もしも新幹線の駅に置き去りにされたらどうしよう~上越新幹線の駅にひとり置き去り~

デイリーポータルZ

置き去りにされても楽しく過ごすヒントがここに。

新幹線の駅に一人だけ置き去りにされたらどうしよう。

そんなドキドキの状況を7人のライターに体験してもらいました。置き去りにされた人は知らない土地で何を見たのか。

※この記事は、2021年年末から2022年年明けにかけてデイリーポータルZに掲載された、ひとりで新幹線の駅に置き去りにされたみなさんの記事をまとめたものです。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:新幹線の駅でひとりだけ置き去りにされたい~上越新幹線編~

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

上越新幹線の駅に置き去り

みんなとの旅行中、ひとりだけ途中の駅で置き去りにされたらどんなに心細いだろう。想像するだけでも恐ろしいが、半面ちょっと体験してみたくもある。

今回は7名のライターを上越新幹線の駅にひとりずつ置き去りにさせてもらう。朝8時に東京駅に集まり、くじを引くまで自分がどこへ置き去りにされるのかはわからない。

置いて行かれる駅を知って喜ぶ人もいれば
膝から崩れる人もいました。

くじ引きの結果「置いてかれる駅」は以下のように決まった。

熊谷(3yk)、上毛高原(きだて)、越後湯沢(古賀)、浦佐(三土)、長岡(べつやく)、燕三条(井上)、新潟(林)

決まったらすぐに乗車である。置き去りにされた時の期待感(と絶望)をリアルに味わってもらうため、電車内でのスマホの使用は禁止とさせてもらった。

こんなに不安な旅立ちがかつてあっただろうか。

ひどい企画にも見えるが、帰りのチケットは全員に渡してある。その時間までに駅にいれば帰ってこられるわけだ。それまでの時間をどう過ごすか。なんとかこの状況を楽しんでもらいたい。

わかっていても一人で置いていかれると寂しさがすごい。
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置いていかれて最初に見た景色

今回もなるべく乗降客の少なそうな駅を選ばせてもらった(ちなみに前回はこちら)。その結果、置き去りにされたライターが最初に目にした風景は、彼らを打ちのめすのに十分な破壊力を持っていた。

熊谷でこれだ。

ほとんどの駅で人の気配がない。

上毛高原のアポカリプス感たるや。
のどかさがみぞおちにくる(浦佐)。

そんな中、越後湯沢で置き去りにされた古賀さんだけは祭りを見たと言っていた。

古賀さんが見た祭り(越後湯沢)

いま見ると人のいなさは他の駅と大差ないのだが(古賀さんの記事にも書いてある通り、取材時の越後湯沢は紅葉とスキーとのはざまのオフシーズンだった)、不安でいっぱいだった古賀さんにはこの状況でも十分「祭り」に見えた。

いっぽう、燕三条と長岡で置き去りにされた井上さんとべつやくさんは、その後の旅を暗示する景色を先に見せられていた。

でかいナイフとフォーク。このあと井上さんは自力でペーパーナイフを作ることになる(燕三条)
駅に現れた火焔土器。この後べつやくさんは大量の土器のかけらを見ることをこの時まだ知らない(長岡)

最終地点、新潟駅では新潟在住のライターつりばんど岡村さんが待っていてくれた。少し置き去りというコンセプトからは離れてしまうが、これは素直に嬉しい。

つりばんど岡村さん。実は生で会うのは初めてでした。

移動は主にバス

不安を胸に駅を出たはいいが、駅前は構内と同じくらいなにもなかったことだろう。とにかくどこかに移動したい。しかし車はないし自転車もない、そうなると頼りになるのはバスである。

3ykさんはまるで地元の人のようにバスに乗った(熊谷)。
浦佐の三土さんもノーアイデアでバスに。車窓からなにか見えたら降りるという海賊スタイルでの旅の始まりである。
越後湯沢の古賀さんは駅からスキー場へと直行した。まったく迷いがないのがすごい。
燕三条の井上さんはそのへんをふらふら歩いて信濃川を渡っていた。こういうなんでもない風景を撮りたくなるのもこの企画ならではかもしれない。

このとき井上さんはこう書いている。

>川沿いに「リバー」というホテルがあるのも良かった。

通常の取材記事ならまず触れない話だろう。

それぞれに今日の山場を迎える

しかしさすがは百戦錬磨のライター陣である。知らない場所に降ろされ不安を抱えながら移動していても、必ずなにかしらのイベントに出くわす。

ライター3yk(みゆき)さんはひょうたんアーティストに出会ったあと、軽トラに乗せられてほうれん草を収穫していた。

どういう流れなのか。

さっき信濃川らへんをふらふらしていた井上さんは、鍛冶体験工房に辿りついた。

このあと職人さんに「こんなにできない人、珍しいよ?」と言われ凹むことに。 

遺跡を見てキノコを買った時点で手詰まりになった上毛高原きだてさんは、着の身着のまま唐突にバスに乗って雪深い谷川岳へと向かった

旅館の女将だったら心配して警察に電話するところである。

雪山といえば駅からスキー場へと直行した古賀さんは、そのあとロープウェイに乗って無事ゲレンデに到着。自分は滑らずまたロープウェイで帰ってきたという。

滑っているのは古賀さんではなく知らん人である。

長岡のべつやくさんは地元の人と運の両方を味方につけ、縄文土器についてものすごく詳しくなって帰ってきた。

なんともタイミングよく本物の火焔土器と対面。

ところで、今回最も心配されていたのは浦佐駅で置き去りにされた三土さんではないか。何があるんだ浦佐には。

後日あがってきた記事を読んだら「暗渠があった」と書いてあった。暗渠はいわば地下に隠れた川なので、表面上は何も見えない。

そんな三土さんは田中角栄の像を情緒的に撮っていた。

旅の楽しみは食事

旅の楽しみはなんといっても現地で食べる食事だろう。みんなそれぞれの土地であらゆる手を尽くして少しでも美味い物を食べようと歩き回っていた。

火焔土器を堪能したべつやくさんは名物イタリアンに加え、けっこうな量のギョウザを食べて動けなくなっていた。
新潟の林さんはでかい生ガキを。
越後湯沢の古賀さんはスキー場からそば、そのあと温泉という勝利のパターン。
井上さんの食べていたラーメンも美味そうだった(これはまだ職人さんに叱られる前)。

ひとりぼっちからくる不安が地元の食べ物をより美味しく感じさせたのかもしれない。よかった、これぞ旅の醍醐味である。

しかしここでも三土さんは強烈な引きのよさを発揮する。浦佐は南魚沼市なので美味しい米が食べたいと、一生懸命食べられる場所を探したが結局どこも休みだった。

無情。

しかし、ごはんが食べられなかった三土さんが見た景色は、きっと他の誰の思い出よりも鮮やかに写ったに違いない。

三土さんが見たいい景色。

この景色を前に三土さんは書いている

>これはすごい。あまりにも綺麗だ。こんなところでご飯を食べてみたかった。

みんなさすがでした

今回も全員がいい置いて行かれ方をしてくれていた。帰りの電車に乗り遅れる人がいたらどうしようとずっと心配していたのだけれど、ちゃんと全員乗ってきたのもさすがである。

またいつか他の路線でやりたいと思います。

みなさんお疲れさまでした~。

 

それぞれの記事はこちら↓ 

みんなの一日を動画で一気にふりかえります。

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