金属3Dプリントで脊椎疾患の早期治癒を可能に

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 大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授の研究グループは、国立病院機構北海道医療センターの伊東学統括診療部長、帝人ナカシマメディカル株式会社らとの共同研究により、新たな脊椎ケージを開発し、金属3Dプリンティングで作製、大型動物実験によりその有効性を発表した。

 脊椎ケージは、脊椎疾患により不安定化した椎間を機能的に連結癒合し、本来の力学的安定性を取り戻すためのデバイス。従来の設計では、ケージ内部/周囲にいかに多くの骨を再生するかを命題として開発されてきた。しかし、中野教授らは、再生骨の力学機能では骨量/骨密度よりも骨のコラーゲン/アパタイト配向性(骨配向性)が重要であることを明らかにし、骨配向性を整えることを目的とした脊椎ケージを開発した。

 本ケージは、早期/長期の骨の健全性化を達成するために設計された、一方向の「孔」と孔壁表面での微細「溝」構造による「ハニカムツリー構造」が最大の特徴で、金属3Dプリンティングを活用することでこの微細な構造の作製が実現した。

開発された脊椎ケージのデザインと高機能発現の仕組み

 研究では、ケージおよびハニカムツリー構造の有効性を実証するために、細胞実験とヒツジ脊椎への埋入試験が実施された。この結果、溝を付与した基板上で骨芽細胞が配列化していることが実証された。また、ヒツジ脊椎への埋入試験では、開発されたケージが従来のケージの3倍以上の強度を有していることや、長期的な骨配向性の維持には不可欠な、骨内部のオステオサイトの応力方向への配列化が認められたという。

ハニカムツリー構造上での骨芽細胞配列化

開発されたケージの高い強度特性とその要因となる頭尾軸への骨配向化

 今回開発されたケージにより、脊椎疾患の早期治癒や、ケージの脱転や沈み込みといった問題の改善、患者の身体的/精神的/金銭的負担の軽減が期待できるとしている。

 また、ハニカムツリー構造は今後臨床応用される予定で、帝人ナカシマメディカルの骨配向化誘導型脊椎ケージ「UNIOS PL スペーサー」に搭載されるという。

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