TP-Linkから発売された「Tapo C210」は、Amazon.co.jpの2022年1月25日時点での販売価格が4445円となるリーズナブルなパンチルト対応のネットワークカメラだ。本来はスマホアプリで利用する製品だが、今回はPCやNASから利用する方法を紹介する。
サポート外だがしっかりONVIF対応
2021年、ONVIF対応予定と発表されたことをきっかけに、とある小型低価格のネットワークカメラのクラウドファンディングを支援したが、結局、ONVIF対応は見送りが発表され、代替えで対応表明されたRTSPサポートも不完全となってしまった。
代わりに、リーズナブルで、ONVIF対応で、しかもパンチルト対応のネットワークカメラはないかと探していたところに登場したのが、今回紹介するTP-Linkの「Tapo C210」だ。
従来モデルの「Tapo C200」も存在するが、C210ではカメラ部分が強化され、3MPでの撮影に対応したほか、256GBのmicroSDカードにも対応するなど、若干の機能強化が図られている。実売価格もTapo C200の4148円に対して4445円と差はわずかなため、お買い得なモデルとなっている。
基本的にはスマートフォン向けの「Tapo」アプリで使用するネットワークカメラとなっており、簡単にセットアップできるだけでなく、映像の確認や録画、カメラのマイクとスピーカーを使った通話、映像検知による音と光による警告などが行える。
さらに、Amazon Echo Show 5で映像を確認できたり、有料のクラウドサービスと組み合わせることで、クラウドレコーディングやAIを利用した人物検知や赤ちゃんの泣き声検知ができたりと、かなり多機能な製品になっている。
そして、個人的に最も重要なONVIFにも、同社のサポート外ながら対応しており、汎用性の高いことも特長となる。
ONVIFはOpen Network Video Interface Forumの略で、PCから利用したり、NASと連携させたりするためのネットワークカメラの標準規格。メーカーやモデルの違いを考慮することなく、ネットワークカメラの基本機能に対して、共通の方式でアクセスすることができる。
要するに、ONVIF対応であれば、汎用的なネットワークカメラとしてNASやアプリなどから制御できることになるわけだ。
Tapo C210は、ONVIFのプロファイルSに対応しており、映像のストリーミング以外に、PTZ制御などにも対応している。
前述したように、ONVIF経由でのサードパーティ製ソフトウェアからの利用は、同社のサポート外となっており、動作保証や問い合わせなどは不可能だが、こうした機能が搭載され、ユーザーに開放されているのは、非常にありがたいことだ。
SynologyのNASから利用する
では、具体的にどのように利用するのかを見ていこう。
まずは、NASからの利用方法を見てみる。SynologyやQNAPのNASは、ネットワークカメラと組み合わせた監視用途での利用が想定されており、NAS向けのアプリを利用して、カメラの映像をライブで表示したり、録画した映像をNASに保管したりできる。
今回は、Synologyの「Surveillance Station」から、Tapo C210を利用できるようにしてみた。
SynologyのSurveillance Stationでは、正式にサポートされているのは旧機種のTapo C200までとなるが、C210も利用可能だ。
と言っても、少し工夫が必要となる。
正式サポートされている従来のC200もそうだったのだが、Surveillance Stationのカメラ一覧から機種を選択すると、パンチルトの機能が無効化されてしまうため、登録時にブランドで「ONVIF」を選択して登録する。
前述したように、TP-LinkのTapoシリーズは、ONVIFの「プロファイルS」に対応しているため、ハードウェア側がPTZをサポートしていれば、ONVIFでこれらの機能を利用できる。
あらかじめ、Tapoのアプリを利用してカメラのユーザーとパスワードを登録しておき、その認証情報をSurveillance Station側に設定してカメラを登録する(自動検索で一覧から選択可能)。
なお、ONVIFを選択すると接続時の「テスト接続」で映像がプレビュー表示されないが、実際には問題なくライブビューも録画もできるので、ONVIFを選択して登録するといいだろう。
PCから利用する
TP-LinkのTapoシリーズは、スマホアプリから利用することが前提となっているため、標準ではPCから映像を見るためのソフトウェアは提供されない。
このため、PCから利用したい場合もONVIF経由で利用することになる。
ソフトウェアにはいろいろな選択肢があり、ストリーミングなどで多用されるOBSでもRTSPで映像を受信することができるが、今回はiSpyConnect.comの「Agent DVR」を利用する方法を紹介する。
アプリ版である「iSpy」の方が有名だが、Agent DVRはPCのサービスとして動作するプログラムとなっており、ウェブブラウザーを利用してアクセスする方式となっている。リモートからの利用は有料だが、ローカルでの利用は無料となっているので、PCからTapoの映像を参照したい場合には最適だ。
なお、上記サイトからダウンロード可能なiSpyでも、Tapo C210を利用して映像を表示することができる。
使い方としては、Agent DVRをインストール後、ウェブブラウザーでAgent UIを表示し、デバイスの追加を実行する。
このとき、前述したSynology製NASで表示したときと同様、Agent DVRのリストからTP-LinkのTapo C210を選択すると、パンチルトが利用できないため、必ずONVIFで登録する。
先ほどと同様に、あらかじめカメラにユーザーとパスワードをしておき、その認証情報やサービスURL(http://192.168.1.38<カメラのIPアドレス>:2020/onvif/device_service)を設定する。
Live URLに関しては、「Get Video URLs」ボタンを押すことで、ONVIFの情報から自動的に取得できる。これでPCからもウェブブラウザーを利用して簡単にTapoの映像を確認したり、パンチルト機能を使ってカメラを操作したりできる。
ただし、Agent DVRはアンインストールが手動となっており、不要になった際に面倒となる一面もある。具体的には、サービスを手動で停止し、インストールフォルダーのバッチファイルを使ってサービスを削除、続いてWindowsファイアウォールのルールも削除し、最後にインストールフォルダーを削除する必要がある。
こうした手間が気になるなら、NAS経由で利用した方が楽だろう。
ONVIFで使えない機能はアプリで
このように、サポート外ながらONVIFを利用することで、TP-LinkのTapo C210をPCやNASから利用することができる。
ただし、ONVIFでは、カメラの機能のうち使えるものが限られる点に注意が必要だ。映像のライブ表示やパンチルト、録画、検知(アプリ側がサポートしている場合)などは可能だが、カメラのスピーカーを利用した通話などはできない。
また、カメラを天井に取り付けた際などに映像を反転する機能も、アプリ側でサポートしていないと利用できない(SynologyのSurveillance Stationでは反転表示がグレーアウトするため、Tapoアプリ側であらかじめ反転しておく必要がある)。
こうした状況なので、アプリとの併用は不可欠となる。とはいえ、NASの潤沢なストレージを活用して映像を大量に保管できたり、手元のPCから手軽に映像を参照したりできるのは魅力だ。Tapoを購入した際は、試してみるといいだろう。