人は、見た目だけではなく声や匂い、手ざわりなどで他人を識別することが可能です。海に生息するバンドウイルカは他の個体を見分ける時に「鳴き声と尿の味で自分の友人かどうかを判別できる」という研究が発表されました。
Cross-modal perception of identity by sound and taste in bottlenose dolphins
https://doi.org/10.1126/sciadv.abm7684
Pee pals: Dolphins taste friends’ urine to know they’re around
https://phys.org/news/2022-05-pee-pals-dolphins-urine-friends.html
バンドウイルカは口笛のような音を使って特定の個体に呼びかけることで知られており、その音の使い分けを20年以上記憶することもわかっています。しかし、バンドウイルカは音を使わなくても見知った個体が接近していることに気づくことがあり、離れた場所にいる見知った個体をどうやって識別しているのかどうかはこれまで不明でした。
セント・アンドリュース大学の研究チームは8頭のイルカに対して、そのイルカがよく知っている個体と知らない個体の尿サンプルをそれぞれ提示しました。また、尿のサンプルを提示すると同時に、水中スピーカーから口笛のような音の録音を再生し、その反応が検証されました。その結果、イルカは知っている個体の尿サンプルを、知らない個体の尿サンプルと比べて3倍の時間をかけて「検証」し、仲間を認識することが確認されました。
イルカには匂いを感じ取る嗅球が存在しないので、嗅覚ではなく味覚で尿を検証していることになります。研究チームによると、イルカはあごを使って相手の性器を触る「性器検査」をよく行うため、その際に相手の尿の味を記憶している可能性があるとのこと。
研究チームは、「私たちの研究で明らかになった認識能力を考えると、イルカは尿から相手の生殖状態を把握したり、フェロモンを使ってお互いの行動に影響を与えたりする可能性があります。尿に含まれる脂質が個体識別の鍵になっている可能性が高いとみています」と記しました。
スティーブン・F・オースティン州立大学のジェイソン・ブロック博士は「イルカは口を開けたまま、見知らぬ個体よりも見知った個体の尿を長く採取します。イルカが脊椎動物として初めて味覚で社会的認知をすることがわかったというのは重要な事実です」と述べています。
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