【出雲弁記事】ちょっこ言わせてもらあけど、東京に「野焼き」が売っちょらんのはおかしいと思っちょったわね! どげんなっちょうやッ!! (方言の日)

ロケットニュース24

おっつぁん(佐藤)は上京して今年で18年になあわ。意外と遅い上京だったもんで、まだ20年もおらんけんね、東京人面しちょうけども。まだ地元(島根)におった時間の方がずっと長いわね。あと2年で上京20周年! だども2年後に50歳だと、やんなあが! ほんにけえ!!

でねえ、ふと思ったことがああわね。あだん、野焼きがないがん。東京に野焼きがないがね! どげんなっちょうかね! あふれえほど物がああにかあに、野焼きごときがないのはおかしいがん!! けえ!

・書いてみいだわ

そもそもなんでこぎゃん記事を書くことになったかっつうと、2月18日は「方言の日」らしいわね。で、なんぞ書くかなあって思っちょったら、編集長のGO羽鳥が……。


羽鳥「さっさん、いい機会だけん、出雲弁で記事書いてみいだわ」

っていわえけん。

佐藤「そげかね? ほんならちょっこ書いてみいわ」


ってことになった次第だわね。20年も東京におおに、島根にかええとたちどころに方言になあけんね。おらだけじゃないと思うけど、方言っておもっせえがあ。なんでだあか?


・野焼きとちくわは別物と思っちょったに

ほんで何書くかいなあ? って考えちょったら、野焼きのことを思い出したわね。ちょっこおっつぁんの昔話に付き合ってごしない。これ話さんと、野焼きの話ができんけん。まあ聞いちょってごしない。


おらはね、かまぼこメーカーのある町に住んじょったわね。「寿隆蒲鉾(じゅたか)株式会社」っていう1926年創業の会社でね、幼少の頃から割とかまぼこは身近にあったわね。毎晩とまでは言わんまでも、夕食にはかまぼこがあったやな気がすうわ。

そんでね、かまぼこっつってもまあいわゆる紅白のやつも食べるだどもね、「野焼き」っていってちくわをぶっとく(太く)したようなヤツだったんだがんね。ガキの頃はそれがかまぼこだと思ちょったわ。

紅白のやつよりも、おらのなかでは野焼きが断然メジャーだったわ。今風にいえば「オオタニサン」みたいなやなもんだわ。それが「今風」って表現にふさわしいかわからんだどもね(笑)。


子どもながらに「ちくわ」と「野焼き」は別物だと考えちょったけど、年をかさねえごとにどうやら仲間らしいってことがだんだんわかって来たわね。ちなみに正式には「あご野焼き」っつう商品名でね、あご(トビウオ)のすり身を棒状にして焼き上げたものになあわ。

あだん、あげだわ! 工場見学したわ。ベルトコンベアかなんかで棒状のすり身がくるくる回って焼き上があとこを見たかもっしぇん。


・どこぞにないか知らんかいね!

それから30年以上経って、今、出雲弁記事を書く段になって、ふと頭を野焼きがよぎったんだがん。


まい野焼き、食えんだあか~。どこぞで売っちょらんかいね~……


そげ思って探すがん! でも東京にないがね!! 伊勢丹にいっても三越にいってもないがん! どげんなっちょうや!!

島根とは人口も商業規模も比べもんにならんほどまげにデカイに、野焼き1本ないなんてしぇたもんだわ! なんててかんてて言われんやなわ!!


大きいスーパー行っても、かわいげな細いちくわしか売っちょらんしね。こうじゃないわね。ちくわ1本食っても腹は起きんかもしれんけど、野焼きは1本食ったら腹がはつけえやなわ。ほんにけえ

野焼きを知らん人は人生損しちょうよ。魚のすり身の美味いやつを知らんのだけんね。気になあならいっぺん通販で買ってみっさい。がいにまいけん。ごっつおだで。もう普通のちくわじゃ物足りんくなあけん、試してみいだわ。

都内のどこぞで野焼きがあったら、おっつぁんに教えてごしない。飛んで買いに行くけん。あんま遠方だといけんけんね! できるだけ近場で教えてごしないよ! たのんよ!! よげにしてごさっしゃいや!


・解説

出雲弁と一口にいっても、その言葉が使われている範囲は広く、なおかつ地域によって言葉のイントネーションが異なっている。松江市に住んでいた私の経験では、市内でもいくつかの訛(なま)りに分かれていた。

全般的に抑揚が平坦な出雲弁において、たとえばある地域では語尾が尻上がりになったり、別の地域では特定の言葉の使い方が異なっているケースも。たとえば「行く」と「来る」を逆に用いる場合もあった


例:訪問の意志を伝える会話
「わしが行くけん」 → 「わしがくう(来る)けん」

そのほかにも「私」を意味する「われ」が逆のパターン。


例:相手をとがめる会話
「お前は何考えちょうや!」 → 「わー(われ)は何考えちょうや!」


また県の東・西で言葉のニュアンスが微妙に異なっており、西に行くほど広島・山口の言葉の影響を感じ取ることができた。本稿でつづっている私の出雲弁は、それら地域別の影響が混ざり合ったものであることをご理解いただきたい。ではまた出雲弁記事でお会いしましょう。

ほんなら! べたべただんだんね!


参考リンク:寿隆蒲鉾株式会社
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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