居酒屋の定番おつまみの一つに揚げパスタがある。その名の通りパスタを油で揚げ、さっと塩や胡椒などで味付けをしたものだ。居酒屋ではいわゆるスパゲッティが揚げられていることが多いが、他のパスタでもいいはずだ。そう気づいたが最後、私は揚げていた。
揚げパスタは揚げスパゲッティ
揚げパスタ。そのしょっぱさや軽さから無限に食べられてしまうことでおなじみの食べ物だが、例にもれず私も大好きである。
お腹はいっぱいだがなんとなく口さびしいといった時に活躍するだけでなく、あまり乗り気でない飲み会でなんとなく「参加している感」を出すのにもぴったりなのだ。揚げパスタに救われた夜は数えきれないほどと言っていいだろう。
しかし、なぜ揚げパスタというと揃いも揃ってみな細長い形状の麺、いわゆるスパゲッティが出てくるのだろう。
最近はその辺の食料品店でも様々な種類のパスタが売られるようになってきている。あいつらでも美味しい揚げパスタを揚げられるのではないだろうか。
それきた、揚げよう。
おうちで揚げパスタ
さっそくこの世の全ての種類のパスタを揚げていきたいところだが、まずは普通のスパゲッティを揚げてみたい。そもそもご家庭であの揚げパスタが再現できるのかどうかを確かめなければ、他の検証にも移れないのだ。
普段ほとんど料理しないのであまり作り方を想像することもなかったのだが、調べてみたところこのようにただ油で揚げるだけで完成らしい。簡単すぎる。うそだと思う。
急速にあの揚げパスタの見た目になっていく。ひょっとして本当なのかな。
見た目はたしかに揚げパスタになった。さっそく食べてみよう。
うまい!味も香ばしさの中にしょっぱさがあり、完全に居酒屋で出てくる揚げパスタそのものだ。こんなに簡単なら毎日揚げよう。揚げパスタと暮らそう。
揚げパスタの味は揚げパスタ
さて本題である。無事揚げパスタがおうちでも作れることが分かったところで、いくつかの種類のパスタを買ってきた。なんとなくスパゲッティ以外のパスタは「なんかおしゃれなやつ」というイメージがあるのだが、これも料理をしないせいだろうか。
パスタの種類が変わってもやることは同じだ。油を引き、揚げていこう。
ファルファッレや生パスタなど比較的平べったい形状のパスタはスパゲッティと変わらない感覚で揚げられたが、フジッリやルマコーニなど変わった形状のパスタはフライパンで揚げるのには無理があったので注意してほしい。ささやかなTIPSです。
すごく茶色い。揚げている間は特に気にならなかったが、ここまで茶色が集うと盛大に料理に失敗しているみたいだ。こんなに茶色に染まったファルファッレを見たことないもんな。
だがこれは成功のはずだ。まずはフジッリから食べてみる。
味は揚げパスタとそこまで変わらずおいしい。しかしちょっと固い。厚みがあるパスタはその分順当に固く仕上がるのだろう。揚げスパゲッティが「カリッ」ならば、揚げフジッリは「ガリッ」くらいなのだ。
揚げフジッリ
味 ★★★★☆
食感 ★★☆☆☆
固いひねり揚げ度 ★★★☆☆
揚げフジッリ同様揚げスパゲッティよりも噛みごたえがあるのだが、その厚みがちょうどよく、固めのスナック菓子くらいの感覚なのだ。
これはコンビニで売ってほしい。見た目もかわいいし。
揚げファルファッレ
味 ★★★★☆
食感 ★★★★☆
ちょっと上品なスナック菓子度 ★★★★☆
フジッリは固い、ファルファッレはちょうどよくておいしい。味はほとんど変わらないので、そのおいしさは厚みに依存しそうだ。となると生地の厚いルマコーニもなんとなく想像がついてきたが……
これはだめだ。生スパゲッティのカリッとした軽さからずいぶん遠いところまで来てしまった。噛むとバキッと音がする。破片が口に刺さる。ただただ不快なのだ。
やはり味は揚げスパゲッティとほとんど変わらないのだが、これが居酒屋で出てきたら1つだけ食べたのちそっとテーブルの隅に追いやってしまうことだろう。軽く食べられる揚げスパゲッティが居酒屋で提供されるのは道理である。
揚げルマコーニ
味 ★★★★☆
食感 ★☆☆☆☆
健康な永久歯の必要度 ★★★★★
つまみは揚げたパスタでいい
パスタを揚げるとどうなるかは大体わかった。
ではパスタ以外の麺類はどうなのか。人はパスタのみに生きるにあらずという。うどんやそばも揚げてみるべきなのだ。
実はおつまみとしての揚げそばや揚げうどんがあることは知っている。しかし記憶が正しければそれらは乾麺でなく、生麺や茹でた麺であったはずだ。
おそらくそちらの方がおいしいことは目に見えているのだが、公平を期すためいずれも揚げパスタ同様乾麺の状態から直接油で揚げて食してみたい。
揚げパスタと見比べてみると白いぶつぶつがなく、ただ麺が茶色くなったように見える。パスタの時に感じた香ばしい匂いもない。果たしておいしいのだろうか。
揚げパスタと同じくらいのカリッと感なのだが、味が皆無なのだ。揚げパスタも味自体は控えめなはずだが、思い起こせばあいつには味わいがあった。そう思わせる無である。
揚げうどん
味 ☆☆☆☆☆
食感 ★★★☆☆
食べられる木の枝度 ★★★★☆
うん、蕎麦いこう。
食べた瞬間はほとんど味がしないのだが、後からほんのりと蕎麦茶のような風味が追いかけてくるのだ。蕎麦茶スティックだ。
ひょっとすると日本酒を飲みながら食べるとよいかもしれない。少しだけアリな味である。
揚げ蕎麦
味 ★★☆☆☆
食感 ★★★☆☆
風味の繊細度 ★★★★★
中華麺は食感に特徴があった。揚げパスタよりもさらに軽く、噛まずともパリポリと折れてしまうような軽さなのだ。ただ味はあまり感じられない。軽い無である。
揚げ中華麺
味 ☆☆☆☆☆
食感 ★★★★☆
味のないベビースター度 ★★★★★
なるほど分かった、つまみは揚げたパスタでいい。うどんでもそばでも、中華麺でもない。
これもまた知見である。おとなしくスパゲッティを揚げようと思います。
たぶん居酒屋も一度は試していると思う
色々なパスタや麺を揚げて分かったが、やはりおつまみには揚げパスタ、特にスパゲッティが最適のようだった。
思えば日々メニューを開発している居酒屋のことである。揚げパスタ以外の麺類も一度揚げてみたに違いないのだ。その結果どこもかしこも揚げスパゲッティに収束しているのだ。
巨人の肩の上に立つという言葉がある。先人の積み重ねた発見や知識を巨人にたとえ、その上で新たな発見を行うという意味のことばだ。
私は今、巨人の脇腹あたりにいる。