スーパーコンピュータに関する世界ランキングで、世界でもっとも高速なコンピュータをランクづけする「TOP500」において、米国のFrontierが1位となり、富岳は2位となった。
独ハンブルクのコングレス・センター・ハンブルクおよびオンラインで開催中のHPCに関する国際会議「ISC 2022」において発表された。
同ランキングは、半年ごとに発表されており、富岳は、2020年6月、2020年11月、2021年6月、2022年11月の発表で、4期連続で首位を獲得していた。
首位となったFrontierは、スパコンの標準性能を評価するLINPACKにおいて、1,102PFLOPSを達成。富岳の442.01PFLOPSを大きく上回った。
また、人工知能の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマークである「HPL-AI」でも、今回のランキングでは、Frontierが6.86EFLOPS を記録して1位となり、4期連続で首位だった富岳は、2.004EFLOPSで2位となった。
その一方で、産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法の処理速度を競う「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」では、5期連続の世界1位を獲得。また、大規模グラフ解析に関する性能ランキングである「Graph500」のBFS部門においても、5期連続で1位を獲得した。
HPCGの2位は、米国のSummitであり、性能は2.93PFLOPS。富岳は約5.5倍となる16.00PFLOPSを達成している。また、Graph500でのスコアは、富岳が102,955.5GTEPSであり、2位の中国Sunway TaihuLightの23,755.7GTEPSに対して、約4倍以上の差をつけている。
理化学研究所と共同で富岳を開発した富士通では、「HPCGとGraph500の5期連続での1位獲得と、TOP500およびHPL-AIでの2位の実績は、いまなお、富岳が世界最高の総合的な性能を持っていることを示すものであり、新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety 5.0において、シミュレーションによる社会的課題の解決や、AIの開発、情報の流通や処理に関する技術開発を加速するためのHPCインフラとして、十分に機能することを実証するものである」とコメントしている。
富岳は、「TOP500」、「HPCG」、「HPL-AI」、「Graph500」で、4期連続4冠を達成していたが、その背景には、今回、TOP500とHPL-AIで首位となったFrontierの開発が予定よりも遅れていたことも影響しており、関係者の間では、2022年6月での5期連続4冠は難しいとの見方が出ていた。
ピーク性能が1EXAFLOPSを達成する米国初のエクサスケールのスーパーコンピュータとなったFrontierは、「HPE Cray EX235a」による新たなアーキテクチャを採用。第3世代AMD EPYC 64C 2GHzと、AMD Instinct MI250XアクセラレータおよびSlingshot-11インターコネクトを組み合わせている。873万112個のコアを使用して、1.102ExaFLOPSを達成した。米テネシー州のOak Ridge National Laboratory(ORNL)で統合テストが行なわれており、米エネルギー省によって運用される予定になっている
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