カゴメ×NEC、AIを活用した営農支援で合弁会社–グローバルトマト市場シェアトップ目指す

CNET Japan

 カゴメと日本電気(NEC)は6月15日、AIを活用して加工用トマトの営農支援をする合弁会社「DXAS Agricultural Technology(ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー)」をポルトガルのリスボンに設立すると発表した。

圃場可視化イメージ
圃場可視化イメージ

 設立は7月で、現カゴメ スマートアグリ事業部長の中田健吾氏がCEOに就任予定だ。資本金は3億円相当ユーロで、株主比率はカゴメが66.6%、NECが33.4%。2030年までに事業価値1000億円を目指す。

トマトは世界で一番作られている野菜

 実は、NECとカゴメは2015年から最先端の加工用トマト栽培技術について開発を続けてきた。ポルトガル、スペイン、オーストラリア、米国で実証試験を重ね、現在では7カ国で事業を展開している。

 カゴメとNECがなぜトマトを手がけるのか。トマトは生産額ベースで見ると、世界で一番作られている野菜という。生で食べるだけでなく、ジュースやケチャップ、ソースなどの調味料にもなり、幅広く活用されている。そうした調味料の原材料が加工用トマトだ。

日本でイメージするトマト栽培は左の写真を浮かべる人が多いかもしれないが、生鮮トマト用。加工用トマトは右のような広大な畑で栽培されるという
日本でイメージするトマト栽培は左の写真を浮かべる人が多いかもしれないが、生鮮トマト用。加工用トマトは右のような広大な畑で栽培されるという

 生鮮トマト用と加工用トマトは、品種だけでなく作り方も異なる。加工用トマトは大規模な畑で栽培し、大型機械で一気に刈り取っていく。「畑にはベテランの営農指導者が付き、1つあたりおよそ100ヘクタール(東京ディズニーランド2つ分)といった広大な畑を、1人で20枚程度面倒を見るのがふつう」(カゴメ 取締役専務執行役員の渡辺美衡氏)だが、広大なため一週間に1回程度しか回れず、油断すると病害が広がってしまうことがあるという。

 また、ベテランと栽培初心者では、コストや収量にも大きな差が生じる。そうした“匠の技”をリモートセンシングとAIを組み合わせることで、実用化したのが新会社で核となるサービスが「CropScope」だ。

収穫前のトマトとセンサー
収穫前のトマトとセンサー

 AIを活用した営農アドバイスサービスと圃場可視化サービス(センサーや衛星写真を活用)を軸とする。カゴメの子会社を中心に実証実験を重ね、実際に蓄積したAIの商用化により収穫量は30%向上し、肥料の投入を20%削減できた実績を持つという。

競合より優れているのは、匠の技を学習したAIが“処方箋”を出すこと

 ターゲットの中心は、トマトペースト世界生産量トップ50の加工会社だ。欧州を足がかりに、北米でも事業を拡大していく方針だ。

グローバルトマト市場のシェアナンバーワンを目指す
グローバルトマト市場のシェアナンバーワンを目指す

 CropScopeにより、農家にとって環境に優しく収益性の高い営農を促進するほか、技術継承が容易となり、新規就農者を増やせるメリットがある。また、営農指導者は、圃場が広大であっても、異常が発生している箇所を的確に特定し、正確なデータに基づく指導ができるほか、トマト加工会社は客観的なデータに基づいた全体最適な収穫調整により、生産性向上を図れるとしている。

 なお、日本における技術展開は、トマト栽培の方法がポルトガルやスペインなどとは異なるため、水平導入は難しいという。一部の技術を応用するスタンスで進めているとした。

蓄積したAI技術の商用化を開始
蓄積したAI技術の商用化を開始

 「センシングとAIといったスマート農業そのものは新しいコンセプトではないが、競合と比べて優れているのは、単に畑の状態を見える化するだけではなく、その畑の状態を診断し、そこからどう栽培していくべきかについて匠(たくみ)の技を学習したAIが“処方箋”を出すこと」(渡辺氏)。

 こうした取り組みは、「カゴメのアグロノミーとNECのテクノロジーの融合により初めて実現できること」と自信を見せる。CropScopeによって農業革新を起こし、環境に優しく収益性の高い営農を促進することで、世界各国での持続可能な農業に貢献することを目指す。

左から、カゴメ 取締役専務執行役員の渡辺美衡氏、カゴメ スマートアグリ事業部 事業部長の中田健吾氏、日本電気 執行役員常務 兼 CFOの藤川修氏
左から、カゴメ 取締役専務執行役員の渡辺美衡氏、カゴメ スマートアグリ事業部 事業部長の中田健吾氏、日本電気 執行役員常務 兼 CFOの藤川修氏

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