幽霊ドーン!だけじゃない怪談の魅力を知ってほしい 〜怪談スクランブル交差点 Powered by渋谷渦渦

デイリーポータルZ

「渋谷渦渦」で採択されたイベント「怪談スクランブル交差点」が、東京カルチャーカルチャーで開催されます(2021年12月11日16時30分開場、17時開演)。

怪談スクランブル交差点

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次世代のホープとして期待される若手怪談師6名が出演するイベント。「怖いだけじゃない怪談の魅力を知ってほしい」と意気込む主催者の弁チャンさん、みちくささんにお話を聞きました。

左)弁チャンさん   右)みちくささん

聞き役・構成:榎並紀行(やじろべえ)

良い怪談には「深海を覗き込むようなワクワク感」がある 

――どうしてこういうイベントをやろうと思ったんですか?

弁チャン:
怪談って、少し誤解されているところがあると思うんです。事件や事故のショッキングな話でしょ?とか、ただ単に怖いだけでしょ?みたいに思われていて、なかには「怪談」と聞いただけで耳をふさいでしまう人もいらっしゃいます。でも、そうじゃないんだよって伝えたくて。
むしろ、怪談に苦手なイメージを抱いている人に意外な魅力を伝え、こっち側に巻き込みたいと思ったのが動機ですね。

――確かに、オチで幽霊が出て「キャー」となって終了。みたいなイメージがありますね。

弁チャン:
私も昔はそんなイメージでした。でも、好きになるうちにインパクトや怖さだけじゃない、怪談話そのものの面白さが分かってきましたね。物語や人間関係の奥深さ、その裏にある心模様など、優れた小説を読んでいるような気持ちになれるお話も数多くあります。

また、良い怪談ってただ怖いだけじゃなく、深海を覗き込むような得体の知れないワクワク感があると思うんです。真っ暗で何も見えずに不安だけど、思わず先に進みたくなるような気持ちにさせてくれる。最後のオチも、幽霊ドーン!みたいなものじゃなくて、聞き手の側に解釈を委ねて余韻を楽しんでもらうような怪談が個人的には好きですね。

――では、今回イベントに参加する怪談師のみなさんも、そういう方々をブッキングしたわけですか?

弁チャン:
今回ご参加いただく怪談師のみなさんは、怖さだけではない怪談の魅力を感じさせてくれる方々ばかりだと思います。怪談のスタイルもお話の集め方も、それぞれ全く違うので面白いですよ。例えば、アフリカで医療に従事していた時に現地の呪術師に弟子入りし、不思議な話をたくさん集めた人とか。あとは、場末のスナックを渡り歩いて不思議な体験を集めている人もいますね。

――呪術師からスナックまでって、ものすごく幅広いですね。というか、怪談話ってそんなふうに地道に集めるものだったんですね。

弁チャン:
基本、足で集めるものですね。わりと誰しも、不思議な体験を持っているものなんですよね。最初は「ない」って言うんですけど、お酒を飲みながら話しているうちに怪談の種になるようなエピソードが出てくるので、スナックは良い収集スポットです。私もよく集めにいきます。

みちくさ:
じつは今回の怪談も渋谷の街でインタビューをして、不思議な体験を集めました。怪談師のみなさんにはその生の声からインスピレーションを受け取って、怪談を生み出していただくことになっています。

――例えば、どんな話が集まっていますか?

弁チャン:
やっぱり、学校系は多いですね。時代が変わっても、学校で不思議な体験をした話は鉄板のようです。あとは、今回のインタビューの話ではないんですけど、コロナ禍のステイホーム期間中に自宅で怖い思いをしたという話はわりとよく聞きます。コアなオカルト好きが「ひとりかくれんぼ」っていうやってはいけない遊びに手を出して怖い目に遭ってしまったり……。

それから、最近はZOOMで怪談を集めている怪談師さんもいらっしゃるんですけど、通話が終わった直後から相手と連絡が全くとれなくなったなんてこともあるようです。

――もはやその出来事自体が怪談ですね。 

「語り」のスタイルの違いも見どころ

――話し方とか抑揚のつけ方なども、怪談師によって違いますか?

弁チャン:
講談師のように臨場感のある話芸を得意とする方もいますし、あえて抑揚をつけずに淡々と語り、そのまま終わる方もいます。あとは憑依型というか、登場人物の役になりきってしまう方だったり、稲川淳二さんのように語りかけるようにして聞き手を引き込み、最後にドーンとクライマックスへと持っていく方も。収集のスタイルだけでなく、語りにもさまざまなスタイルがあります。

――みちくささんもYouTubeで怪談語りをやっていますけど、どんなスタイルなんですか?

