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「NURO 光」は、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供する光ファイバー回線を用いたインターネット接続サービスだ。「下り最大2Gbps(*1)」という、1Gbps超のインターネット回線を、他社に先駆けて2013年の時点で一般向けに提供したことで注目され、現在でも安定した通信速度で、高い評価を得ている。
そして、インターネット回線サービスというと、「レンタルされる機材が何なのか?」が気になる人も多いはず。
例えばNUROの場合、レンタル機材によっては、有線LANが最大1Gbpsの1000BASE-T、無線は最大1300MbpsのWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)となる場合もある。この場合は「誰かが目いっぱい通信していてもまだ余力がある」という点で速度を有効活用できるが、「1台のPCで最大2Gbpsをフル活用する」ことはできない。
2.5GBASE-TとWi-Fi 6に対応するソニー製ONU
しかしNURO 光では、最大2.5Gbpsの有線LAN(2.5GBASE-T)や規格上、最大4800Mbpsで通信できるWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応するソニー製のWi-Fiルーター内蔵ONUもレンタル機材として用意。そして、2022年2月現在、これが必ずレンタルされるオプションプランもあるという。
そのオプションプランは、スマートロックなどのスマート家電を活用できる「NUROスマートライフ」。そして、レンタルされるソニーのWi-Fiルーター内蔵ONUは「NSD-G1000T」だ。
このONUは、NUROが用意するスマートロックやスマート家電リモコン、コミュニケーションカメラといったIoT家電のハブとしても機能し、Wi-Fi 6のほか、2.5GBASE-Tを1ポート、さらに1000BASE-Tを3ポート搭載。NURO 光の「下り最大2Gbps/上り最大1Gbps」という回線速度を、1台の子機で使い切れるポテンシャルを持っている(もちろん、環境や混雑状況には左右されてしまうが)。
この「ソニーのWi-Fiルーター内蔵ONU」、一般には市販されていない製品だが、一体どういった製品なのか、気になる方も多いと思う。
そこで今回、実際にこの製品を筆者宅に導入し、速度や使い心地などを確認してみた。
ちなみに、「NUROスマートライフ」は今年の1月まで「新規加入時のみ契約可能」なオプションだったが、現在は既存ユーザーでも追加で契約できるオプションになっている。以下に紹介するように、なかなか魅力的な切り替えだと思うので、気になる方はぜひ検討してみてほしい。
*1 「2Gbps」は規格上の最大速度で、子機までの通信速度は子機や途中の機材の対応規格、回線の混雑状況によって制限される。なお、上りは最大1Gbps。
「NUROスマートライフ」で使えるソニー製ONU「NSD-G1000T」に注目
では、導入環境から説明していこう。
筆者が使っているインターネット回線は集合住宅向けの「NURO光 for マンション」。数年前から導入しているのだが、安価で高速な回線として、とても満足している。
レンタル機材として提供されているのは、Wi-Fiルーター機能が内蔵されているONU(光回線終端装置)で、ネットワークは有線LANが最大1Gbpsの1000BASE-T、Wi-Fiは最大1300MbpsのWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)というスペックだ。
子機1台あたりの最大帯域は理論上、最大でも1300Mbpsなので、この構成のメリットは「ダウンロード速度が2Gbpsになる」のではなく、「家族の誰かが1Gbpsを使い切るような大容量ダウンロードをしていても、回線はまだ半分も余裕があり、ほかの家族は影響を受けにくい」といった点になる。
