魚関係で知り合った知人から、韓国料理屋のオープニングパーティの招待を受けた。この店はマッコリの輸入元が経営をしており、こだわりの生マッコリなどが飲めるらしい。
もちろん料理もマッコリに合うものが多数用意されており、韓国でマッコリに一番合う料理とされる、エイを発酵させた世界で二番目に臭いといわれるホンオフェもあるそうだ。
本物のホンオフェ、それは肩書通りの強烈なインパクトを持った食べ物だった。
※2010年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
ホンオフェは「韓国食彩にっこりマッコリ」で食べられる
ホンオフェを食べるために訪れたのは、日本に本場のマッコリを輸入している二東(イードン)ジャパンという会社が高田馬場にオープンさせた、「韓国食彩にっこりマッコリ」という直営店。
いくらマッコリと合うからといっても、あのホンオフェを出すお店。かなりディープな場所かと思ったら、大手チェーン店が多数入るビルの中にとけ込んでいた。
羊の皮をかぶったオオカミならぬ腐ったエイ。いや、発酵したエイ。通報とかされないのだろうか。
ホンオフェと私
さてホンオフェといえば、エイを丸ごと常温発酵させてアンモニア臭たっぷりにした韓国南東部の郷土料理。本場で食べたことのあるコリアンフードコラムニストにいわせれば、キャンプ場のトイレの味。食べ物の味として、その表現ってどうなんだろう。
鼻にツーンときたところにマッコリを飲むのが最高らしいのだが、クサヤが苦手な日本人がいるように、もちろん韓国人全員が好きな訳ではなく、嫌いな人は裸足で逃げ出すそうだ。
この伝説の料理を一度食べてみたくて自作したことがあるのだが(記事参照)、その味と匂いは強烈なもので、なるほどこれがホンオフェかと試食した全員が目を血走らせた。
ただ問題は、その場にいた人間の中で一人も本物を食べたことがなかったため、「あれはホンオフェではなく、ただの腐ったエイだったのでは?」という疑惑がいまだに残っていること。
今日はその答えあわせでもあるのだ。
本場のホンオフェ登場
料理を食べ始めてから一時間が経過したところで、本日のメインディッシュであるホンオフェが登場。最後に出したのは、やっぱり他の料理への気遣いだろうか。
混みあっていた会場内が、ホンオフェが登場した途端、その匂いで映画「十戒」の海が割れるシーンのようにお客さんが左右に別れるかなと思ったがそんなことはなかった。どうも私が以前に嗅いだホンオフェの匂いはエイ丸ごと一匹分のため、ちょっとオーバーなイメージだったみたいだ。これくらいなら普通の飲食店でも問題なさそう。
キムチなどをたくさん食べた後だからか、お皿にきれいに盛られたホンオフェはちょっと離れたところからだと、ほとんど匂いは感じられなかった。しかし取り皿にとって鼻を近づけた途端に訪れるカウンターパンチ。油断していた。ツーンどころかキーンときた。
ああこれこれ、忘れかけていたあの強烈なアンモニア臭。一気に酔いがさめた。
臭いというか、鼻が痛い。耳鼻科で鼻の奥にシュシュっと薬を入れられたような感じでアンモニア臭が直接的に飛び込んでくる。ダメだろこれ。
あの日の手作りホンオフェは正しかった
無個性な人間ばかりになったといわれる日本において、強烈すぎる個性を発している食の韓流スター。
一切れ丸ごとでチャレンジすると、せっかく食べたおいしい韓国料理をポロロッカしてしまう恐れがあるので半分にして、さらにキムチと茹で豚をたっぷりにした。
しばらくためらった後、意を決して口に入れる。
口に入れた瞬間はキムチの味が勝っていたのだが、何度か噛むうちにだんだんアンモニア臭が広まってきて、奥歯でホンオフェを噛みしめた瞬間に大爆発。熱い。
一瞬にして毛穴が開いて汗が出て、着ているヒートテックのシャツが突然発熱をはじめた。キャンプ場のトイレみたいな味というが、いまどきのきれいなキャンプ場に対して失礼だ。
鼻から目へとアンモニアがツーンときたところで、マッコリで口の中を流す。うまい。でもまだ臭いのでもう一度マッコリを飲む。うん、うまい。
ホンオフェがおいしいかどうかはあえて語らないが(匂いと刺激がすごすぎて味がまったくわからない)、マッコリをおいしく飲むためにホンオフェを食べるという方法論は正しいと思う。
子供のころ、苦い粉薬を濃い目のカルピスで飲んだことを思い出した。
工藤さんにも試してもらった
私のリアクションが決してオーバーなものではないことをわかってもらうために、「特に嫌いな食べ物はない」という工藤さんにも試食していただいた。
「もう少し食べればホンオフェに対する心の扉が開くと思うけど、今日はその扉が開く気がまったくしない」そうです。
韓国人はホンオフェが好きというのは、江戸っ子が熱い風呂をやせ我慢して入るみたいな話なのかなと思う。
細かい味の違いはわからないけれど、あの日に河原で食べた手作りのホンオフェは、だいたい正解だったということがわかってよかった。
食文化っていろいろですね
韓国ではホンオフェを結婚式で出すそうだが、感情を表に出すべき日には、あの強烈さが合うのかなと思った。
あれほど強烈な思いをしても、マッコリで口直しをしてしばらく経つと、またちょっと食べてみたくなり、食べてまたギャーの繰り返し。
ホンオフェは食べ物としてよりも、絶叫マシンとして評価すべきなのかもしれない。