『絵に描いた餅』しか食べないことで生活の質が上がった

デイリーポータルZ

「絵に描いた餅」とは何の役にも立たないという意味の言葉だが、絵に描いたものしか食べない日々を続けたら、レコーディングダイエット的な効果があるのでは無いか。
 
正月太りを回避するために、年末年始に1週間やってみた。

初日の朝ごはんに3時間かかる

昼の12時に目を覚ました私は、めちゃくちゃ喉が乾いていた。
とりあえず水が飲みたい。

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まずは一杯の水

慣れていないせいもあり、下書きだけでなんと15分くらいかかってしまった。

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色もつけます。早く水が飲みたい
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もっとシンプルなコップにすればよかったと描いてから思った

なんの変哲もない水の絵だが、全部描き終わるのに30分かかってしまった。
 
水を飲むために30分……!
やったことないけど、井戸から汲んでくるぐらいの時間がかかっているのではないか。
この先大丈夫なのか……!?

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水のありがたみがいつもの10倍

とりあえず水を飲んで乾きを満たしたので、次はご飯をたべよう。
 
容器の造形も、描くスピードに影響するということがわかった。
出来るだけシンプルなお皿によそおう。

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朝ごはんは納豆ごはんとローストビーフ(クリスマスの残り)

なかなか思うように描けず、下書きを何度も消しては描き、消しては描き、をくりかえす。

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できた……!!
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ようやく食べられる……

信じられないが、朝ごはんを全部絵に描いて食べ終わるまで、合計3時間かかった。
朝食を食べるだけなのに、高級フレンチコースのディナーより時間がかかっている。
 
1日3食なら9時間かかる計算だ。
本当に1週間続けられるだろうか……。
 
いつもは食後のお菓子を食べているが、疲れたので描くのをやめた。
ハードめの、レコーディングダイエットだ。
 
とりあえず水を自由に飲めないのは命に関わる気がしたので、まずウォーターサーバーを描いて水を確保することにした。

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生きるためにウォーターサーバーを描いた日

シンプルな形なので、ものの数分で描けた。
気づいたけど、朝食の絵をもっと小さめにすれば早く描けたのではないか……?
今後、時間がない時は小さめに描くことにしよう。

外食で頼むメニューがちょっと変わる

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閉店間際に行った夜のサブウェイでも、もちろん絵を描く

メニューを見ると、自然と描きやすいかどうかで選んでいる自分がいた。

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普段ならぜったいセサミを選ぶけど……!!

この世には2種類の食べものがある。描きやすいか、描きにくいかだ。
 
「描きやすそう」という視点から食べ物を見ると、ほんの少しだけいつもの自分と違うものを選ぶ。

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結局一番プレーンなパンにした。閉店間際だったので、かなり急いで描く

外食するときは時間が無い場合が多く、スピードが重要だった。

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めちゃくちゃ真剣な顔で描いている。予定が差し迫ってきており、絵だけ店で描いて、食べながら移動することもあった。

早く描くコツは、出来るだけシンプルな見た目&3色ぐらいで描けるメニューを選ぶことだ。

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デビューしたての漫画家ぐらい日に日に画風が変わる。だいぶこなれてきた

いろいろ試した結果、

①    ペンで輪郭を描く
②    水彩色鉛筆でシャシャっと軽く色つける
③    水を含んだ筆でなぞる

という順番が一番早く描ける方法という結論に至った。 

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意外とみんな手伝ってくれる

年末年始は忘年会や新年会があったため、描くものがかなり多く、
みんなが手伝ってくれた。
 
それまでめちゃくちゃ盛り上がっていても、描き始めると、水を打ったように静かになる。

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忘年会にあるまじき静寂
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デジタルで描いてくれた友人もいた

飲み始めたばかりなのに、終電を逃して惰性で飲み続けるときぐらい静かだ。
この飲み会大丈夫なのか……?と、ちょっと不安になった。

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その間私は自分のビールを描く。パッケージが結構大変なのだ
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みんな時間をかけて、しっかり描いてくれた。それぞれ個性が出ている

手分けして描くとやっぱり早いな〜、と思っていたとき、あることに気づいた。

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ちょっとまって!テーブルの上に枝豆ないんだけど!

特にそこに無かったメニューを描いた先輩がいた。なんで!?
食べたいという願望……??

