キャッシュレス促進? 硬貨流通減 – 元官庁エコノミスト

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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、日銀が取りまとめた1月の貨幣流通額は前年同月比0.1%減の5兆394億円と、2012年5月以来10年ぶりに前年割れとなりました。朝日新聞のニュースで私は見ました。これに関連して、ニッセイ基礎研から「硬貨の流通高が10年ぶりの前年割れに」と題するリポートが明らかにされています。コインの流通残高が減少した要因はいろいろとあるのでしょうが、3連休初日ののんびりした話題として簡単に取り上げておきたいと思います。

まず、図表の順番は逆になりますが、ニッセイ基礎研のリポートから図表8のゆうちょ銀行における硬貨の預け入れ手数料のテーブルを引用すると上の通りです。ゆうちょ銀行から大量のコインを預け入れる際に手数料を導入するという方針は、昨年2021年7月に公表されたんですが、実際に実施される今年2022年1月の導入までの間に情報提供や報道がなされたこともあり、手元にコインを保有していた家計や企業などが手数料導入実施前にコインの駆込み預金を行ったことから、コインの流通残高が減少した可能性は十分あります。加えて、コインを主とした貯金箱を使う習慣を止めたご家庭もあった可能性も否定できません。これらのコイン貯金箱に溜まったコインを使ったか、あるいは、預貯金したか、いずれにせよ、流通残高を減少させる方向であったことは確かです。

その結果として、通貨流通高の伸びがどうなったかについて、ニッセイ基礎研のリポートから図表1を引用すると上の通りです。冒頭の繰り返しになりますが、今年2022年1月のコインの流通残高が前年同月比で▲0.1%減、2012年5月以来ほぼ10年ぶりの減少を記録しています。高額コイン、というか、500円コイン以外はすべてのコインが減少を示しているようです。

大量のコイン預入れに手数料がかかるとすれば、素直に考えれば、キャッシュレス化が進む可能性があります。私なんぞは、1円玉とか5円玉のコインはついつい溜まってしまいがちなので、意図的に手放そうと律儀な使い方をするのですが、上の倅は極めてズボラな性格で、いっしょに暮らしていた大学生のころには少額コインは箱に溜め込んでいました。もしも、コイン、特に少額コインが「グレシャムの法則」に従って流通から駆逐されるとすれば、上の倅のようなズボラな個人のところに小銭が滞留する可能性もあります。