そうした状況で登場したのが「NUROスマートライフ」オプションだ。
基本的には、先述したような「スマートライフ」を提供するサービスなのだが、このオプションを契約することで、提供ONUがソニー製の「NSD-G1000T」に変更される。そして、このONUは「スマートライフ」の核となる機能を提供するほか、ネットワーク機能も2.5GBASE-Tをはじめとして強化されているというわけだ。
オプションに位置付けられるNUROスマートライフの料金は、初期費用が5500円。月額550円だが、回線と同時に申し込むと初月は無料となる。
通常の月額料金に追加で550円を支払うわけだが、他社のインターネットサービスでもWi-Fiルーターをレンタルすれば、この程度の追加費用は必要となる場合が多い。NURO光はもともと通信料金が安く、筆者の場合だとプロバイダー料金も含めて月額2090円で済んでいるので550円を足してもまだまだ安い。
ちなみに、この「NUROスマートライフ」、以前は回線導入時のみ選べるオプションだったが、現在は導入後にもオプション契約が可能となった。つまり、NUROスマートライフを契約し、ONUをNSD-G1000Tへと交換することで、NURO光の実質的なリミッターが解除され、1台で2Gbpsを使い切る接続方法が提供されるわけだ。
また、今回は集合住宅でオプション契約してみたが、もちろん、戸建て住宅でも契約できる。
バンドステアリングなどの基本機能はしっかり搭載5GHz帯は160MHz対応
さて、まずはNSD-G1000Tの主な設定画面を紹介しておこう。
設定画面には、付属のガイドに従ってログインするが、基本的に、一般的なWi-Fiルーターが有する機能は一通り備えている。DHCPサーバーやポートマッピングはもちろん、Wi-Fiの2.4GHz帯と5GHz帯を自動で振り分けるバンドステアリング、DoSなどの攻撃に対応するファイアウォール機能も搭載されている。
また、5GHz帯の帯域は、20MHz/40MHz/80MHz/160MHzの帯域が選択でき、標準では80MHzに設定されていた。ノートPCなど最大2402Mbpsの通信が可能なWi-Fi 6対応子機を持っているなら、160MHzへ変更しておくといい。
【回線契約後の導入では、自分で交換作業を行う】
今回は、回線導入後、契約を変更して「NUROスマートライフ」に加入している。この場合は、ONUは郵送で届けられ、自分で交換作業を行う流れになる。同じことをしたい人も多いと思うので、その流れを紹介しておこう。
なお、新規導入の場合、光ファイバーの工事担当者が設定まで行ってくれるので、この部分は読み飛ばしてもらって問題ない。
流れといっても、写真入りのガイドがついているので、基本的にその通りにやればよい。
最初にやることは、使用中のONUから光ファイバーを抜いてNSD-G1000Tに挿す。光ファイバーの先端にはプラスチックのカバーがあり、そこを持って引き抜き、押し込むかたちとなる。
光ファイバーは、強く曲げると折れて断線してしまうので、交換の際は慎重に扱う。光ファイバーの先端からはレーザー光が出ており、目で直接見ると視力を悪化させる恐れがあるため、先端を目に向けないように作業する。ケーブルの着脱方法はONUに付属するガイドで確認できるが、作業自体はさほど難しいものではないはずだ。
光ファイバーを接続したら、続いて電源アダプタを接続。あとはしばらく待てばインターネットに接続される。IDやパスワードの入力といったONUへの設定は必要ない。
ただし、Wi-Fi接続のIDやパスワードは別に設定が必要になる。ONU付属の接続ガイドに従って子機のWi-Fi設定をやり直すか、Wi-Fiルーター機能の設定を従来と同じSSIDとパスワードに変更するか、どちらかの作業が必要になる。
SSIDやパスワードを以前と同じものにすれば、各Wi-Fi子機を再設定する手間が省ける。
「Wi-Fi 6+2.5GBASE-T」でインターネットが高速に!
