「ああ、チャリ漕いでる!」動いたペダルと蘇った記憶 20歳で手足3本失った僕の感動体験

J-CASTニュース

   20歳の時に電車事故で右手と両足の3本を失った山田千紘さん(30)は、両足とも義足でペダルを漕いだことがある。自転車ではなく、フィットネスジムなどにあるエアロバイクだが、「昔の感覚が呼び起こされた」と大きな感動を覚えたという。どのようにペダルを漕ぎ、何を思ったのか。山田さんが語った。

   【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)

  • エアロバイクを漕ぐ山田千紘さん。YouTubeチャンネル「山田千紘 ちーチャンネル」の動画より

本物の自転車ではなく、エアロバイク

   この体でペダルを漕ぐことができるとは思っていませんでした。漕いだのは本物の自転車ではなく、エアロバイクのマシンですが。

   3年前の2019年のことです。義肢の専門家や企業などが一堂に会する「国際義肢装具協会世界大会」(ISPO2019)が神戸で開かれ、僕も義足メーカーのモデルとして参加しました。そこに「新しい義足ならこれも漕げる」として置いてあったのがエアロバイクでした。

   両足とも義足で、コントロールが効かないのでペダルに固定させます。ペダルを回す時に義足が車体にぶつかったり引っかかったりしないよう、真っすぐ固定します。乗る前にこうしたセッティングさえできれば、力強くペダルを踏んでいけました。

   僕が漕いだ感覚では、力が入るのは下腿義足をつけていて膝がある右足がメインでした。ペダルを踏んだ力の反動で、大腿義足をつけていて膝がない左足も動きます。上がってきたら左足も下に押します。右足は一般的な自転車を漕ぐのと同様の動作をして、左足は下に押す力だけ入れるという感じです。

   「新しい義足なら漕げる」という話をしましたが、自転車を漕ぐには義足の構造の問題もありました。事故直後に履いていた義足は、足を差し込むソケットの部分が股間ギリギリまで覆いかぶさっています。サドルに座ってペダルを漕ぐと、股がすれたり尻が当たったりして痛いので、エアロバイクであろうが漕げなかったです。新しい義足はソケットが短くスッキリとしているので、股や尻が痛いといったことがなくなり、エアロバイクを漕ぐことができました。

Source