行きつけの魚屋にて買い物をしていたところ、変な魚を見つけた。何が変ってとにかく身体が細長く、その中でも特に顔が長過ぎるのだ。全長の3分の1ほどあるんじゃないだろうか。
大将に聞くとコイツは『ヤガラ』という魚らしい。
世の中にはまだまだ見たことがない魚がいるもんだな……と感心しつつ夕ご飯にいただいてみることにしたら、見かけによらず絶品! 実は料亭で使われることも多い高級魚なのだそうだ!!
「ヤガラ1匹お願いします」
筆者の注文に「あいよ」と袋詰めをしてくれた大将なのだが、ヤガラがあまりにも長過ぎたため袋に収まりきらなかった。
「つ」の字型に曲げてもビニール袋から口がはみ出たため、上からもう1枚袋をかぶせて濁している。ここまで長い魚は初めて買ったんじゃないだろうか。
・口はめちゃくちゃ小さい
ヤガラは大きいものでは2m近くまで成長するということなので、60cmほどしかないこの個体はまだまだ子供なのかもしれない。しかし見慣れたシンクの中に置いてみると、改めてその身体の特徴に驚かされる。
なにより目を惹くのは、この長~い嘴(くちばし)のような部分だ。
中国ではくちばしを漢方薬の材料に使うらしい。
これだけ長さがあるのだから、さぞかし立派で大きな口なのだろうと手でこじ開けてみたところ……
えっ!? ちっちゃ!!!!
魚は口の形を見ればなんとなく食生活がわかる。草食の魚であれば口はもっと平たく、藻などをこそぎ取りやすいような形をした歯が並んでいるはずだ。
──調べてみたところその予想が当たり、ヤガラは肉食の魚。藻の中に潜む小魚を吸い込むようにして捕食するのだという。つまりくちばしのような部分はストローのようなものなのかもしれない。それにしたって……
もうちょっと大きな口を持っても良かったと思うけどな。
この角度から見たら、まるで映画『エイリアン』に出てくるエイリアンのインナーマウスだぜ。
尾の中心には、海老の触角のような長い線状の器官が伸びている。なんのための器官なのかは調べてもわからなかった。
・ヤガラを捌いてみる
まな板からはみ出るため、自宅で捌くにはちょっと手間がかかった。
①まずは腹側から、頭と胴の境目あたりに包丁を入れる。
②頭の左右に固い骨入っているため、切り込みを入れた後、
③背側に包丁を入れ、頭を切り落とす。硬い骨があるため、エイヤ! とぶった切った。
頭だけでこんなに大きかったのだ。
④腹を開いて内臓を取り出して洗う。あとから知ったのだが、ここに詰まっている脂はお吸い物にすると絶品だったらしい。残念!
全部洗い出したところ、シンクの中がギトギトになってしまった。
⑤続いて3枚におろすのだが、
身体が長く、「つ」の字型に固まってしまっていたため大変捌きにくい。まな板に収まる長さに切りわけた上でおろした方が簡単だっただろう。
⑥腹骨をすき取る。
これも腹部分が長いため、難しかった。
⑦最後に皮を引き、1口サイズに切りわければ……
ヤガラのお刺身の完成だ!!
・上品でサッパリした絶品刺身
醤油とわさびでいただいたところ、サッパリとした上品な旨味が感じられた。
他の魚で例えるならばタイに近いような気もするのだが、より歯ごたえがあり、繊細な甘さと旨みがある。臭みや癖がなく、ただ捌いて並べただけでこれだけの味が出るというのは素晴らしい。
実はヤガラ自体はそこまで珍しい魚ではないが、特に大きいサイズのものは料亭で使われることが多く、市場には出回りにくいのだそうだ。そもそもこんな見た目の魚を売ったとしても、一般人で買う人は少なそうだもんな。
ということで、ヤガラは見かけたら「買い!」な絶品魚であった。ちなみに今回購入した価格は660円。お店によって変動するだろうが、もうちょっと高くなりそうな気がする。
筆者のように丸ごと捌こうとせず、まな板のサイズにあわせて分割してしまえばそれほど苦労しないはず。もしも魚屋で見つけた方は外見に惑わされず是非チャレンジしてみて欲しい。後悔はしないはずだ!!
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.