みちくさ:
僕がYouTubeでやっている怪談朗読では、「幽霊の演技」にこだわってますね。基本的には「癒し」をテーマにしているので穏やかな気持ちで聞いてもらいたいんですけど、そのなかでも何か一つ聞き手の頭に印象を残したいと思っていて、幽霊の演技をする時には全力で引かせにかかっています。

――みちくささんは今回のイベントにも登壇予定とのことですが、お客さんを前にすると話し方もちょっと変わったりしますか?

みちくさ:
そうですね。語りながらお客さんの様子を伺って、タメを作ったり、声色を調整してみたり、より伝わるニュアンスを探っていくような感じです。その上で、アクセントをつけるために幽霊の演技を入れることもあります。

怪談師によって話し方も駆使するテクニックも違うので、イベントでそのあたりも比較して楽しんでもらえたらと思います。

弁チャン:
今回、みちくささんには「クロス怪談朗読!」をやってもらうんですよね。

――クロス怪談朗読!……って、なんですか?

弁チャン:
1つの怪談を二人の怪談師にかわるがわる読んでもらいます。相手のタコス八郎さんも渋みのある良い声の怪談師さんなので、タイプの違う二人のコンビネーションをご覧いただきたいですね。 

怪談レジェンドは何がすごい?

――怪談は集めるものということでしたが、落語でいう「古典」みたいな話もあるんですか?

弁チャン:
そうですね。特に有名なのは「四谷怪談」「皿屋敷」「牡丹燈籠」の三話です。例えば四谷怪談は江戸時代後期の戯作者・鶴屋南北が創作しました。フィクションですが、歌舞伎でこの話をやるとたたりがあるというウワサが立ったため、上演前に歌舞伎俳優が「お岩さん」の墓を詣でることでも知られています。

――では、古典ではなく現代の名作怪談といえば何でしょうか?

弁チャン:
有名なのは稲川淳二さんの「生き人形」ですよね。あとは、2ちゃんねるのオカルト板から有名になった怪談などもありますが、やはり現代の名作といえばダントツで生き人形だと思います。

――やっぱり稲川淳二さんなんですね。

弁チャン:
なんせ、怪談師のレジェンドですから。あとは、北野誠さんや、いたこ28号さん、それから次世代の怪談界を担う存在として注目されているのが、今回のイベントでゲスト審査員をしていただく怪談家ぁみさんですね。ぁみさんは10年前から活動を始めて、稲川淳二さんから「次世代をよろしくね」と言われたほどの方です。

――そうした怪談界のレジェンドたちのすごさって、具体的にどんなところにあるんでしょうか?

弁チャン:
やっぱり唯一無二のキャラクターですよね。稲川淳二さんも北野誠さんも、ぁみさんもそこにいるだけで圧倒される存在感とオーラがあります。

みちくさ:
じつは僕が怪談を熱心に聞くようになったのは、ぁみさんがきっかけでした。彼の怪談はしっかり話を聞かせる部分と怖い部分のメリハリがきいていて、エンターテイメントとしての完成度がすごいんです。

ぁみさんもそうですが、上手な怪談師って聞き手を「怪談に寄り添わせる」ことができるんですよね。ステージと客席が離れていても、すぐ隣まで怖さが迫ってくるというか。なおかつ、聞き終わった後にいつまでも余韻が残る。家に帰ってシャワーを浴びている時に、思わず後ろを警戒してしまうような、そんな余韻を持たせる語り手は本当にすごいと思います。

 ――今回のイベントからも、次の怪談スターになるような人は生まれそうですか?

弁チャン:
今回のメインである「お題怪談」に参加いただく6名はいずれも活動期間5年以内の若手ですが、すでに業界では注目されている怪談師たちです。今回のイベントで、さらにステップアップしてくれたら嬉しいですね。本当にスター候補ばかりなので、ここで見ておくと後で自慢できるかもしれません(笑)。

――こういう大規模な怪談イベントって、これまでにもあったんでしょうか?

弁チャン:
竹書房さんが毎年開催されている「怪談最恐戦」など全国的なイベントはいくつかありますが、今回のように企業が全面的にバックアップしてくれる怪談イベントとなると、あまり例がないと思います。先日、渋谷Q-FRONTの大型ビジョンに「怪談スクランブル交差点」の告知を流していただいたのですが、あれは衝撃でしたね。怪談がそこまでクローズアップされることはなかなかないので、業界の方々にも注目していただいているようです。諸先輩方から「がんばれよ!」と声をかけていただいています。

――このイベントを通じて、怪談カルチャーをさらに盛り上げていきたいという思いもありますか?

みちくさ:
そうですね。やっぱり怖いだけじゃない怪談のカルチャーをどんどん広めていきたいです。今回は音楽と怪談のセッションなど、いろんな角度から興味を持っていただける仕掛けもありますので、ぜひ「怪談スクランブル交差点」をきっかけに怪談の世界にどっぷり浸かってほしいと思います。

渋谷渦渦 企画募集中

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