生産性を追い求める人が陥りがちな「有毒な生産性のワナ」とは?

GIGAZINE
2021年12月26日 09時00分
メモ



多くの人々は「生産性の向上」こそが素晴らしい人生のカギだと考えており、世の中は「生産性を向上させるためのヒント」や「生産性を低下させるので避けるべきことのリスト」であふれています。ところが、リーダーシップや職場環境の専門家であるレイチェル・クック氏は、生産性を向上させようとするあまり「有毒な生産性のワナ」にかかってしまう危険があると警告しています。

How to Combat Toxic Productivity
https://www.quickanddirtytips.com/business-career/careers/toxic-productivity

クック氏は長年にわたって自らの生産性の高さを誇りに思っており、実際に講師として生産性の向上に関するレクチャーも行っています。クック氏が主張する生産性は「クライアントに対する製品のリリース」「新規顧客を引きつけるブログ記事の公開」「目標達成に向けた新たなスキルの習得」といった、利益やポジティブな結果をもたらす行為です。しかし、「生産性が高い人生=無駄のない人生」と考えてしまう人の中には、「常に忙しいことが最も生産性が高い状態だ」と考えてしまい、有毒な生産性にとらわれてしまうケースがあるとのこと。

本来の生産性は「目標を達成するために向上させるべきもの」ですが、有毒な生産性にとらわれると「常に忙しくなくてはならない」という意識のあまり、すでに目標を達成しているにもかかわらず立ち止まって休憩できなくなってしまいます。すでにクライアントを満足させ、有益なブログも投稿して、新たなスキルを身につけたのに休むことができないという状態は、やがてオーバーワークや燃え尽き症候群などの問題につながります。


自らも有毒な生産性に陥った経験があるというクック氏は、有毒な生産性にとらわれている人が感じるいくつかの兆候を挙げています。

・エネルギーが低下したと感じる
忙しさを追い求める状態に陥ると「仕事を切り上げる」ことが難しくなり、十分に休めなくなってしまうため、燃え尽きたり、疲れ果てたりしてしまうとクック氏は指摘しています。

・創造性が低下している
常に何かをやっていて忙しい状態では、何か新しいことを学ぶ楽しみに想像を巡らせたり、追求したりする機会を逃してしまうとのこと。

・月曜日までを指折り数える
休日には「働くための正当な理由」が薄れてしまうため、休んでいる状態に「今の自分は非生産的ではないか」と不安を感じ、平日を待ち望むようになってしまう場合があるそうです。

・常に自分が遅れていると感じる
クック氏は有毒な生産性にとらわれていた時、クライアントの期待にきちんと応えていたにもかかわらず「まだ何かやるべきことがあるのではないか」と感じ、自分が成し遂げた仕事を祝う気持ちになれなかったと述べています。

以上の点に当てはまる場合は有毒な生産性にとらわれている可能性があるため、それを克服する必要があるとクック氏は主張しています。


有毒な生産性を克服する簡単な方法はなく、少しずつ自分の状態を自覚し、改善していくしかないとクック氏は指摘。そこで、有毒な生産性を改善するための4つのヒントを挙げています。

1:毎日「3つのコアタスク」を設定する
クック氏は1日を「今日やるべき最も優先順位が高い3つのタスク」を設定することから始めるとのこと。この3つ以外にもやるべきタスクはあるかもしれませんが、1日の終わりにこの3つのタスクさえ完了できていれば、その日は「勝利の日」と呼んでいるとクック氏は述べています。

3つのタスクは必ずしも「成果物をクライアントに送る」「営業会議を成功させる」といった仕事に関係するものとは限らず、「娘と散歩する」「父に電話する」「読み進めている本の第3章を読み切る」といったものも含みます。3つのタスクを設定する際は難易度や労力ではなく、明確な目的があるタスクかどうかを基準に考えるとのこと。

2:タスクの「理由」を考える
ToDoリストに何かを追加する際には、「なぜそのタスクを行うべきなのか?」について考え、理由が明確ではないタスクは追加しないことをクック氏は推奨しています。ビジネスを始めた当初のクック氏は、SNSの投稿や人脈の形成、オンラインコースの受講といったToDoリストの項目に圧倒されていました。しかし、当時のクック氏は「なぜSNSに投稿するべきなのか?」といった問いに対して「他のビジネスオーナーがそうしていたから」程度の回答しか持っておらず、タスクの目的を見失っていたそうです。

クック氏は「私は毎日何かを学ぶべきだと感じました……しかしその代償として、私は学んだことを処理したり、考察したり、実行に移したりするために立ち止まることができませんでした」と述べています。こうした反省から、クック氏は自分が行うタスクの価値を再評価して、日々のタスクに理由を求めることにしたとのことです。


3:毎日3回だけ「1分間の深呼吸」を行う
「たった1分の深呼吸を1日3回やるくらい、誰だってできる」と考えるかもしれませんが、有毒な生産性にとらわれた人にとって、少しでも立ち止まることはかなりの意思力を必要とするそうです。深呼吸は瞑想(めいそう)などにふける必要はなく、ただ作業の手を止めて座り、静かにしているだけでいいとクック氏は主張しています。

クック氏は、「この経験は山を動かすようなものではありませんが、小さなリセットです。これは私が意味のある何かを行っているか、または意図的に何かを行っていることを確認するために、自分自身に意識を向けるように仕向けます。60秒間が終わった時、単純にこれまでやっていた作業に戻ることもありますが、時には小休止の後により意図的なタスクに取りかかることに役立ちます」と述べました。

4:しっかり仕事モードの自分を「シャットダウン」する
クック氏は「生産的な1日」をはっきりと終わらせ、自分自身をシャットダウンすることが重要だと指摘。時にはクライアントとの兼ね合いで22時まで仕事をすることがあっても、それは自分が意図したものであり、仕事が軽い時には正午であっても仕事を切り上げて友人とのランチに出かけるとのこと。「あなたの1日を終わらせる適切な時間というものはありません。それは単純に、1日を終わらせるという行為と、その決定を尊重する規律が重要なのです」とクック氏は述べました。


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