カメラでしょうか?スマホでしょうか?街歩き写真で比較してみる

デイリーポータルZ

スマホ内蔵カメラの進化がすごい。

もはや高くて重いカメラなんていらないんじゃ…って気もするけど、カメラ大好きマンとしては、相変わらずカメラ2台で撮り歩いた写真を記事にしているのである。

ではスマホの写真とカメラ(ミラーレス一眼)の写真はどう違うのか。

スマホの性能に驚きながらも、カメラで撮れる写真の良さも伝えたい…という気持ちでシチュエーションにわけて比較してみた。

そして具体例として、ひとつの街歩き記事(「東京屈指の観光地・深大寺はその周辺の高低差も楽しい」)をスマホ写真/カメラ写真の2パターンで書いてみた。

同じ題材でもこんなに印象が変わるんだ…!という超ニッチな比較をこれからしていきます。

シチュエーション別、カメラでしょうか?スマホでしょうか?

第1問…明暗差が大きい場面

早速だが、どちらかがスマホ写真で、どちらかがカメラで撮った写真だ。
(なお、縦横比はカメラの3:2に合わせ、サイトの規格の横640ピクセルにリサイズしている)

状況としては、左上から太陽光が差し込み、非常にまぶしい中で蕎麦屋の外観を撮った写真だ。

いきなり難しい問題を出して申し訳ないのだが、自分でもこんなにスマホって綺麗に撮れるのか…!とビックリした。

①、②、どちらがスマホでどちらがカメラか。それではシンキングタイムをお願いします…!

 

ちなみに今回使う機材。話をシンプルにするためすべてjpegで撮っている

 さて、正解は……!

※正解発表では常にスマホを左、カメラを右に置いています。①②の番号が問題と対応しています。 

おわかりだったろうか。正直ほとんど差がないように見える

こういう明暗差の大きいシーンって、カメラの性能差が素直に出やすい。スマホのような小さなカメラは苦手なはずなのだ。

でも、最近のスマホはAIがいい感じに仕上げてくれるのである。

どうやっているのか。

次のスマホ写真をみて欲しい。

これも屋外と屋内の明暗差が大きい場面だ

スマホ写真に慣れた目からすると何の変哲もなく見えるのだが、

iPhoneのスマートHDR(ハイダイナミックレンジ)というデフォルト機能をOFFにすると……

室内に明るさを合わせると外が白く飛んでしまうし、
屋外に明るさを合わせると、中が暗くつぶれてしまう
iPhoneいわく、スマートHDRとは「異なる露出(※明るさ)の写真のベストな部分を1枚の写真にインテリジェントに合成する機能です」なのだそうだ。

このHDR機能、実は多くの場面で気づかぬうちにバリバリ効かせてくれているようだ。

だから、最近のスマホ写真は人間が何も考えなくても綺麗に撮れるのだ。

カメラで撮る場合は、素のままでもある程度の明暗差には対応してくれるし、余裕のある自然な写真が撮れる

もちろんカメラでも設定すればHDR写真を撮ることができるのだが、 実際のところそんなに使う場面は少ない。

スマホのスマートHDRも万能ではなく、効きすぎるとCGっぽくなる場面もある

それでもスマホは、AIが思うベストな写真を常に作り出してくれる。ちょっといじらしくなる。

 

第2問…遠くのものをクローズアップしたい場合

お寺の本堂の彫刻に注目したかった写真だ

どこまで望遠で撮れるかという比較だ。今度はわかりやすいかと思うので、さっそく解答にいきたい。

↓ 

望遠レンズがついていないiPhone12にしては頑張ってると思うが、カメラにはまだまだ及ばない

 こうしてクローズアップして撮れると、記事の内容にも幅が出せる。仲良くならずとも猫の表情を撮れたりする。

〇〇mmという数字が大きくなるほど、遠くのものを大きく写すことができる

 ちなみに、最新のiPhone13proには77mmという望遠レンズがついているが、カメラの一般的な望遠ズームレンズは300mmくらいまでズームできるため、さらに4倍くらい大きく撮ることができる。

広角と望遠だと遠近感が大きく変わってくるため、坂を急に見せたい時などは望遠で撮る

コロナ禍の自粛生活の中で「街にこんなに人出が…!」みたいなニュース画像が話題になったが、あれも望遠レンズを使うことでより混雑を強調できるのだ。

なお、広角レンズに関してはスマホは超優秀である。カメラのレンズでスマホ以上の広さを撮ろうとすると10万以上のレンズを買わなきゃ…となる

 

