ヤフーの「飛行機通勤OK」に衝撃 – ABEMA TIMES

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 「働く場所の選択肢をより拡充していきますし、“どこでもオフィス”のやり方の環境を支援していきたい」「最も自分のパフォーマンスが出る場所でやってください」(社員に向けたメッセージで川邊健太郎社長)

 コロナ禍に伴うテレワーク推進の流れが停滞、多くの企業がオフィスでの執務に戻りつつあるとみられる中、「Yahoo! JAPAN」などを運営するヤフーが居住地や通勤に関する規則や制限を撤廃することを発表、大きな話題を呼んでいる。

【映像】テレワークのメリデメを考える

■「他のIT企業に刺激を与えると思う」

 すでに同社では8000人の社員のうち約9割がリモートで業務を行っていたが、居住地については“午前11時までに出社できる範囲”に限定されていた。これが4月以降は国内であればどこに住んでもいいことになり、交通費の片道上限を撤廃、これまでは認めていなかった特急や飛行機による利用もひと月15万円を上限に認める。さらに通信費などの手当も月に最大1万円と増額、希望者にはタブレット端末の貸与も行う。

 今回の取り組みについて、パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員は、「かなり踏み込んだ判断で、他のIT企業に刺激を与えると思う」と話す。

 「感染の“波”が非常に読みにくい状態が続き、テレワークの位置付けについてなかなか意思決定することができない日本企業が多かった。また、これまでの日本の働き方は、非常に長い時間を同じオフィスで過ごしていたし、近所に血縁者や友達が少ないといった傾向から、会社の仲間がすごく重要だという人も多かった。それが失われることで寂しい、たまに集まって飲みたいよね、という声が必ず出てくる。そうした点についても周到に準備し、コミュニケーション施策も含めた具体策を伴っているので、一歩進んだものだと見ている」。

 自身も実家・自宅や旅先とオフィスの2拠点で仕事を続けてきたというラブグラフの村田あつみ共同創業者CCOは「私も含め、特に問題もなく、むしろ思った以上に満足度が高い。これまでは慣れた土地や入社して配属された土地で働き続けていたと思うが、その場所を選べる時代になったということだと思う」と話す。

「我々のようなスタートアップの場合、リモートワークだからこそ、コミュニケーションが口頭ではなくテキストに落としこまれることでドキュメントのような資産として残り、曖昧なタスクが減らせるようになっている。その意味ではどこでも働ける人財が欲しいという風にもなっていくのではないか」。

■「ネット系の会社だからできること」

 岸田総理も今月、「社会活動の維持の観点から企業・自治体におかれては前広にテレワークの拡大などBCP(事業継続計画)の準備を進めていただくようお願いする」と述べており、Twitter上にはヤフーの“飛行機通勤”などを羨ましがる声も上がっている。

 一方で、「潤沢な収益がなければ無理」「ネット系の会社だからできること」「在宅の方が楽をしていると見る上司が存在するから」と、こうした取り組みが日本で主流になることについては懐疑的な見方も少なくない。

 小林氏も「組織によっては、完全にテレワークにしてしまうことは難しい。実際、様々な調査で、日本企業はテレワークによって効率性が平均的に下がってしまうという結果も出ている。背景にあるのは、仕事が完全な“分担スタイル”になっておらず、“誰のものかも分からない仕事”が少なくないからだ。だからこそ皆が出社し、手が空いた人が“忙しそうだから僕やっておくよ”とその場で決めていくような、ある意味では柔軟な働き方をしていた。それは単純にITツールを導入すれば解決するわけではなく、コミュニケーション上の工夫が必要になってくる」と指摘する。

 また、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「会社ならオフィスの空気、大学ならキャンパスの空気を一緒に吸う、というところから人間関係が始まることもあると思う。初めて会うのがリモートだという人とは、やはりリモート以上の関係以上になりにくい難しさがあるのではないか」、ミス東大2019グランプリで東大医学部3年の上田彩瑛は「一昨年に入学した学生は、やっぱり新しい人脈も何もできなかったようだ。でも昨年入学した学生は授業がハイブリッドになったということもあって、学校にいる間に仲良くなれたと聞く。関係性を育てるという面では、やっぱり対面も必要なのではないか」と問題提起。

 小林氏は「テレワークに懐疑的な日本企業が多いのは、新卒一括採用との相性が悪いから、という側面があるということだ。社内に友達がいない新人をゼロから育てるというのはなかなか難しいし、本人にとっても共同体的なものに溶け込んでいきにくいという課題がある。その点、ヤフーさんの場合は研修を手厚くするということなのではないか」との見方を示した。

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