個人を識別する生体認証技術の研究は数多く行われており、近年では多くのスマートフォンが指紋認証や顔認証といった生体認証システムに対応しています。そんな中、テンプル大学の研究チームが「歯をこする音」で個人を識別する技術を発表しました。
Ear Wearable (Earable) User Authentication via Acoustic Toothprint
https://doi.org/10.48550/arXiv.2204.07199
TeethPass: Dental Occlusion-based User Authentication via In-ear Acoustic Sensing
https://cis.temple.edu/~yu/research/TeethPass-Info22.pdf
Biometric Authentication by Grinding Your Teeth – Unite.AI
https://www.unite.ai/biometric-authentication-by-grinding-your-teeth/
「歯列弓の形状」「歯同士の隙間」「エナメル質の厚さ」「歯の大きさ」などは人によって異なります。研究チームは人によって異なる歯の形状に着目し、「歯と歯をこすり合わせる音」や「歯と歯を衝突させる音」の違いから個人を識別する技術の開発に乗り出しました。
研究チームは、「歯と歯をこすり合わせる音」や「歯と歯を衝突させる音」を利用した生体認証技術を開発するべく、市販のイヤホンにマイクを取り付け、口から顔の内部を通って耳まで届く音を検出するシステムを構築しました。
研究チームによると、構築したシステムでは「全ての歯をこすり合わせる」「一部の歯ををこすり合わせる」「全ての歯を衝突させる」「一部の歯を衝突させる」といった動作を行った際に生じる音を用いて個人を識別できるとのこと。実際に22人の被験者に試作したイヤホンを装着させてデモを行った結果、1回音を鳴らすだけで93%の確率で個人を認識でき、4回音を鳴らせば98.8%の確率で個人認識に成功することが確認されました。
市販されているノイズキャンセリングイヤホンは、マイクを用いて周囲のノイズを検出し、ノイズを打ち消す音を再生することで騒音の低減を実現しています。また、ノイズキャンセリングイヤホンの中には「AirPods Pro」のように高性能な処理チップを内蔵しているものもあります。研究チームは、AirPods Proのようにマイクや処理チップを内蔵したイヤホンを用いることで、専用の機械を必要とせず歯の音を用いた生体認証を実現できると主張しています。
なお、歯の音がマイクに届くまでには顎や耳道を通過するため、「写真をもとに歯の模型を作成し、認証を突破する」という攻撃は困難とのことです。
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