第3問…綺麗にテーブルフォトを撮りたい場合

自然光が差し込む喫茶店でテーブル上のものを撮った写真だ

これもわかりやすいのではないかと思う。

では正解は……

カメラの方が画角が狭いため、コップの形が歪まずきれいに出る。また、奥にいくにつれ自然にボケていく

こういう写真はカメラの方が得意なのだ。高いカメラ/レンズになるほど、薄暗いところでも雰囲気のある写真が撮れる。

最近はスマホにもポートレートモードという人工的にボカす機能もあるが、まだまだ完璧ではなく使いどころは人間が考えないといけないと思う。

 

第4問…季節感や空気感を伝えたい場合

秋が終わり、冬の早朝の寒々しい空気感を出したかった

 こちらはどうだろうか。正解は……

スマホは四季を通じて空が真っ青になる

第3問と同じように、外で撮るにしてもカメラの方がその場の空気感みたいなものを情緒豊かに撮ることができると思う。

スマホは良くも悪くもクッキリハッキリとAIが仕上げてくれる。

(ここでは詳しくは触れないが、スマホでも”raw”というファイル形式で保存すると、こちらの思うままに加工しやすい。ただ、個人的には手間を考えるとスマホでrawで撮るならカメラを持っていくかな…と思う。)

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ここからはスマホ/カメラ写真をつかって実際に記事を書いてみます…!

スマホとカメラの写真の違いを、実際に500字くらいの街歩き記事にして試してみたい

ここまで読んでくれた読者の皆さんも、今から同じネタの記事を2回読まされるのか…!とビックリしてるかもしれない。

ただこれ、ずっとやってみたかったのだ。

結果、同じ題材でもこんなに印象が変わるんだ…!という発見があった。

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休日は参拝客で賑わいを見せる深大寺

東京屈指の観光地である深大寺をご存知だろうか。

参道に軒をつらねる蕎麦屋や、国宝の仏像などで有名なお寺だ

23区外にあるお寺としては、新宿駅から最寄りの調布駅まで約20分とアクセスもよい。

駅からはバスで行く人が多いけど、歩いて向かった方がずっと楽しいのだ。

駅からは約20分。「深大にぎわいの里」という市場の横を通り…
ちなみにこの市場も、”ふれあいミートステーション”からハーブカレー屋まであって非常に楽しいのだが、またの機会に。
春には桜並木の綺麗な野川を越えると…
深大寺南参道の坂道につく

バスだと西参道から入って行くため気づきにくいが、歩きだと国分寺崖線(通称:ハケ)と呼ばれる魅力的な高低差をフルに体感できる。

この楽しい(激しい)坂道を上り、
さらにまっすぐに行き、
すこし下るとめでたく深大寺に到着する

…のだが、ここでちょっとだけ時間を巻き戻したい。

さっきの坂道を左に行ってほしいのだ

この先に、地元民しか知らない見晴らしの良い場所がある。

家並みに沿って歩くと、急に視界が開ける場所にでる
おわかりだろうか
はっきりみえる!

お寺にお参りし、蕎麦を食べ、富士をみる。まさしく江戸の観光地って感じだ。否が応でも満足感は高まる。

さらにその脇には坂道ファンなら見逃せない急坂がある
下から見上げるとこんな感じ。うねっているところも古い道らしくてポイントが高い
坂道ファンなら一度下ってまた上ろう
そんなこんなで疲れたら、深大寺参道にある「曼珠苑」でお汁粉を食べるのもよい。素朴な草餅がおいしい

さて、一息ついたら、さらにもう少し足を伸ばしたい。

国分寺崖線は野川沿いに連なっているため、この先も楽しい高低差が続いていく

ちなみに、野川は多摩川に流れ込む支流であり、国分寺崖線とは多摩川が10万年以上の歳月をかけて武蔵野台地を削った跡だそうだ。

立川市から大田区まで、約30kmにわたって延々と高低差が続いている。

住宅街もダイナミックである

5分ほど川沿いに歩いた先に、さらなる穴場の見晴らしスポットがある。

川沿いから北へ入ると唐突に大階段があらわれる
上りきった先には…
ゴリラが出迎えてくれている

ここは大沢みはらし児童遊園という公園なのだ。

ゴリラと一緒に富士山を眺めよう
この公園、入り組んだ場所にあるため人がほとんどいない。何度きても新鮮な気持ちになる場所だ
フェンス越しにお稲荷さんの小さな祠もあって、よい雰囲気
さらにもう一つ先の坂道には高低差をいかした「首都防衛高射砲陣地跡」なる史跡もあり、なかなか奥深いスポットだ

単体でも十分魅力的な深大寺だけど、せっかく来たのなら周辺も散歩してみたら楽しさも倍増するよ…と近くに住む人間としては思うのである。

深大寺にはこんなかわいいやつもいるよ

……ということで、これがスマホバージョンである。

まとめは後でやるとして、次はカメラ2台を首からぶら下げて撮った方の記事だ。

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東京では浅草寺についで古いとされる深大寺。古来よりたくさんの人が参拝する天台宗別格本山である
大寺院らしい立派な唐破風と正月飾り

この深大寺、国宝の仏像や軒を連ねる蕎麦屋、隣には植物園、さらに温泉まであり盛りだくさんな観光地でもある。それでいて新宿から電車で20分とアクセスが良い。

ちなみに去年のNHK「ゆく年くる年」はここ深大寺が関東代表だった
そんな深大寺だが、地元民としてはもう少しだけ足を伸ばして欲しいスポットがある

深大寺の創建にも関わる、国分寺崖線と呼ばれる高低差が楽しいのだ。

南参道はこんな急坂を登っていく
丘上のカトリック修道院を横目に…
坂を下ったちょっとした谷間に深大寺はある
崖があるからこそ、至るところから綺麗な湧き水が湧いている
深大寺は深沙大王(西遊記の沙悟浄のモデル)という水にまつわる神を祀った寺なのだ

深大寺は奈良時代創建と言われているが、それもこの地形と豊か自然があったからこそなのだろう(ここらへんの話は公式HPに詳しい)。

この崖下の伝説も非常に興味深いのだけど、ここは崖上に話を戻したい。

南参道の坂を登った先で、左へ曲がってみよう

崖があるということは、見晴らしのよい場所もあるかもしれない。

あつらえたかのように空き地がある
この見晴らしのよさ!
東京からでも空気の澄んだ日ならこれだけ鮮明に見えるのだ
さらに、この脇にもたいへん魅力的な急坂がある
波打つアスファルトに蛇行した道形。古くからの自然な坂道のようだ
ロマンあふれる急坂である

このあたりは古くからの町割りなのか、脇道や抜け道も多く、ちょっとしたワクワク感が味わえる。

こんな細い通路の先も深大寺へとつながっている
歩き疲れたら参道にある「曼珠苑」で一息つこう

ここの熱々のお汁粉、素朴なよもぎ餅がたいへん美味しく、冷えた体に沁みました。

冬の日は短い。傾きはじめる前にもう少し歩きたい
今度は西参道から大通りへでよう
少し下ると多摩川の支流である野川にぶつかる。国分寺崖線はこの野川に沿って続いているのだ

水源は国分寺と非常に近く、多量の湧水を集めて流れるため都市河川とは思えない透明度を誇っている。

そのため生き物も結構いるのだ

そんな野川沿いを西へ5分ほど歩くと、さらなる穴場見晴らしスポットがある。

左は公園へ、真ん中は祠へ、右は民家へと分かれる急階段がある
のぼった先には…
ゴリラが佇んでいる
この崖上は大沢みはらし児童遊園というれっきとした公園なのだ

でも立地がわかりにくいのか誰もいないことも多い。ゴリラもすこし寂しげな様子だ。

でもその分、この見晴らしを独り占めできる。手前はラグビーワールドカップなどを行った味の素スタジアムだ

何度きてもささやかな感動のある、良い場所だ。

ただ、こんなピースフルなスポットのすぐ近くには…

首都防衛高射砲陣地跡なる看板が。どんぐり山とのギャップがすごい

戦時中の砲台跡である。仰々しい名前をつけたけど結局使われなかった…みたいなオチならいいのだが、

調布飛行場に近いこの高台では、実際に米軍機との戦闘が行われ4人の死者がでたそうだ

そういえば深大寺の隣にも、深大寺城という高低差を活かした中世の城跡があったりして、崖の使われ方も本当にさまざまだ。

そんなさまざまな歴史に思いを馳せつつも、シンプルに高低差を楽しみたいものだ
もう一度富士山をみながらお別れしましょう

…ということで、スマホ/カメラの記事の比較、まとめるとこんな感じだ。 

これだけスマホの性能が上がっているんだし、カメラだけにこだわるんじゃなくて広角はスマホ、望遠はカメラのような使い分けをするのもいいかもな、と思った。
なにより住宅街でカメラ2台はあやしい。気をつけねば。

道端でカメラを構えてると通行人の人たちが続々とそのカメラの先に注目する。

その度に申し訳ない気持ちになる。

全然たいしたものは撮っていないのだ。

取材から帰ってくると、その場では面白いと思ったけど冷静になってみると…という写真が大量に入ってたりするものだ。

木の枝が垂直にひっかかっていた

 

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