それでは、いよいよNSD-G1000Tの性能を検証していこう。
まずは気になるウェブサイトを使ったスピードテストから見ていきたい。使用したのは下記の3つだ。
有線LANでの実測値は950Mbps→2Gbpsに
まずは有線接続でのテストから。
1000BASE-Tの接続となる「HG8045Q」では、最高で950Mbpsを記録。そのほかでも800Mbps前後の値が出ており、1Gbpsのリミットに近い通信速度が確保できているのがわかる。
続いて2.5GBASE-Tで接続した「NSD-G1000T」で試してみると、GoogleとFAST.comでは約2Gbpsを記録。回線の限界速度である2Gbpsをフルに活用できているのが確認できた。
Radish Network Speed Testingのように1Gbpsを超えないものもあったが、これらはおそらくWebサイト側の測定上限が1Gbpsなのだと思われる。また2Gbps回線なのに2000Mbpsを超えたのは、測定の計算誤差や1Gbps=1024Mbpsといった数字の都合だろう。
インターネット越しの測定だと、ONUや回線以外の要因で速度低下が起こりうる。そのため実測で1Gbps以上の速度が出るかどうか不安だったが、実際には見事に2Gbpsの限界に近い速度が確認できた。ONUの性能もさることながら、NURO光の回線自体の良さも確認できた形だ。
Wi-Fiの実測値は350~580Mbps→1~1.2Gbpsに
続いて同じ条件でWi-Fiでも計測してみた。
Wi-Fi 5で最大866Mbpsとなる「HG8045Q」では、約350~580Mbpsとなった。Wi-Fi接続の通信速度は規格の限界値から数割落ちるのが普通で、妥当な数字と言えるだろう。
「NSD-G1000T」では最大2402MbpsのWi-Fi 6での接続となる。FAST.comで1.2Gbpsを記録したほか、Googleでも1Gbps超の速度が確認できた。いずれのテストでもほぼ2倍の速度が確認できており、Wi-Fi 6による高速化の恩恵がはっきりと見えた。
またWi-Fi 6で最大2402Mbpsに対応するスマートフォンでも計測したところ、FAST.comで1Gbps超えの値が確認できた。試行ごとに速度にばらつきがあったものの、Wi-Fi環境やインターネット回線状況などが好条件で整えば、Wi-Fiでも実測で1Gbpsを超えられる。
有線接続では2.5Gbpsの規格と2Gbpsの良質な回線をフルに活かせることが確認できた。最近はPCゲームのダウンロードサイズが100GBを超えるものも出てきており、最高速度が倍になるメリットはかなり大きい。
Wi-Fiでも1Gbpsを超える速度が出せており、Wi-Fi 6に対応する機器があるならONU側もWi-Fi 6対応にするメリットは大きいと言える。ONUを交換せずにWi-Fi 6対応のルーター(アクセスポイント)を増設するという手もあるが、この場合は旧型ONUの有線ポートが最大1Gbpsとなるため、ボトルネックになりうる。最高のWi-Fi環境を求めるなら「NSD-G1000T」の導入価値があると言える。
LAN内ももちろん高速化、安価になった2.5GbEを活用
Wi-FiルーターとしてのNSD-G1000Tの性能を見るべく、LAN内でのテストもしてみた。まずはHG8045QとWi-Fiの速度を比較した。
子機となるPCは160MHzの帯域幅に対応しており、最大リンク速度は2402Mbps。通信相手は2.5GBASE-Tで有線接続されたPC(「HG8045Q」では1000BASE-Tでの接続となる)。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。
HG8045Q | NSD-G1000T | ||
近距離 | 上り | 653.2Mbps | 923.1Mbps |
下り | 451.7Mbps | 838.2Mbps | |
遠距離 | 上り | 22.48Mbps | 30.13Mbps |
下り | 61.34Mbps | 37.31Mbps |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
近距離では、Wi-Fi 5からWi-Fi 6に進化した分だけ通信速度が上がっているのが確認できる。リンク速度からするともう少し速度が上がって欲しいところではあるが、特に通信周りの設定を調整することなく速度アップが実感できれば十分だろう。
遠距離に関しては、上りは順当に高速化しているものの、下りがやや速度が落ちている。可能な限り同一環境で比較しているつもりだが、遠距離通信では周辺の電波状況や遮蔽物の僅かな違いで通信速度が変わるため、一般家庭での検証だと結果が変動しやすい。
