宇宙から降り注ぐ放射線を「ブラウザのエラー」で検出するアイデアについてMozillaが解説

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メモリやフリップフロップなどの回路に宇宙から飛来する放射線などの高エネルギー粒子がぶつかると、しばしばビットが反転する「シングル・イベント・アップセット(SEU)」という現象が生じることがあります。このSEUのせいで回路自体には何の問題もないのにソフトウェアにエラーが生じることがままあるわけですが、これを逆手にとった「エラーから宇宙放射線を検出する試み」が道半ばという現状について、Firefoxの開発元・Mozillaが解説しています。

This Week in Glean: What Flips Your Bit? – [email protected]
https://blog.mozilla.org/data/2022/04/13/this-week-in-glean-what-flips-your-bit/

Mozillaの製品分析・遠隔測定ソリューションチームのGleanに所属するトラヴィス・ロング氏によると、FirefoxなどのMozillaプロジェクトから収集されたデータを分析する際、「1ビットだけおかしくなっているデータ」がままあり、こうしたデータをクライアントからMozilla側までのインフラレベルで調査したとしても妥当な原因が見つからないため、「まあ、多分宇宙放射線が悪さをしたんだろうな」と片付けられてしまうことがよくあるそうです。

異常なデータを宇宙放射線のせいにするのは、言い換えれば「原因がわからなかったから、とりあえず宇宙放射線のせいにしておこう」という言い訳です。しかし、「大規模な磁気嵐が2022年3月31日に発生する」と報じられた直後の4月1日に「発生確率はごくわずかですが、aがAになったり、.が*になったり、tが|になったり、nがoになったりする現象が発生しているようです」という報告が寄せられたという奇妙な一致から、ロング氏は「単なる言い訳ではなく、実際に起こっている話なのでは?」と考え始めたとのこと。


というわけで、ロング氏は「特定のエラーについて宇宙放射線が原因だと断定できるのか?」に関して研究を開始。先行研究を調べたところ、世界最古の一般向け科学誌として知られるScientific Americanが2008年に掲載した記事の中に「1990年代にIBMが行った研究によると、1カ月につき256MBのRAMあたり1回のSEUが発生する」という一文があることがわかりました。その後の調査によると、IBMの研究者がSEUに関する論文を複数発表しているものの、調べた範囲では「1カ月につき256MBのRAMあたり1回のSEUが発生する」という一文の証拠となるような内容は見当たらなかったそうですが、ロング氏はこの一文を出発点にすることにしました。

ロング氏によると、Mozillaが受信しているデータは1カ月で2800TBに達するそうで、これを前述の「1カ月につき256MBのRAMあたり1回のSEUが発生する」という情報に照らし合わせると、1カ月につき1146万8800回のSEUが発生しているという計算です。もちろんSEUの中でも「数値の羅列が続く中で、数字が1つだけ置き換わる」というパターンについてはほぼ検出不可能ですが、1000万回超という数値を見ると「もっと検出できるのでは?」と思えたとのこと。

ここで前述した「aがAになったり~」という報告を改めて見ると、SEUが生じているのは宇宙放射線が降り注ぐと報じられた特定地域に限られるように思えたそうです。しかし、調査途中で地域ごとの宇宙放射線量に関するデータを集計するのは困難ということがわかった上に締め切りも近づいていたため、ロング氏は「この話を面白いと思って、独自に調査を行ってくれた人は、その結果をMatrixのGleanチャンネルで@travis宛で送って下さい」とコメントしています。

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