キーボードにこだわる人が選ぶPFUのHappy Hacking Keyboard。そのなかでも、すべてのキーのアルファベットや記号の刻印がない「無刻印」のモデルはマニア向けの製品として知られています。
おそらく多くのひとはある程度のブラインドタッチはできると思いますが、それでもまったく手元を見ずに打っているのではなく、たまに記号などを目で確認しながら打っているというケースが多いはずです。
無刻印モデルはそうした妥協を許さない使い方を自分に課する選択肢ですので、一種の苦行といってもいいのですが、その結果としてキーボードとの純粋な向き合いからしか得られない感覚が得られます。必要不可欠かというと、そんなことはもちろんありません。ツールにこだわっているひとがあえてやっていることです。
この無刻印のモデルはいままで英語配列モデルのみで提供されていたのですが、このたび日本語配列についても、すでに使っているキーボードの交換用のキートップとして販売が開始されました。
Happy Hacking Keyboard 日本語配列の無刻印キートップセットを販売開始
Happy Hacking Keyboardエバンジェリストとして、1セットを早めに利用させていただけましたので写真で紹介したいと思います。
白に白とは限らない、選べるキートップ
このタイミングで無刻印にチャレンジしてみようと思ったのは、最近これまでなんどか試しては完全に移行しきれていなかった親指シフト入力をHHKBの日本語配列キーボードで集中的に練習していたという理由もあります。
キー配置も変えていますし、新しい入力方法をちゃんと身につけるためにブラインドタッチを意識していますので無刻印が都合がよいわけです。
こちらが届いたキートップ。無刻印ですから場所が混乱したら大変なので念入りに梱包されています。
私が使っているのはHHKB Hybrid Type-S 日本語配列の「墨」カラーですが、今回は黒地に白が映えるだろうと考えて、あえて白のキートップを選びました。
キーは同梱されているこちらの器具で外していきます。キーボードを買ったときにも付いていたのですが、使ったことがない人はなにに使うのか不思議に思っていたかもしれないあの器具です(笑)。
慣れるまでは数字キーと、意外に使うカーソルキーはそのままにしておきます。無刻印は一種の見栄ですので、無理をしてまでやるものでもありませんので。
キーのつけ外しに約15分。ひとまずこの状態で利用開始です。
無刻印キーボードの使い心地は?
実際のところ、無刻印のキーボードを使う機能上の意味はありません。
キーの配置を変更して使っている人がキー表示に惑わされないようになるというメリットはあるものの、そもそもキーをよく見なければ打てないなら無刻印は向いていませんし、そのためにすべてのキーの刻印をなくすのはちょっとオーバーな話です。
パスワードや二段階認証の数字をいれるときにも間違えやすくなって困ります。普段のタイピングで流れるように単語を打っているときにはいいのですが、単体で H だけ、K だけといったキーを押すときに間違えてしまうわけです。
そういった問題点があることは踏まえた上で、無刻印にはたしかに心に訴えかける開放感があります。いちいちキーをみて確認することができませんので、逆に自信をもってブラインドタッチをせざるをえない、排水の陣の面白さがあるのです。
ブラインドタッチができていたつもりでも、実際にやってみると意外に戸惑います。無意識のうちにチラチラとキーをみていた瞬間があって、そこで手の動きが詰まってしまうのです。
しかしそれも最初のうちだけで、すぐにキーを一切見ていない状態に慣れてきます。
数日たったあたりで、数字もふくめて全部取り替えてみました。スッキリしていますが、本人はこちらの方を見ていないのですから純然たる見栄の世界です(笑)
とはいえ、慣れてみるともう無刻印であることも意識しなくなりますので、思考に対してツールが透明な状態になってゆくのが心地よくなります。
オリジナルキーボードを作るという手も
無刻印モデルのもう一つの使い方は、表面に自由に刻印をして自分だけのキーボードを作ることです。
市販のシールをつかって必要なキーにだけ文字をいれてもいいでしょうし、気にならないなら自分でペンで書き込むのもありです。
また、有料で刻印をしてくれるところもあります。PFUのリリースでも紹介されていた株式会社遊舎工房ではレーザー刻印によるオリジナルキートップの制作を受注していますので、自分でデザインした文字で刻印をしてみるのもいいでしょう。
ただし、こちらはキートップセットとレーザー刻印サービスがセットになっていて、すでに購入したキートップを持ち込んで刻印するのは別サービスとなるので注意してください。
発売記念キャンペーンでセット購入できる
そもそもHHKBの日本語配列を持っていないという人向けには、今回 HHKB Professional HYBRID Type-S 日本語配列と無刻印キートップのセットが、通常44440円のところ40000円のセット価格で、白・墨それぞれ200セット限定で販売されているとのことです。キャンペーンページはこちらからたどれます。
私もようやく親指シフト入力がローマ字入力時のスピードの70%ほどにまで慣れてきましたが、それもここしばらく無刻印をつかって自分を追い込んで練習していたのが大きいとおもいます。
誰にでもおすすめできるものではないものの、ツールとの向き合いを楽しめる人ならば、挑戦してみると新しい世界が広がるはずです。