大都市、市街区域、近郊住宅地における薪ストーブや暖炉の排煙問題②

アゴラ 言論プラットフォーム

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薪ストーブ問題を議員や行政機関、マスコミが避ける現状

この問題を指摘するにあたり大前提として書いておく。

薪ストーブで苦情が来たなら、まずこの機器を装着してほしい。一軒からの苦情は数十軒の潜在被害者が存在する。

薪ストーブ用すす取り装置「ススとり君home」 – 株式会社クリエ (c-clie.co.jp)

薪ストーブは周辺住民に健康被害や生活妨害となる大量の煤煙悪臭を長期間排出し、使用者にも有害であることは既成の事実である。

煤煙悪臭が問題であり、屋外に煤煙悪臭を放出しない、或いは排気浄化装置の付加により排気が清浄であれば、煤煙による生活上の不便や健康被害は起きずに済み、この一連の投稿は全く不要のものであった。

何を使用して暖を取っても自由なだが、権利には義務も付帯する。

煤煙悪臭を発する道具を製造販売し、それを使用する者にも権利は有るだろう。しかし、使用した結果の排煙にまで全ての責任を負うという義務を放棄しているのは、如何なものだろうか。権利だけ主張し義務を果たさない、それを権利の濫用というが、果たして自覚は有るのだろうか。

前稿①では、薪ストーブや暖炉(今後は纏めて薪ストーブと記す)による大気汚染の概要を記したが、本稿以降では、この公害発生に至るまでの諸事情を前稿で記した各項目について順に述べてみる。

  1. 被害者の苦境。
  2. 薪ストーブ暖炉の使用者の反論。
  3. 薪ストーブ暖炉の施工、販社の宣伝。
  4. 行政、議員、マスコミの反応。
  5. 欧米の動向。

としたが、根源的問題を先に指摘する必要を感じたので、4. 行政、議員、マスコミの反応について本稿で述べる。

薪ストーブへの苦情、規制対処要望を行政機関や議員に願っても、全国の被害者の多くが困惑し泣き寝入りしている。

それは、議員、行政機関とも一律に、このような回答をするが故である。

「薪ストーブは規制する法や条例は無く、民事で解決せよ」
「薪ストーブの規制はできない。しない。するつもりは無い。」
「薪ストーブを民家に設置した場合は悪臭防止法の適用範囲外で規制は無理。」
「薪ストーブは移動式季節性暖房で火鉢や調理器具と同じで規制できない。」
「薪ストーブは脱炭素に有効なので規制はできない。」
「薪ストーブへの木質バイオマス補助金制度が有る関係で規制はできない。」
「薪ストーブで木材を燃やしても無害であり、問題は発生しないから規制しない。」

という、被害者の周辺住民に寄り添う姿勢も無い、極めて絶望的な内容であった。

筆者はこれまで数年にわたり、各議員や政党、自治体や県、国の諸行政機関に対して、住宅地での煤煙悪臭を発する薪ストーブの設置や排煙臭気に規制を求めてきた。

その結果は、上記回答例の通り、被害者諸氏が経験したことと同様であった。

<地元自治体の複数議員>
要望を伝えるも無視。具体的行動も一切なし。諾否程度のアンサーバックも無い。「私や親戚も薪ストーブを使っているが何か?」という態度の議員までいた。

<県議会議員>
一切無視。事務所まで何度も足を運んでも、一切知らん顔を頑なに貫徹する。現状を調査するという行為は見られない。

執念深いまでの一貫無視の姿勢に疑念を持つ。それは疑念でなく確信に変わる。議員にツイッター上で要望を書いたらブロックされた件があり、薪ストーブの迷惑問題の指摘が彼にとって不都合であるようだ。

国会議員や政党に至っては同様に全て無視し取り合おうとすらしない。

各議員の、薪ストーブ規制への頑なまでの無視には深い事情が内包されている。これは根深いものが有るので、別稿で記したい。

<行政機関の基本姿勢>
たらいまわし。

自治体は「県に言ってくれ、条例は県の仕事」、県は「地元自治体に言えば対応するように指導した」と回答。保健所はコロナ以前に大気汚染調査を打診も「できません」と回答。

地元自治体には再三の要望を何度も出し、他の複数の薪ストーブ被害者の苦情も多数有ったようで、ついに自治体としては「問題あり」という視点に変わりつつある。

地元自治体の名誉のために書いておくが、薪ストーブや野焼きに関する注意喚起のページを公式Webサイトに掲示し啓発指導をしてゆくという、僅かだが前向きに変わったことは大きく評価したい。

しかし、県に至っては現状を調査することも無く「現状では問題を発生しているとは言えない」とまで言い切るのはなぜか。

林業や山林保全の為に伐採した樹木を、薪として使用させる目的で配布する事業を多くの県が各地で主導しているのだから、当然に薪ストーブを規制する思考回路が存在するはずもないことは明白である。

国の諸機関に至っては、そもそも何の回答も来るわけがない。

農林水産省の庁舎には、驚愕すべきものすごい長さの薪ストーブの煙突がある。

この辺りの事情も別稿で記したい。

<マスコミの対応>
数社に対し、薪ストーブの周辺住民への迷惑や健康被害を起こしている実態について、報道として取り上げて欲しい要望、投稿を何度も行ってきた。

しかしこれも全滅であった。他の被害者の例では、取材を受けた道路族の迷惑部分だけ切り取って報道し、薪ストーブ煙害部分は見事なまでに完全にカットし放映されたという。

これは(良し悪しは別として)国策で木質バイオマスを推進していることが第一の理由。一部の住宅メーカー(薪ストーブを併設できる構造、施工も含め)等がスポンサーになっているケースがあり、当然に薪ストーブ排煙問題を取り上げるはずもないことは、簡単に理解できる。

著名人や移住系一般人等が薪ストーブを使用している場面を紹介する番組が増えている。この関連もある。

カーボンニュートラルという面だけを宣伝するが、そこから発する煤煙悪臭という負の問題には一切触れることも皆無である。

また、マスコミを代表に、多くの企業や組織が、SDGsと強引に絡め、まさにイメージ先行で脱炭素と関連付けて薪ストーブや木質バイオマスを嬉々として勧める実態がある。

そこにこそ、木質バイオマスによる煤煙悪臭被害拡大の主因が存在する。


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。

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