『いかにもマンガ』をリアルで再現(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

「それってマンガだろ」という表現がある。ペンキ塗りたてのベンチに座ってアヒャーとなったりするあれだ。

そんなうっかり、現実にはないだろう。マンガの中だけの話だろう。

しかしできれば1回やってみたい。できることならパンを口にくわえた女子高生と曲がり角の出会い頭でぶつかってみたい。くしゃみをしたら天井からたらいが落ちてきてほしい。

話の途中からドリフのコントも混ざりはじめているが、「それってないだろ」というシーンをいくつか再現してみました。

2005年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

●検証1:坂道でオレンジころころ

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まずはまぬけな人の定番、「坂道でオレンジころころ」だ。まだなにも起きていないのに、写真から感じられるのは早くも「それってないだろう」という感じ。

オレンジが顔をのぞかせている紙袋を抱えて歩くということがまずない。さらに転んで落としてしまい、そこが坂道だなんて。

そんな都合のいい話があるだろうか。

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ほらほら、ちゃんと前見てよ
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あっ、あぶない!
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あーあー
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ころころー
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待ってー!俺のオレンジー

実際のオレンジは完全な球体ではないため、そんなにころころ転がるだろうかと不安だったが、そんな心配をよそにどんどん転がっていくオレンジたち。

マンガだったら親切な人が拾ってくれたりすることもあるだろうが、今回の検証ではそんな人は現れない。

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ころころころー
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ころころころころー
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待ってー

あっという間に小さくなっていくオレンジたち。あわてて追いかける私だが、走りながらもなぜか笑顔だった。わざとやっててもおもしろい。予想以上の楽しさだ。

●検証2:バナナの皮ですべって転ぶ

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バナナの皮ですべって転ぶというのもかなり古典的な定番だが、これもやっぱりないだろう。

まず、道端にバナナの皮が落ちてるという状況がない。仕方がないので今回は自分でバナナ食べてるという設定にしてみたが、やはり写真を見るにつけても「ないよなあ」という感じは高まるばかり。

我ながらおかしい。こんな人いない。

ここまででもうマンガだ。あくまで偶然にバナナの皮ですべって転ぶという可能性は相当低そうだが、まずはおいしくバナナを食べた。

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皮をポイ!行儀悪いなあ
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あ、気づいてないよ!あぶないって
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うわっ!
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すてーん

シチュエーションとしてはかなりわざとらしいものにならざるを得なかったこの試み。ただし、足を乗せてみるとわかるが、バナナの皮というのは実際にかなりすべる。

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もしも人通りの多いところでバナナの皮が落ちていたりしたら、かなり危険だと思う。転んでケガをしかねない。

今回やってみたことで、いたずら半分でも絶対にバナナの皮を道に捨てたりなんかしないという思いが新たに湧いてきた。意外な角度からの収穫だ。

●検証3:箱を運んでおっとっと

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これはまだあり得るだろうか。なんとなくそれっぽいことをしている人を見て、あぶないなと思ったことはあるかもしれない。

ただ、それをドカーンとぶちまけるところまではまだ見たことがない気がする。出前配達中のそば屋が自転車で突っ込んできてくれたりしたらいいのだが、さすがにそこまでは望めないだろう。

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ほらほら、あぶないって!
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あっ!ついにくずれた!
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あーあー
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あー

おお、これもやってみると楽しい。多くの人は、いつも落とさないようにと気をつけながら箱を運んでいると思う。私も例にもれない1人だが、今回の再現ではそういう抑圧から開放されたのだ。

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演技でがっかりしてみているが、この楽しさはなんだろう。

一応「あーあ」と思いながらひとしきりがっくり。そのあとぶつぶつ言いながら箱を集めるが、そこまで含めてみても楽しい。

●検証4:小鳥が寄ってくる心優しき人

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わざわざエサを与えたりするでもなく、森の中を歩くだけで小鳥たちが寄ってくる人がいる。野生の命たちにもその人の持つ優しい心が伝わるのだろうか。

そう言い切ってしまったが、そんな人いるだろうか。マンガの中だとしてもかなりあやしい。

いや、そんな風に腰が引けていてはダメだ。心がけ次第で子リスだってやってくるかもしれない。実際、撮影場所に選んだ茂みには小鳥たちの声も聞こえてくる。ロケーションとしては問題ない、あとは自分の力にかかるわけだ。

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鳥よ
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鳥たちよ!

呼びかけてみても寄ってこない鳥たち。逆に、変なやつが来たのを察して逃げたのか、さっきまでさえずっていた鳥たちの声もすっかり聞こえなくなってしまった。

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茂みを前に、ひとりぼっちになってしまった自分。ここまで順調にマンガっぽさを再現してきたわけだが、こうした内面にかかってくるものについてはごまかしが効かない。

●検証5:両手に持ったまんじゅうを交互に食べる

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くいしん坊キャラがマンガで繰り出すそれっぽい行動にはいくつか例が挙がると思うが、今回はまんじゅうで攻めてみたい。こうして皿にぎゅうぎゅうとまんじゅうが乗せられているだけで、早くもかなりのマンガ感がにじみ出ている。

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「うわーい、まんじゅうだ!」

バカっぽい笑顔もなかなか様になってしまったと自分でも思う。本当の自分は、まんじゅうを前にここまでできる大人ではない。いや、なにを今さら恥じらいを見せているのか。

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「えへへ、まずは白いほうから…」
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「んぐ!うーん、うまい!」
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「どれどれ、今度は黒だ。ぱく!」
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満足そうなバカ面

