いつの間にか3月が目の前になってきた。季節は卒業シーズン、世の大学4年生は卒論発表が終わった頃だろうか。
僕も干支が一回りするほど昔に書いたが、論文のフォーマットは独特だ。
論文風に書いたら何でも頭が良さそうな内容に見えるのではないだろうか。
絵本の名作「おおきなかぶ」を論文風に書いてみたい。
おおきなかぶと論文
部屋の掃除をしていたら、学生のときに書いた論文フォーマットの文章が出てきた。
論文のフォーマットはいくつかあって、これはショートペーパーという短め(だいたい2~4ページくらい)の論文に分類されるものだ。
所属する学部や学会によって異なるとは思うが、僕が書いた経験があるものは二段組みになっているこのフォーマットだった。
今回は「おおきなかぶ」をこのフォーマットに沿って論文風に書いてみようと思う。
福音館書店の「おおきなかぶ」である。
誰もが一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
おじいさんが植えたかぶがとてつもなく大きくなり、おじいさん・おばあさん・孫・犬・猫・ネズミが「うんとこしょ どっこいしょ」の掛け声で引っ張ってようやく抜けました、というお話だ。
これを論文風に書くとこうなる。
なんとなく論文っぽく見える。
タイトルも「おおきなかぶ」から「複数人の協調動作による巨大な蕪の収穫方法の提案」に変わった。
「協調動作」=「うんとこしょ どっこいしょ」である。
著者のところは元の再話者であるA.トルストイを押さえて自分を筆頭著者にしてしまった。
ロシアから怒られないことを祈るばかりである。
コンパクトにするために1ページにぎゅっとまとめたが、本来の論文と同じような章立てとした。
ここからは個別に見ていこう。
関連研究の紹介を忘れずに
まずは背景と目的からだ。
ここでは関連研究を紹介しつつ、なぜこの論文を書いたかの導入部分となる。
関連研究では「大きくなった野菜や果物が出てくる童話」というつながりで、ジャックと豆の木・桃太郎を選出した。
研究グループの扱いで「おばあさんら」と紹介しているところが気に入っている。
こんな研究発表がされるような学会に所属してみたいものである。
「おおきなかぶ」では、おじいさんがかぶを植えた次のページでもうかぶがとてつもない大きさに成長していた。
「おじいさんがかぶをうえました」→「かぶができました」と、ものすごいスピード感である。
このスピード感を活かしたかったので、おおきなかぶを育てるところは先行研究という形で説明を省いている。
図を入れてそれらしくしよう
次にかぶをみんなで引っ張るところの説明である。
数式や図を入れるとそれっぽい。
図のところは思わず「システム構成図」と書いてしまい、おじいさんたちがシステムの一部となってしまったことは申し訳なく思っている。
また数式は結局「みんなそれぞれの力を足し算しよう」ということしか言えてないのだが、「Σ」のような記号を使うと何だかそれっぽくなる。
積分記号などを使うのもおすすめである。
次は実験方法の説明だ。効果を検証するための実験方法が他の人でも再現できるように説明する必要がある。
ここではフローチャートを入れた。
内容は全くないが、これがあるだけでにぎやかな紙面になっている。
童話の内容を論文風に書く上で、図を入れやすい童話を選ぶのがなかなか大変だった。
始めは誰もが知っている桃太郎を選ぼうと思ったが、おおきなかぶのように「何回もトライして最後に成功する」といった内容の話でないと論文風にしづらいことがわかった。
わらの家・木の家・レンガの家とだんだんと丈夫になっていく「三びきのこぶた」などは論文風にしやすい童話である。
絵本ではメインのくだりである、どんどん引っ張る人が増えていくところが表1つになってしまった。
ページを繰って展開を楽しむどころではない。ひと目でわかるようにまとまっていることが大事なのだ。
まとめでは今後の展望を書いている。
あまりに進捗がない研究だと、ここが盛り盛りになっていたり「今後の展望として書いている内容がそもそもこの論文の目的だったのでは……!?」となる現象が起きていたことを思い出した。
それにしても締め切りぎりぎりで論文を書いていると、10年前もこんな風にぎりぎりで書いていたなと思い出した。
進歩のなさを感じつつ筆を置きたい。
おおきなかぶの絵本自体が面白い
もう何年ぶりか分からないくらいにおおきなかぶの絵本を読んだが、かぶが抜けないとおじいさんがしょんぼりしている絵があったりと面白かった。
大人になってから名作絵本を読むと、子どものときとはまた違った感想になるかもしれない。
そのときは論文風にまとめて、大人っぽさを出していくと良さそうだ。論文が大人っぽいのかはわからないが。