期待と不安が半々だった『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を見た正直な感想 → これは「MG 機動戦士ガンダム15話」

ロケットニュース24

2022年6月3日から公開となった、『機動戦士ガンダム』シリーズの新作映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(以下 ドアンの島)』。

新作と言っても、本映画は1979年から80年にかけてTVで放送されたアニメ『機動戦士ガンダム』の15話の翻案だ。要は、アニメ15話のリメイクみたいなもの。

シリーズのファンからすれば注目せずにはいられない。が、事前に出てくる情報から微妙に不安も感じていた筆者。実際に見た感想を述べようと思う。

・ネタバレはほどほどにアリ

このレビューでは、映画のネタバレがほどほどに含まれている。映画のストーリーの大筋は、約40年も前に公開済みで、多くのファンが普通に把握しているであろうアニメ15話と同じだからだ。

新しい見どころや具体的な描写についてはボカそうと思うが、今さら何もかも内容に触れないよう配慮する必要はそんなに無いだろう。もし「アニメ15話は見ていないけどこの映画を見に行く!」という方がいるなら、ページを閉じてくれ! 


・不安だった

まずは筆者が「ドアンの島」の映画化に関して不安を感じていた理由だが……ズバリ、それはシャアが専用の高機動型ザクⅡに乗って登場すると聞いていたからだ。

えっ? 「ドアンの島」ってシャア関係なくね? 宇宙用の機体で何するん? もしかして、ゴリゴリにオリジナル展開なんか……? と思ってしまったのだ。

シャアは大好きなキャラクターだし、シャアが出てくる宇宙世紀のガンダムの新作が作られるなら、それは非常に嬉しい。しかしTVアニメの『機動戦士ガンダム』は、シリーズにおける教典のようなものではないか。

その内容が、神たる富野由悠季氏以外に改変される可能性を感じたら、ちょっと慎重になってしまう。それに「ドアンの島」は、アニメの15話だ。確かに独立した話ではあったが、それでも14話までの流れがあり、そして16話以降の流れもある。下手な改変は炎上待ったなしやぞ……?

とはいえ今回「ドアンの島」を手掛けたのは、『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の安彦良和氏。あれはいいものだったので、今回も信頼したい気持ちはあった。あったのだが、やはり蓋を開けてみないと何とも……という感じだったのだ。期待半分、不安半分


・安心の出来

そんな感じで見に行ったのだが、ストーリー周りについての結果は冒頭で述べた通り。大筋はアニメ15話のままだった。良かったぜ! シャアはアムロの頭の中にちょっとだけ出てくる感じだったので、歴史は変わらなかった。

ドアンのザクの、「作画崩壊」として有名なビジュアルが、「そういう仕様」になったりしているが、その辺はいいだろう。そもそも、昔のガンダムは作画に聊(いささ)か強烈な味のある回がチラホラあった。その味を仕様にするという発想は面白いと思う。


では、大筋の改変無しに約20分程度だった話が、どのように109分の映画サイズになっているのか。簡単に言えば、アムロが島にいる間の日常パートをそこそこ長くして、後半の戦闘パートもちょっと長くした感じ

戦闘シーンやモビルスーツの描写は、かなり気合が入っているぞ。個人的にはサザンクロス隊の高機動型ザク(地上用)がメチャクチャ格好良かった。もしプラモが出れば、リファインされたドアンのザクより売れるんじゃなかろうか。

個人的に少し物足りなく感じたのは、「ドアンがなぜ脱走し、あの島で孤児たちを守っているのか」という所が、少ししか描かれなかった点。若干重くなると思うが、脱走までの経緯や、罪の意識で苦悩する姿なんかをもっと掘り下げるのもアリだったのではと感じた。

とはいえ、総じて良かったと思う。感想を一言で言えば、タイトルにもある通り「MG 機動戦士ガンダム15話」。ストーリーはあの15話のままで、大勢に影響のない仕様の変更と、細部の解像度のアップ。そしてスケール(時間)をデカく。オリジナルを “HG” とするなら、この映画は “MG” な感じじゃないかなと。


・パンフは3種類

最後に触れておきたいのが、本作のパンフ。3バージョンもあるのだ。通常版が1100円、豪華版が2200円、そして数量限定版は4400円。


どれを買うべきか迷うだろう。通常版の内容は、よくある映画のパンフ。キャラの相関図や、簡単な舞台説明、そしてインタビューとかそういうのだ。

豪華版には、通常版に加えてCGパートの製作に関するメイキング集がついてくる。そして数量限定版は、豪華版の内容に「CREATORS BOOK」なるものがついてくる。


せっかくなので数量限定版をゲットして全ての内容を見たが、売り切れていなければ数量限定版を買っておくと良いと思う。

「CREATORS BOOK」は、端的に言って「公式の薄い本」だ。監督を始め、42名によるメッセージやイラストが載っている。ファンなら持っておいて損はしないだろう。

参考リンク:機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

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