AppleのM1 Ultraは本当にバケモノか、Mac Studio使ってみた結果

GIZMODO

今買っていいかどうか…!

先週発売されたMac Studio、中でもM1 Maxを2枚くっつけたM1 Ultra搭載したモデルなんて、またすごいのが来たなって感じていました。米GizmodoのPhillip Tracy記者がしばし使ってレビューしてますので、ほんとにすごいのかどうか…以下、ご覧ください。


Mac StudioはAppleの商品ラインナップのすき間を埋めるだけでなく、Macのデスクトップの中で「Proとminiの間」を待望してきたファンの心の穴も埋めてくれました。といってもその登場は、予想外でした。ここ数年の印象では、AppleはMacを後回しにして、より利益の出るモバイルプラットフォームに軸足を移したように見えてたからです。

問題は、MacはiPhoneに比べるとAppleらしさが薄い…というか、他の会社が作るエンジンで動いていることでした。でもAppleシリコンの登場で流れが変わり、パソコンの世界でもAppleがトップに立つという目標が改めて示されました。と同時にAppleはパソコンに関するアプローチを変えました。彼らが「こうあるべき」と考えるものにユーザーを合わせさせるのではなく、ユーザーが求めるものに耳を傾けるようになりました

こうした流れが交差するところに、Mac Studioが存在します。それは小ぢんまりしたデスクトップコンピューターで、Appleの現在最強のM1 Ultraチップを搭載してます。中身がすごいだけじゃなく、ポートもいっぱい付いていて、つい優秀な我が子を見つめるお父さんみたいにうむうむとうなずきたくなります。

Mac StudioはMac miniとMac Proの間のどこかに位置していて、適してるのはクリエイティブ職でヘビーなアプリを使うんだけど、モジュール式のMac Proに6,000ドル(日本では税込価格65万9780円)もかけられない…って人たちです。そんなMac Studioの登場までになぜこんなに時間がかかったのか、Appleを小一時間問い詰めたいところではありますが、1週間ほど使ってみた結果、僕は自信を持って言えます。待ってた甲斐がありますよ、と。

Apple Mac Studio

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Mac Studioはクリエイティブ専門職向けの画期的デスクトップ。Mac miniよりはるかに強力ながら、Mac Proよりずっとお手軽に手に入ります。

これは何?:Mac miniとMac Proの間に位置するコンパクトなデスクトップマシン。

価格:2,000ドル〜8,000ドル(日本国内税込価格24万9800〜93万9800円)、レビュー機は6,200ドル(同74万1800円)。

気に入った:記録的なパフォーマンス、コンパクトなデザイン、ポートたくさん!、ほとんどのタスクにおいて静か、重い負荷がかかっても熱くならない。

気になった:Max構成にすると高い、アップグレード負荷、Macとゲーミングはなじまない。

ただ、Mac Studio買える人だったら、って条件はあります。

Mac StudioはMac miniよりそんなに大きくないですが、価格は何か上乗せするたびにどんどん高くなります。アップグレードしなければMac Studioは2,000ドル(日本国内税込価格24万9800円)で10コアのM1 Maxチップ搭載、RAMは32GB、SSDが512GB。ストレージを1TBにすると200ドル(日本では2万2000円)プラスで、2TBにするとさらに400ドル(同4万4000円)プラスです。8TBなら、ベースの512GBより2,400ドル(同26万4000円)プラスです。RAMも高くて、32GBを64GBにすると400ドル(同4万4000円)上がります。

さらにここから面白いんですが、RAMを128GBにするにはチップをM1 MaxじゃなくM1 Ultraにしなきゃいけなくて、48コアGPUの場合は計1,200ドル(同18万4000円)、64コアGPUの場合はそれプラス1,000ドル(同11万円)上乗せです。なのでMax仕様のMac Studioは、M1 Ultraの64コアGPU版搭載、RAMが128GB、SSDが8TBで、お値段7,999ドル(同93万9800円)となります。なかなかすごいお値段です。が、5万ドル超えのMac Pro最強ビルドよりはぜんぜん手が届きます。

コンパクトかつエレガント

Mac Studioの外観は、Mac miniをいくつか重ねたような感じです。丸みを帯びた正方形を縦に伸ばしたアルミの筐体で、上部中央にはAppleロゴが光ります。背面には小さく丸い電源ボタンがあり、オンにすると前面の小さなLEDが白く光ります。

普段RGB満載のゲーミングPCを使ってる僕には、このプレーンさが違和感でした。なんか、どこを見ればいいんだみたいな。でも別に悪いことじゃないんですよね。点滅する色や大きなガラスパネルも好きですが、Mac Studioは控えめなエレガンスでどんな環境にも溶け込めます。ただ残念ながら、Mac Studioのパーツは後からアップグレードできません。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

コンパクトなキューブは丸いベース(少しApple Park風味)の上に乗ってますが、ベース部分は真横から見るか、Mac Studioを裏返すかしない限り見えません。裏返すと「Mac Studio」ロゴの刻印があるのはナイスです。底面には安定のためのゴム足も付いてます。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

ただこのゴム足、僕の木の机では効果なしでした。ポートにアクセサリーを抜き差しするときは、Mac Studioが滑らないように片手でMac Studioを押さえとく必要がありました。しかもポートがけっこうきつくて、抜き差しには普通以上に力を入れなきゃいけなくて。救いだったのは、ポートにアクセスしたいとき、回転させて簡単に向きを変えられることです。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

詳細に入る前に、Mac Studioの形状についてもうちょっと深堀りしておきます。

Mac Studioはサイズ的にはMac ProよりMac miniに近くて、パフォーマンスの高さを考えるとこの小ささはすごいことです。高さは3.9インチ(9.5cm)、フットプリントは7.7インチ(19.7cm)四方で、僕の大きな仕事机ではそれほど場所をとらず、Studio Display(とHPとDellのモニター)の下にすっぽり収まります。

レビューに使ったM1 Ultra搭載のシステムは重量8ポンド(3.6kg)ほどでM1 Max版よりも2ポンド(約900g)ほど重いものの、部屋から部屋へ移動する程度なら楽にできます。

ポートが戻ってきた

ポートに関しては、僕のナード的こだわりを書き殴ってしまうと、とにかく全部、あります!

M1 Ultra版の前面にはThunderbolt 4ポート(M1 Max版だと標準のUSB-C)が2つあり、最大40Gbpsの転送速度が出せて、フルサイズのSDXCカードスロット(UHS-II)はフォトグラファーやビデオグラファーにとってありがたいはずです。このポート祭りのクライマックスは背面にあって、Thunderbolt 4ポート x 4、10Gbイーサネットジャック、USB 3.1 Type-A(5Gb/s)、HDMIポート、ハイインピーダンスヘッドホン/マイクジャック(でもなぜ背面に?)、という充実ぶり。

そういえばミッキーマウスポートってがどうこう…って聞いた人がいるかもしれませんが、電源ジャックの形がミッキーマウスなんです。黒いナイロンに覆われたケーブルが同梱されてます。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

このポート周りのことを、一瞬立ち止まって考えてみましょう。Appleは少し前のMacBookでは、USB-Aはもう要らないってメッセージをはっきり出してたんですが、今は逆戻りして、まだまだUSB-Aも使うっていうユーザーの声を聞いたようです。これを退行と捉える人もいるかもしれませんが、僕がほぼ毎日使うUSB-Aデバイスといったら、外付けWebカメラ、メカニカルキーボード、XQDカードリーダー、Logitech Powerplay充電パッド、USBマウスレシーバーと、まだまだ現役なんです。

今回、2014年のMac miniでなくなったSDカードスロットが復活したことも素晴らしいと思います。僕はミラーレスカメラNikon Z6で撮るとき、XQDカードとCFExpress Type-Bカードを使ってますが、コンテンツクリエイターが持ってるデバイスのほとんどはSDカードを使ってます。

接続周りに関して言うと、Mac StudioはBluetooth 5.0とWi-Fi 6対応ですが、どちらの規格も最新のBluetooth 5.3・Wi-Fi 6Eよりは古いバージョンです。でもどちらもパフォーマンス的には良好で、使っている2.4GHz帯、5GHz帯が混雑しない限り問題ありません。もうひとつ最新じゃないのはHDMIポートで、4K/60Hzをサポートしてますが、HDMI 2.1で可能な4K/120Hzではありません。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

Studio Displayでスピーカーをテストすべく音楽を再生してみると、Mac Studio本体からも同時に再生してるので驚きました。そう、このMac Studioにはデュアルスピーカーが内蔵されてるんです。音質は薄っぺらくスカスカで低音がまったく聞こえませんが、Appleだってそんなのわかってるはずです。Mac Studioにスピーカーが入ってる目的は音楽を楽しませることじゃなくて、別途スピーカーをつなげなくても音が聞ける状態を作ること、それだけです。

レビュワーがこんなこと書くのは(とくに音にこだわるレビュワーなら)おかしいかもしれませんが、このスピーカーは実際ありがたいです。これなら、動画とかSNSのちょっとしたクリップを見るために別のデバイスにつなげる必要もないし、コンピューターのスピーカーのために机のスペースを割く必要もなくなります。だから全然ダメではないんですが、このスピーカーはもっと良くできただろうし、良いものにすべきだったとは思います。

M1 Ultra:Maxのその次へ

何らかのM1搭載プロダクトの記事を読んだことがあれば、M1 Ultraのパフォーマンスにも驚かないことでしょう。Mac Studioとともに登場したM1 Ultraは今Appleで最強のプロセッサで、M1 Maxをも上回ってます。128GBのユニファイドメモリ(この記事のレビュー機に入ってる)と8TBのSSDをサポートしてます。

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Image: Apple

M1 Ultraは2枚のM1 Maxチップをくっつけることでできていて、そのアーキテクチャは「UltraFusion」と呼ばれ、プロセッサ間は毎秒2.5 TBのブリッジでつながってます。その結果M1 Ultraは、同じ電力要件の16コアPCデスクプロセッサで最速のものより90%高性能、とAppleは言ってます。またAppleいわく、M1 UltraはMacBook Pro 13のM1より8倍速く、内蔵の64コアGPUはNVIDIAのどのチップよりも高性能だそうです。(編注:消費電力あたりのパフォーマンスが高性能、の意。もっと電力を注ぎ込んでよいならNVIDIAのほうがパフォーマンス出ます。

Appleの言うことはさておき、僕はM1 Ultra搭載Mac Studioをいろんなパフォーマンスベンチマークやリアルなテストで試してみました。詳細は後で書きますが、M1 Ultraはパフォーマンスそのものでも効率でも、AppleがIntelやAMDに対して持っていたリードをさらに広げています。Chromeのタブを何十枚も開きつつ、ハイレゾ写真のPhotoshopでの編集から複数動画のストリーミングまで、どんなタスクでもガツガツとこなしてくれました。Appleシリコンが出てからすでにしばらく経ってるので、メジャーなアプリのほとんどはエミュレーターのRosetta 2を通さずネイティブで動きます。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

M1 Ultra搭載Mac StudioはGeekbehch 5のテストで、シングルコアが1,760、マルチコアが24,107という結果でした。シングルコアでの結果はじつはM1 Maxより低いんですが、マルチコアではほとんど倍のスコアになってます。僕が別でテストしているHP Omen 45Lも、Intel Core i9-12900Kと32GBのRAM搭載で、シングルコアが1,896とM1 Ultraを上回ったんですが、マルチコアは15,644でM1 Ultraの圧勝でした。

システムの処理速度を測るCinebench R23のベンチマークでは、Mac Studioのスコアは24,091で、MacBook ProのM1 Maxのスコア(12,206)のほぼ倍を叩き出し、HP Omen 45Lにも僅差ですが勝利しました。Handbrakeのテストでは、4K動画を1080pに変換するのに2分37秒しかかからず、MacBook Pro(4分50秒)の半分よりちょっと長い程度、HP Omen 45Lよりも短時間でした。Blenderのベンチマークでは、CPUを使うと1分53秒という結果でしたが、GPUでも同じ時間でした(一応再テストしましたが、結果はほぼ同じで、正確に測れてると思います)。

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Image: Phillip Tracy – Gizmodo US

でもまだゲームは、Appleにとって痛い部分みたいです。ポピュラーなAAAタイトルのほとんどはmacOSでは動かず、動くものでも最適化されてるとは限りません。

とはいえ、ちゃんとテストできたものに関しては、M1 UltraがハイエンドなNvidiaのカードに付いていける程度のパフォーマンスがあることを証明できました。『Total War:Warhammer II』はグラフィックスをUltra設定にして、平均108fpsでプレイできました。ただしNVIDIA GeForce RTX 3090搭載のHP Omen 45Lでは167fpsだったので、それに並んではいません。次に『Metro: Exodus』では4K Ultra設定で平均80〜90fpsと、60fpsははるかに超えてました。上々に見えますが、じつはどちらのゲームもテスト中何回もクラッシュしてました。

それでもすごいと思うのは、Mac Studioがこういうタスクを軽そうにこなしてることです。ファンの音を聞くには、Mac Studioの背面に耳を付けなきゃいけませんでした。筐体にヒートガンをあてても、全然熱くなりませんでした。全然あったかくもならず、静かなので、電源オフじゃないかと思う人がいるかもしれません。

Mac Studio買うべき?

僕は生涯Windows派なんですが、今回Mac Studio使ってすごくエンジョイできました。Corsair One i300みたいな、パワフルでコンパクトなシステムが好きだからかもしれません。Mac Studioはサイズに対するパフォーマンスが何よりも高いし、入出力も豊富で、その手の魅力があります。

でも僕がMac Studioを個人的に買うかっていうと、答えはノーです。そんなお金があるなら、自分の好きなゲームをプレイできるWindowsマシンを買うと思います。この点こそ僕にとっては判断の分かれ目であり、Appleが短期的に解決できない課題でもあります。

でもまあ、みんなそこはわかってますよね。ゲームの優先順位が低い人にとっては、Mac Studioはパフォーマンスの化け物でありながらサイズは小ぢんまりしてて、熱くもうるさくもならずにヘビーな仕事をしてくれる、ってことが大事だと思います。

コンテンツ制作やコーディング、3Dシミュレーションなどなどといった負荷の高い作業をするには、Mac Studioはこの上ない馬車馬です。Mac Proと比べても(モジュール式である必要がない限り)明らかにMac Studioを選ぶべきだし、Mac miniと比べても、普通のユーザーにとってベストな超コンパクトデスクトップマシンです。Mac Studioがこんな小さな体でこれほどのパワーを出してるんだから、次のMac Proを待つ必要もあまりないんじゃないかと思うほどです。

つまり、究極のMacデスクトップマシンはもう、ここにあるんです

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