ただ検証データを細かく見ていくと、HG8045Qでは通信速度が断続的に0になるタイミングがあったものの、NSD-G1000Tではほぼ一定した通信ができていた。電波の到達距離にそれほど大きな差はなさそうだが、通信の安定性ではNSD-G1000Tの方が良さそうに見える。
安価に購入できる2.5GBASE-TのNASを接続、速度も向上
LAN内のテストとしてもう1つ、2.5GBASE-T対応のバッファロー製のNAS「LinkStation LS710D0201」を新旧ONUに直接つなぎ、Wi-Fi接続したノートPCから読み書きの速度をチェックした。
Wi-Fi 5と1000BASE-Tの組み合わせでは、シーケンシャルリードで約57MB/s、シーケンシャルライトで約87.3MB/sとなった一方、Wi-Fi 6と2.5GBASE-Tで接続したNSD-G1000Tでは、前者が約72.6MB/s、後者は約106.8MB/sと、それぞれ約2割ほど向上した。
なお、この環境でNASに加えて、PCも2.5GBASE-Tの有線LANで接続したいなら、NSD-G1000Tへ2.5GBASE-T対応のスイッチングハブを接続し、そこにPCやNAをつなぐ方法がおすすめだ。
NSD-G1000Tを利用していて、2.5GBASE-T対応の機器が複数あるなら、導入を考えるといいだろう。2.5GBASE-T対応のスイッチングハブは1万円以下で販売されているものもあるし、今回テストしたNASも17,000円程度で購入できる。
今回のようなONUを導入するタイミングで、2.5GBASE-Tの製品をそろえてしまう、というのもありだろう。
ホームセキュリティも強化! 「NUROスマートライフ」のさらなるメリット
ここまで、NUROスマートライフのオプション追加で導入されるソニー製ONUの話ばかりしてきたが、NUROスマートライフには、さらに別のサービスも付属する。
まずはIoTデバイスへの対応だ。例えばスマートフォンやリモコンキーで家の鍵を簡単に開錠できるスマートロック「Qrio Lock」では、通常は「Qrio Hub」というコアデバイスが必要になるが、NSD-G1000TにはQrio Hubの機能が内蔵されている。機材を別途用意する手間や場所が不要で、出費も抑えられる(「Qrio Hub」単体では9680円)。NSD-G1000Tは、ほかに室内コミュニケーションカメラやスマート家電リモコンのコントロールにも対応している。
Qrio Lockでは、鍵の操作をスマートフォンに通知する機能も利用できる。例えば、子どもが自宅に帰っているかどうかを仕事先で確認したり、遠方に住む高齢の親族の家への出入りを把握できたりする。
もし、鍵の開閉情報で何か気掛かりなことがあったときは、「セコム駆けつけサービス」が使える。セコムの対処員に自宅を訪問してもらい様子を確認してもらったり、自宅に帰る際に対処員と合流して一緒に帰宅してもらう、といったサービスが利用できる。30分ごとに5500円の利用料はかかるが、利用しない限り料金は発生しない。不審なことがあるときにだけ使える便利なサービスだ。
NURO光の下り最大2Gbpsコースを目いっぱい使いたい人は要チェック!
NUROスマートライフという名前だけでは、「ONUが最新規格に対応したソニー製のものになる」とは思わない読者がほとんどだろう。しかし、ソニー製ONUが必ず使えるというのは、性能だけでなく安心感の点でも大きなメリットがある。
2.5GBASE-T対応による通信速度の向上も素晴らしい。下り最大2Gbpsをうたっていても、NURO 光はベストエフォートのサービスなので、1Gbps近く出ていれば十分……と筆者も思っていたのだが、実際には文字通りに2Gbpsの通信速度が確認できてしまった。今までせっかくの回線速度を使い切れていなかったことに気付き、もったいなく感じるくらいだ。
速度向上の恩恵を受けるには、通信機器側も2.5GBASE-TやWi-Fi 6といった最新規格に対応する必要がある。最近は2.5GBASE-T関連の機器も安価になっているし、Wi-Fi 6に対応するPCやスマートフォンも増えてきている。通信規格を次のステップに進めるには、環境面からもにもいいタイミングと言える。
そして魅力的なのが、たった550円の月額料金を追加すれば済むこと。筆者で言えば、月額料金が2090円から2640円になるだけで、下りの通信速度が実質的に倍速化するのだから、ほかのインターネット回線と比べてもかなりお得なサービスに違いない。
ソニー製ONUが選べて、実質的な通信速度が上がり、IoT機器の利用やセコムのサービスも受けられる。NURO光の下り最大2Gbpsのコースを利用している方、これから導入したいと考えている方は、NUROスマートライフのチェックをお忘れなく。