これは、どうすればいいんだろうか。

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結局枝豆を用意した

取りあえず、描かれたものは全て食べなきゃいけないルールで進めることにした。
まさかテーブルに無いものを描かれるとは……。そういうパターンもあるのか。

子どもに描いてもらう

絵を描いていると、普段は人見知りして話さない友人の子どもが近寄ってきた。
 
「今絵に描いたものしか食べられないんだよ〜」と説明すると、
「じゃあ僕が描いてあげる」と言ってくれたのだ!

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私の頼んだランチ全て絵に描いてくれた。食後のコーヒーもゲット!

「もっと描きたい!」と言われたので、晩ご飯に食べるものを事前に書いてもらうことにした。

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もくもくと描いていく。キャビアとか描かれたらどうしよう

完成した絵がこちら。

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お寿司だー!!!!

彼の中で、からあげはお寿司のジャンルに入るのか。
紙が白いから、シャリは描かなくていいとのことだった。
 
めっちゃいい絵……!!これは、絶対部屋に飾ろう!!

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早速スシローへ行った。普段なら絶対頼まないラインナップだ

回転寿司で唐揚げなんて生まれて初めて食べたけど、結構おいしかった。
今後も選んでしまうかもしれない。

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イカも食べたくて、追加で描く。「寿司屋で絵を描いている人初めて見た」と隣の人に言われた
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スケッチブック1冊分の絵

1週間描き続けたら、スケッチブック1冊分になった。

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絵の大きさによって、余裕ある日とない日がはっきりわかる
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昨日何したかさえすぐ忘れるのだが、食べ物の絵をみると鮮明にその日を思い出せる

最初こそ3時間かかっていたが、だんだんと慣れて、描くのが早くなった。
最後の方は、下書きしないでも迷いのない線を描けるようになり、1食5分くらいで描けるようになった。
 
さて、結局のところ、絵に描いた餅しか食べない生活は正月太りを回避できるのか。

体重を測ってみると、0.3kgぐらい増えていた。微妙……!!

でも友人は3kg太ったらしいので、多少のレコーディングダイエットの効果があったと考えていいのかもしれない。
 
1週間続けてみたら、少しだけ生活の質が向上した気がするので、気づいたことを紹介していきたい。

1、  朝ごはんを描くために早く起きる

基本的に出かける15分前に起床していたのだが、それだと絵を描く時間がないため、
朝食抜きになってしまう。

朝ごはんを描くために、出かける30分前に起きるようになった。

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一度寝坊してしまい、朝食抜きで水族館に行った。お腹が空きすぎて、シードラゴンちょっと美味しそうだなと思ってしまった

絵を描くという朝活ができるようになった。

2、市販お菓子を食べなくなる

お菓子はパッケージを描くのに結構時間がかかる。
その割に中身が少ないので、コスパが悪く、描いている期間中、ほとんど買わなくなった。

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袋から出せばいいんだけど、それはそれで「ポテチ感」を出すのが難しかったりする
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最終的には、お腹が空いたらお菓子ではなくゆでたまごを食べるようになった。めちゃくちゃ簡単に描ける

3、盛り付けを気にし始める

普段はスーパーでお惣菜を買っても、そのままプラスチックの入れ物で食べていたが、絵的にはお皿に盛った方が見栄えがいいため、移し替えて盛り付けを気にし始めた。

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元旦に食べた鯛。めでたい柄の紙を敷くと、さらに映える

色合いも気にして、納豆にネギを乗せ始めたりもした。

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緑が入ってくるだけで、絵としてグッと良くなる

ネギを乗せるなんて、めちゃくちゃ余裕あるときにしかやらない行為だったけど、毎回乗せるようになった。
 
いい絵を描くためには、いい食事を取らなければいけない。
1週間を通して、少しだけ生活の質が向上した。

一番時間かかったのはおせち

お正月は、友人と一緒におせちを作った。

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欲望のまま、お重に詰め込んだオリジナルおせち。お菓子の段もある
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友人達に1段ずつ描いてもらう。試験会場のような静けさ

二人とも絵を描く活動をしているため、かなり真剣だ。
お腹空いているはずなのに、誰も「描き終わった」と言わない。
 
このまま新年会が終わるかと思われたため、時間を決めて切り上げることにした。

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結局1時間以上かけておせちを描いてくれた

空腹なのが功を奏し、かなりおいしそう!
そのあと、描いた絵を鑑賞しながら飲むという優雅な新年会が始まった。
 
絵を描く飲み会もなかなかいいものだ、と思った。

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