メンタルな部分できつい。これまでオレンジを転がしたり箱を落っことしたりと楽しくやってきた私だが、これはきつかった。こうして書いていても痛々しい。

意外なところでマンガになりきれない自分を発見。まあ、マンガになりきる必要性は今後ないだろうから、それでいいと思う。

●検証6:よっぱらいが持ってるアレ

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「ういー、今帰ったぞー」という感じで家に帰ってくるよっぱらい。セリフをつけるとすでにかなりのマンガ感だが、これは現実にも多々ある光景ではないだろうか。

 このケースでマンガならではという部分は、ディティールにあるのだと思う。

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「あーあー、そんなところで寝ちゃって。仕方ないなあ…ん?」
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「あ、あれだ!あれ持ってる!どこで買ったんだろ」

今回は手近にあった箱と包装紙で代用したのだが、本来やっぱり中は寿司なのだろうか。ビニール袋全盛の現在、こうしてひもで結わいてくれる店があるのかどうか知りたい

●検証7:鼻ちょうちんを出してみる

 マンガでは寝てる人の記号としても用いられているかのような現象・鼻ちょうちん。

 確かにわかりやすいが、現実世界で生の鼻ちょうちんというのは見たことがないような気がする。ましてやパチンと弾けた音で目が覚めるなんて、本当にあり得るのだろうか。

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「あーあ、こんなところでうたた寝しちゃって。風邪引くから起きなよ、ほら、起きろってば。こら、起きろ!……ん?」
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「おお、鼻ちょうちん出てるよ!」

鼻ちょうちんを出して寝てる大人。今回はしゃぼん玉液を使い、強引に寝てる人の記号を現実化してみたわけだが、実はこの撮影には結構時間がかかった。しゃぼん液を鼻に塗って膜を作り膨らませるのだが、これが意外と難しい。

やっとのことでうまく膨らんだとしても、つい息を吐きすぎてすぐに割れてしまうのだ。思った以上にはかない鼻ちょうちん。

やってみてわかった鼻ちょうちんのあり得なさ。相当レアな現象だと思われるので、生をじかに見ることは難しそうだ。

●検証8:部屋のすみっこでいじける

マンガの中では、怒られたことでいじけて屋根の上でハーモニカ吹いたりするやつがいるだろう。

いるよな。いますよね。

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割と手軽にできるマンガっぽさ。屋根に上るのは危ないし、ハーモニカも持ってない。そういうわけで今回は部屋のすみっこでリコーダーを吹いてみた。

十分にじみ出るマンガっぽさ。ウジウジしてんなあ。

僕の傷ついた心を癒してくれるのはリコーダーの美しい音色だけ。他にもいろいろな形でアレンジもできるだろうし、割と実生活に取り入れやすいマンガシーンだと思う。

●検証9:落ちてきたバケツが頭にスポーン

落ちてきたバケツが頭にスポーン。突然の出来事での驚き、そして前が見えなくてあわあわ。あり得ないくらいマンガ的だ。

まずバケツが落ちてくるというシチュエーションだけで普通はないのに、さらにそれがうまく頭にかぶさるなんて。いかにもマンガというシーンを「そんなにうまくいくかよ」と鼻で笑いつつも、ほんとにあったら楽しいだろうなと思いはしないだろうか。

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再現しようとしているシーンからしてこれだ。どう考えても普通では起き得ない。

撮影場所をどうしようかと迷ったのだが、バケツを落とすのにちょうどよい窓があるということで妻の実家を借りた。バケツを構えているのは妻の母、つまりは義母だ。

義母が義理の息子に向かってバケツを落とす。やってることは現実化なのに、なぜだか現実からどんどん遠くなっていく気がする。

位置をうまく合わせて、せーのの合図で落としてもらう。

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さあ、どうか!
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ゴーン!
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痛えー!
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ああ痛え…

かぶさることなく頭にヒット。結構な衝撃。

窓から義母が「だいじょうぶー?」と聞いてくるが、その声には半分笑いが入り混じってるようにも聞こえる。無理もないと思う。理解してもらえるか不安な気持ちで頼んだのだが、楽しくやってくれているならそれでうれしい。

はじめは金属製のバケツでやろうとしていたのを止められたのだが、本当によかったと思う。

このあとも何度かやったのだが、ゴーン、ゴーンと来るばかりでなかなかうまくいかない。

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それでも気を取り直して再挑戦 せーの…
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おお!今度は来たぞー!
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スポーン!!
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やった!

6、7回やっただろうか、ついに頭にかぶさった。驚きゆえだろうか、そこに痛みはなく、急に緑で覆われた視界が現れたといった感じだ。おお、確かに前が見えないぞ、求めていたのはこれだ。

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「あわわわ」

上の窓から義母の歓声が聞こえる。目には見えなくとも、手を叩いて喜んでいるのがわかる。

 「やったわね!」
 「ありがとうございます!」

通常ではあり得ない形を通して深まっていく義母との絆。

実際にやってみる前、空中でバケツが回転してうまくいかないのではないかとか、ケガするからやめろといった意見を周囲から聞かされ、あきらめようと思ったりもした。だが、こうしてみると、素直にやってみてよかったと思える。

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「どうなってるのー」
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「誰かー、たすけてー」

-おわり-

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