汝、ティラミスにもお酢を入れてよし
まずはチーズケーキのラインナップをみてほしい。
こんなふうにお酢メーカーさんらは、お酢を使ったデザートのレシピをこぞって紹介している。酢の物や煮物のレシピと同じようにさらっとさりげなく。種類は、スイートポテトやスコーン、フルーツサンド、チョコレート菓子などなど多岐にわたっている。
なかでも私が特に気になったのがティラミスだ。同じイタリア生まれのバルサミコ酢を使うでもなく、黒酢を使おうぜ!という強気なレシピがキユーピー醸造株式会社のサイトにのっていたのだ。
入れた途端、我こそは黒酢である!といわんばかり、とがった香りが漂ってきた。 なかなか強烈だ。いいにおいかと聞かれたら悩む。ふだんお菓子作りの途中でこの匂いがしてきたら、たちまちに不安になる香りである。
思いのほか、お酢の味への影響はさりげないものだった。遠くで聞こえる汽笛のように、静かに心地よく、黒酢の声が響いてくるのだ。
さっぱりとした味わいで、ヨーグルトっぽくもある。このまえサイゼリアで食べたティラミスの味とは全然違うんだけど、これはこれで、しっかり満足感のある味わいだ。甘さひかえめなのにもぐっとくる。
そのほかにもこんなのを作ってみたよ報告
せっかくなので、そのほかにも気になって作ってみて、衝撃をうけたメニューを2品ほど紹介したい。
まずは海苔の佃煮である。千鳥酢(成城石井とかで売ってる良いお酢)を製造している老舗・村山造酢の公式HPで見つけた。
海苔の佃煮って自作できるのか。しかもお酢を入れていいのか!
……といそいそと作ってみたところ、ものすごーく簡単だった。
味は、ふだん食べ慣れている海苔の佃煮と比べると、ちょっとすっぱいなぁという感じ。でも、それがなんだかいい。朝ごはんにこれを食べたら、しゃきっと目が覚めそうな気がする。
「グラニテとはなんぞや……?」と思いつつ作ってみた「甘酒のグラニテ」も、労力に見合わないうまさだった。
ちなみにグラニテとは、主に果汁とシロップを混ぜてシャリシャリに凍らせた、フランス発祥の氷のお菓子らしい。
それでも湧き上がる疑念
……とここまで読んでくださったみなさん、今更そんなこと言うなよって思われるかもしれないのですが、あえて伺わせていただきたいことがございます。
うすうす思っていないでしょうか。
これらのメニューって実はみんな、お酢を入れなかったとしても、おいしいんじゃないだろうか?と。
……ごめんなさい。正直にいうと私は少し思っています。
でも同時に、もしそうだったとしても、それはそれでいいんじゃないかとも思っているんです。
だって、お酢を入れることで、入れてない時とは別ベクトルのおいしさに出会えてるはずだから。お酢メーカーのお酢レシピからは、その一歩を踏み出すための勇気をたくさんもらっている気がします。