eスポーツ企業ESLゲーミング(ESL Gaming)が、初のモバイル専用eスポーツリーグを立ち上げた。ESLとワイヤレス技術企業クアルコム(Qualcomm)の提携によって立ち上げられた、「スナップドラゴン・プロ・シリーズ(The Snapdragon Pro Series)」は世界の6つの地域に展開され、賞金として200万ドル(約2.3億円)が与えられる。
ESLにとって、このリーグは長年のモバイルeスポーツの取り組みの集大成である。ゲームコンソールとPCにおけるeスポーツにルーツを置く同社は、2017年にESLモバイル・オープン(ESL Mobile Open)のような単発イベントを通じてモバイルゲームに進出し始めた。過去数年間、ESLはクラッシュ・ロワイヤル(Clash Royale)、ワイルドリフト(Wild Rift)、PUBGモバイル(PUBG Mobile)などの人気モバイルゲームのトーナメントを運営してきた。
これまでのところ、ESLとクアルコムの両社は、スナップドラゴン・プロ・シリーズで争う具体的なモバイルゲームのリストを公開していない。「すべての地域が同じタイトルを持つわけではない」と、クアルコムのゲームおよびグラフィックス部門マーケティング責任者、パトリック・パーキンス氏は言う。「たとえばヨーロッパに、何か(ひとつのゲームタイトル)を強制的にプレイさせるのではなく、地域において人気のあるゲームをプレイしてもらうことになるだろう」。
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B2Cモデルへの転換の一環
チップセットメーカーのクアルコムはこれまで、どちらかといえばB2Bブランドだったが、現在はB2Cモデルに向けた取り組みを進めている。タイトルスポンサーとしてESLのモバイルeスポーツリーグに参加するという決定は、その一環である。「eスポーツと言えば、インテル・エクストリーム・マスターズ(Intel Extreme Masters)はインテル(Intel)が大きく成功させたパートナーシップだろう」とパーキンス氏は言う。「誰もベストバイ(Best Buy:北米の大手電化製品小売)に行って、『インテルをひとつ下さい』と言う人はいない。しかし、インテルがPCをより良いものにする構成要素であることを知っている。我々が(クアルコムのゲーム・サブブランドである)スナップドラゴン・プロ・シリーズでやろうとしていることはそれだ」。
クアルコムとESLは、提携契約について具体的な詳細を明らかにしなかったが、パーキンス氏によると、複数年にわたる数百万ドル(数億円)規模の契約だという。
クアルコムでゲームとスナップドラゴン・スタジオ(Snapdragon Studios)のグローバル責任者を務めるデイブ・ダーニル氏は、「我々はこれを長期的に持続可能なプログラムにしたい。(高額の)賞金を提供することで、取り組みの重要性を大きくしたいと考えている。クアルコムはゲームに本格的に取り組んでいる。デバイスメーカーとしてeスポーツに非常に積極的に取り組んでおり、eスポーツ専用のゲーム機を開発し、機能を拡充し、主要なeスポーツリーグのスポンサーになっている。ESLと提携するのは今が最良のタイミングだと考えた」と語った。
時宜を得ているリーグの開催
eスポーツの組織たちはすでにモバイルeスポーツにより多くのリソースを投入し始めているが、ESLの発表はこの活動をさらに加速させるだろう。「プロのeスポーツチームからすると、このことは良いニュースだ」と、モバイルeスポーツのワイルドリフト(Wild Rift)に多額の投資をしているeスポーツ団体イモータルズ(Immortals)のCEO、ジョーダン・シャーマン氏は言う。「インフラが増えれば増えるほど、プレイヤーやトーナメント、イベント、賞金プールなどの機会も増えるので、より多くの関心が生まれ、大きなステージに参加する機会が得られる」。
業界専門家たちは、ESLのモバイルeスポーツリーグの開始は時宜を得ていると評価する。NFTゲーミング組合ベイズ(BAYZ)の共同設立者で、以前コンプレキシティ・ゲーミング(Complexity Gaming)でモバイルゲームのディレクターを務めたマット・ラトレッジ氏は、「トーナメント主催者たちは、モバイルeスポーツをもっと身近なものにするための助けを本当に必要としている」と語る。「(モバイルゲームを身近にするための支援)に関して、ESLは素晴らしい実績を持っている」。
クアルコムがモバイルeスポーツにさらに徹底的に投資することを決めたことは、チップメーカーとしての同社に利益をもたらす可能性が高い。ラトリッジ氏は「これは、この分野でスポンサーシップを成功させるための素晴らしい例だと思う」と述べた。「このようなトーナメントを設定することで、ファンや消費者とのつながりが生まれスナップドラゴンのような製品を最高の状態でプレゼンテーションすることができる」。
モバイルeスポーツの明るい未来
ESLとクアルコムはいずれも、長期的にモバイルeスポーツに参入していると断言できるほどの自信を持っている。スナップドラゴン・プロ・シリーズが成功する、しないに関係なく、モバイルeスポーツのエコシステムが完成するのは時間の問題だと彼らは考えている。
ESLのモバイル担当ゼネラルマネージャーであるケビン・ローゼンブラット氏は「我々はモバイルeスポーツに長期的な視野を持っている。一般的に、両社には非常に明るい未来があると信じている」と述べた。「これは我々双方が目指しているものであり、非常に共通性があるミッションだ。そして、スナップドラゴンが、ブランドの約束を果たし、モバイルeスポーツにとって長期的に持続可能なものを作る機会をもたらしてくれると思う」。
[原文:Why ESL and Qualcomm are teaming up to launch a $2 million mobile esports league]
ALEXANDER LEE(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU