ロシアによるウクライナ侵攻のニュースが世界を震撼させています。そして、このようなニュースが出ると、便乗するネット詐欺が登場します。今回は、ウクライナ侵攻に便乗したネット詐欺の典型的なパターンをいくつか紹介します。
まずは、オレオレ詐欺です。海外では「祖父母詐欺」(Grandparent scams)とも呼ばれる詐欺です。ニュースサイトやSNSで公開されているウクライナの惨状を写した写真を悪用して、高齢者にメールやメッセージを送り、子供や孫を装ってお金を奪おうとするのです。例えば「銀行が閉鎖されてお金がないので脱出するための飛行機チケット代金を送ってくれ」などと言ってくるのです。
対策としては、メールで連絡が来たなら電話をして本人に確認することが効果的です。送られて来た写真が悪用されたものでないか、画像検索などで確認することも重要です。
寄付金を狙う詐欺師もたくさんいます。例えば、赤十字のような組織のウェブサイトに似せたフィッシングサイトへ誘導し、送金させるのです。また、ウクライナを支援すると見せかけて、SNSやクラウドファンディングなどで集めた寄付金を支援以外の目的で使用する詐欺師もたくさんいます。
寄付金は公式の窓口に送るのが確実です。在日ウクライナ大使館は銀行口座をTwitterで公開しているので、そこに送りましょう。
ウクライナを応援したい方々用に、寄付金を送金できる銀口口座の詳細を更新いたします。以下になります。
三菱UFJ 銀行
広尾支店 047
普通
口座番号0972597
エンバシーオブウクライナご応援、どうもありがとうございます。
— 在日ウクライナ大使館 (@UKRinJPN)February 25, 2022
メールやメッセージで寄付を募ってきてもすぐに飛びつかないことが大切です。もし、いつも自分が使っているサービスなどが支援活動を行い、そこに寄付したいと思ってもメールのURLを開いてはいけません。自分で該当するウェブサイト検索して開き、そこから寄付しましょう。
大手非営利組織評価機関であるBBB Wise Giving Allianceは資金援助を募集している慈善団体の見極め方を公開しています。
例えば、その慈善団体が実際に現地に存在しているかはもちろん、災害時の緊急救援の経験があるかどうか確認する必要があるとしています。もし、本当に善意からの募集だとしても、経験がなければ効果がない場合があります。
また、慈善団体の運営にも手数料やコストがかかるので、集まった金額の100%を支援に使うと誇張した主張を行っている場合も怪しいとのことです。
クラウドファンディングを利用した悪質な募金など、さまざまな詐欺の手口
詐欺師はクラウドファンディングで募金を募ることがあります。国を守るための資金を集めるため、と謳って募集するのですが詐欺師も混じっているため注意が必要です。クラウドファンディングの審査は完璧ではないので、寄付しようとしている人が自分で真偽を判断するしかありません。
戦時下には葬儀詐欺も発生します。愛する家族が亡くなり、埋葬するお金が必要だと寄付を募る手口です。この場合は内容をよく読み、募集が本物かどうかをよくチェックしましょう。ウェブで公開されている写真などを無断で流用・悪用した写真を送ってきていたり、情報に矛盾があったりしたら詐欺の可能性があります。
ディープフェイクを使った詐欺にも注意しましょう。今回の戦争では、これまでにない規模の情報戦が繰り広げられており、偽の情報に踊らされないことが重要です。現在の技術では有名人の映像を使い、本人が喋ったことのない会話をしているような動画を作成できます。強烈な怒りを覚えるような動画を見たときには、反射的に行動せず、フェイクであるかどうかを確認しましょう。
戦争中には経済も大きく動きます。このタイミングに合わせてお金を稼ごうとしている人はたくさんいますし、実際に儲けている人もいます。そんな心理につけ込み、株式や暗号通貨、弾薬などへの投資を持ちかけてくる詐欺師がいます。基本的に、本当に儲かる投資の話がメールで飛び込んでくることはありません。
感情が揺さぶられやすい事件だからこそ、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付けましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「support@dlis.info」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと