしかない。
ところが、 EV2490はUSB Type-C入力がDisplayPort変換入力にも対応し、なおかつCP200が双方向接続のケーブルのため、PC側にCP200のDisplayPortコネクタをつなぎ、USB Type-Cコネクタ側をEV2490につなぐことで、画面出力できてしまうのだ。
EIZOによれば、複数のデスクトップPCに1台のモニターを接続して入力を切り替えて使用する方法は、金融やCAD、3DCGに携わる方によく見られるそうで、PCの出力がDisplayPortに限られるため、DisplayPortを2系統備えたモニターが要望されることもあるようだ。EV2490はCP200を使ってこのニーズに応えられる。
こうした要望は、EV2490とCP200を組み合わせることで解決できることに加え、 これから間違いなく普及が加速するであろうDisplayPort出力対応のUSB Type-Cポートを備えたモニターを用意しておけるので、将来的にも安心だ。
ちなみに、この使い方に、EIZOのUSB Type-C搭載モニターは広く対応しており(EV3285、EV2785、EV2780を除く)、EIZOダイレクトでは各USB Type-C搭載モニターとCP200をセットにして、個別に購入するよりお得にしたセット商品を用意している。PCとモニターを有効活用するテクニックとして知っておきたい。
なお、上記の使い方でCP200でつないだ場合は、当然USB PD出力やUSBハブ機能は使えないので、その点は注意されたい。
EV2490をサブモニターとして活用
ここまで説明してきた通り、 EV2490は使い勝手に優れつつ、ほかのモニターとのシナジーが非常に高い点が、同サイズの他社製モニターとの大きな違いと言える。 その特徴を生かすことで、自分のデスク環境をもっと使いやすく改良できるのだ。
たとえば、現在27型やそれ以上の大型モニターを使っているとして、そこにEV2490をあえてサブモニターとして導入してみるのはどうだろうか? すでに説明した通り、別のモニターがUSB Type-Cを装備していないか、あるいはデイジーチェーンに対応していなかったとしても、その弱点はEV2490がカバーできる。
上の写真にあるように、 中央にある27型モニターの大画面を生かしつつ、EV2490を縦型配置のサブモニターにするなんてことも可能だ。 EV2490を標準付属のUSB Type-CケーブルでPCと接続、27型モニターはDisplayPortを利用し、EV2490とCP200でつなげば、デイジーチェーンでケーブルがゴチャつかずに済む。USBハブや有線LANポートも利用でき、ノートPCを使っているならUSB PD給電も行なえる。まさに至れり尽くせりである。
EV2490をメインモニターとして活用
逆に、 EV2490をメインモニターとして利用する場合の例としては、その高機能さを生かして現状のPCの弱点を補うという使用方法が考えられる。
EV2490について、USB Type-Cを備えたPCを持っていないから自分には関係なさそう、なんて思ってしまいそうだが、CP200を使うことでEV2490の恩恵をしっかりと受けることができる。
たとえば、ほとんどのデスクトップPCは、DisplayPort Alternate Mode対応のUSB Type-Cポートを備えていないものだが、すでに説明した通り、 CP200を使えばデスクトップPCのDisplayPortから、EV2490のUSB Type-Cをつないで画面出力が行なえる。わざわざUSB Type-Cを備えたPCを用意しなくても良いのだ。
モニターはPCの周辺機器の中でも特に長く使っていくもの、1台のモニターを運用していく中で、何度かPC環境が変わるなんてことはざらだろう。そう考えると、 将来性のあるUSB Type-C装備のモニターを導入しておくメリットは計り知れない。数年経って、USB Type-C装備のノートPCを購入したとしても、改めてモニターを買い換える必要がないので、理に適った先行投資と言える。
EV2490を贅沢に導入。自宅環境をアップグレードしてみた
さて、そんなどんなモニター、どんなPCがあっても夢が広がるEV2490だが、筆者も自宅に導入して環境をアップグレードしてみた。今回は贅沢にEV2490を2台用意しつつ、27型で同じくEIZO製のFlexScan EV2750(生産終了品)を使用した。EV2750は2015年発売のWQHD(2,560×1,440ドット)モデルで、もちろんUSB Type-Cはないし、デイジーチェーンにも非対応だ。
それでその結果だが、下の写真のように2台のEV2490と、USB Type-C非搭載のEV2750の計3台でデイジーチェーン接続している。もちろんEV2750が他社のモニターだとしても問題ない。
PCのグラフィック性能が影響するため、スペックによっては表示されなかったり、モニター本来の解像度にならない可能性がある点には注意したいが、いずれにせよ ケーブル1本だけでデュアル、トリプルとマルチモニター環境を強化していけるのは、便利を通り越して感動すら覚える。
なお、MacBookなどのmacOS環境は、OSがデイジーチェーン接続に対応していないため、外部モニター2台目以降はミラーリング表示になることに注意。最近のApple M1チップ搭載機では外部モニターは1台のみ、M1 Proチップは2台、M1 Maxチップは4台までの対応となることも頭に入れておきたい。
USB切替器不要のKVM機能搭載
