なぜ人は病気の時にも働こうとするのか?

GIGAZINE
2022年05月08日 23時00分
メモ



病気になって体調が悪い時は仕事のパフォーマンスも上がらず、翌日以降のことを考えれば「おとなしく休んでいた方がいい」とわかっていながらも、病気を押して仕事をしてしまう人がいます。「プレゼンティズム(疾病就業)」と呼ばれるこの現象についての研究から、人は「毎日の仕事のノルマ」が達成できていない時に病気でも働いてしまうとの結果が示されました。

Should I stay or should I go? The role of daily presenteeism as an adaptive response to perform at work despite somatic complaints for employee effectiveness. – PsycNET
https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Focp0000322

New research sheds fresh light on the ‘800-pound gorilla’ of presenteeism – Trinity News and Events
https://www.tcd.ie/news_events/articles/research-from-trinity-business-school-sheds-new-light-on-the-800-pound-gorilla-of-presenteeism/

There’s at Least One Major Reason Why People Show Up to Work Sick, Study Finds
https://www.sciencealert.com/study-highlights-a-major-reason-why-people-continue-to-work-when-they-re-ill

病気を押して仕事をするプレゼンティズムは、仕事や上司への忠誠心を発揮する献身的な行動に見えるかもしれませんが、職場における病気の流行や生産性の低下、燃え尽き症候群といった問題にもつながります。これは職場に悪影響を及ぼして追加のコストを発生させるため、産業保健分野の心理学者らはプレゼンティズムを問題視しているとのこと。

そこで、アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンの心理学者であるWladislaw Rivkin氏が率いる研究チームは、リモートで働く人々を対象に「なぜ労働者はプレゼンティズムに従事してしまうのか?」を調査しました。

Rivkin氏らはIT・教育・財務などさまざまな職業の被験者126人を募集し、12営業日にわたって毎日の生産性・健康状態・仕事の目標・労働時間といったデータを収集しました。この調査は2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生し、すべての参加者がリモートワークを行っていた時に実施されたとのこと。


データを分析した結果、労働者がプレゼンティズムに従事するのは「毎日の仕事のノルマが達成できていない時」のみだったことが判明しました。また、体調が悪いのに働いた従業員は精神的なエネルギーを消耗し、翌日のパフォーマンスにも悪影響が及ぶことがわかりました。

病気を押して働くことは、体が発する危険信号を無視するほどの精神力を要するため、精神的なエネルギーがより多く消耗されてしまうとのこと。Rivkin氏は、「仕事の目標を達成するため、体調が悪くても働くことはいいことだと思われるかもしれません。しかし私たちの調査では、プレゼンティズムは従業員の精神的エネルギーを消耗し、それは仕事の後でも完全に回復することはできないため、翌日のリモートワーカーのパフォーマンスにも連鎖的に影響することがわかっています」と述べています。

研究チームは今回の調査結果から、従業員のプレゼンティズムを思いとどまらせるために管理職が積極的な策を講じるべきだと訴えています。「管理職は、チームメンバーが体調不良を感じたら日々の仕事の目標を減らし、健康回復に専念することが許されると安心させることで、プレゼンティズムを公然と阻止する必要があります」と、研究チームは主張しました。


なお、科学系メディアのScience Alertは「仕事のノルマを達成できていないこと」だけがプレゼンティズムの理由ではなく、経済的な理由でプレゼンティズムに従事することもあると指摘しました。

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