さて、USB Type-C接続やデイジーチェーン接続の使い勝手の良さが光るEV2490ではあるけれど、DisplayPort、HDMIポートがあるのでPCにUSB Type-Cがなくても映像出力が可能、かつUSB Type-BアップストリームポートもあるのでUSBハブ機能も使える。 PC側にUSB Type-Cポートがなかったとしても映像出力は可能だし、モニターが備えるUSBハブ機能も多くのPCから利用可能だ。
USB Type-C以外にも接続方法が用意されているということは、つまり、 ノートPCとデスクトップPCの2台を使っているときに、モニターをそれらのPCの間で共有したい、という要求にもEV2490はきっちり応えてくれるということになる。 モニターはデスクスペースをそれなりに占有してしまうものなので、共有してスタイリッシュに活用したい、と考える人もいるはずだ。
ただ、そうするともう1つ問題になりそうなのがキーボードやマウス。2台のPCそれぞれの操作用デバイスをデスク上に置くことになれば、やっぱりデスクスペースが狭くなる。これに対処するためにはUSB切替器を別途購入し、1セットのキーボード・マウスで使えるようにすることが考えられる。が、EV2490ならその問題もモニター本体だけで解決可能だ。
その解決手段が、 EV2490に内蔵されている「KVMスイッチ」機能。EV2490のUSBハブ機能を使えるようにし、キーボードとマウスをEV2490のUSBポートに接続。その状態で映像入力を切り替えると、映像出力元のPCを操作できるようになる仕組みだ。
たとえばUSB Type-Cで接続しているノートPCと、DisplayPortかHDMIで接続しているデスクトップPCがあるとき、 モニター本体前面のボタンで映像入力を切り替えるだけで操作対象も切り替わる。
KVM機能を内蔵するドッキングステーションも販売されているが、価格が数万円からと比較的高価である点がネックだ。 EV2490にKVM機能が含まれていることを考えれば、モニターとドッキングステーション、そしてKVM機能を一挙に投入することができ、かなりお得と言えるだろう。
画面切替/分割が便利になるScreen InStyle
また、 Windows環境では無償ソフトウェアの「Screen InStyle」をインストールすることで、その映像入力切り替えが楽になるうえ、EV2490が持つほかの機能の利便性をさらに高めることが可能だ。 ホット(ショートカット)キーを設定するとキーボードのワンタッチ操作で映像入力を切り替えられ、モニター前面のボタンに手を伸ばす必要すらなくなる。
ホットキーでの画面切り替えなどが可能
ホットキー機能では、好みのカラーモードにすぐに切り替えることもできる。 たとえばモニターを縦置きして文書を読むとき、キーボード操作でさっと「Paper」のカラーモードにして目に優しい状態で使うことができるのだ。しかもScreen InStyleには「サーカディアン調光」という機能も用意され、時間帯に応じて画面の色温度を最適に変化させられるようにもなっている。
ホットキー機能に続いて便利なのが「画面分割」機能だ。画面分割機能は、縦/横で1×1や2×2など、さまざまなウィンドウの配置方法を選ぶことができる。 Windows 11にもウィンドウを分割するスナップ機能が用意されているが、 Screen InStyleには合計12ものプリセットが用意されており、ユーザーの多様なスタイルに応じた使い方が可能だ。
使い方も簡単で、Shiftキーを押しながらウィンドウをドラッグするだけ。Shiftキー押下時に半透明のガイドが表示されるので、その位置にウィンドウを持ってくるだけでいい。さらに、 画面分割機能はEIZOのモニターでなくても設定できるため、既存のモニターと組み合わせて利用する場合にも役立つ。
EV2490には内蔵の照度センサーを利用した「Auto EcoView」機能もある。この機能もScreen InStyleで簡単に有効化でき、周囲の明るさに応じてモニターの輝度を自動で切り替えてくれるので、消費電力の抑制にもつながる。 社員の健康や経費削減を考えている企業にとっても、EV2490はメリットが多いのだ。
国産の安心感が得られ、サステナビリティへの貢献も
EV2490のダメ押しのポイントとして最後に挙げたいのが、 EIZOの国産製品という安心感。EIZOのモニターは石川県にある国内工場で製造され、人の目による厳格な全数検査を経て出荷される。 液晶モニターはドット抜けのほか、色や明るさのムラなど、初期不良や性能の個体差が不安な製品の1つでもあるが、そうした トラブルを最大限に防ぐ品質管理体制をとっているEIZOの製品は、ユーザーにとっては大きな安心につながるものだ。
5年間の長期保証、半年間の無輝点保証など、万が一の不具合発生時に対処してくれる点も、国産メーカー、国内製造の信頼性の高さを裏付けしている部分だろう。
近年は製品そのものに再生プラスチックを多く使用し、梱包材にもリサイクル可能なもの、もしくは環境負荷を低減する素材を積極採用するなど、サステナブルな社会に向けた取り組みも行なっている。 EIZO製品を導入することで、そうした活動に企業として貢献することにもつながるため、社内での稟議申請時の説得力が増すかもしれない。
EV2490は公式オンラインストアの「EIZOダイレクト」のみでしか手に入らない限定的な製品となっている。モニターとして大きな魅力がある機能、性能はもちろんのこと、社員の健康増進やランニングコストの抑制、SDGsへの貢献など、さまざまな面でメリットが得られるEV2490は、そのスペックや価格から感じられるところ以上に価値がある、と言えるのではないだろうか。
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