【Hothotレビュー】君はもう有機ELノートを見たか?ASUSが仕掛ける差別化戦略の中の1台。「Zenbook Pro 15 OLED」をレビュー

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ASUS「Zenbook Pro 15 OLED UM535QA」。直販価格21万9,800円

 ASUS JAPANは2021年11月24日、13.3型のモバイルノートから16型のクリエイター向け重量級ノートPCまで、計9製品27モデルものノートPCを一気に発表した。発表製品の多さにも驚いたが、一番驚いたのは発表された製品のすべてに有機EL(OLED)ディスプレイが搭載されていたことだ。27モデル全部にである。

 最近のノートPCは似たり寄ったりの製品が多く、スペック以外の部分では大きな違いが見られない製品ばかりになってきている。そんな状況へのASUSの攻めの一手が、今回の全製品への有機ELディスプレイの搭載という差別化だ。数あるノートPCの中で、画面の綺麗さを一番に求めるのならASUSのノートPCを選んでください、というわけである。

 発表された製品は大きく分けると4シリーズある。

 Adobe製品対応のダイヤルコントローラやRTX A5000 GPUなどを搭載したクリエイター向けの16型ノートPC「ProArt Studiobookシリーズ」2製品5モデルに、一般用途からクリエイター用途まで幅広く対応し、GeForce RTX 3050搭載モデルも用意した16型と15.6型の「Vivobook Pro X/Vivobook Proシリーズ」4製品15モデル。

 グラフィックスパワーを必要としないパワーユーザー向けに15.6型と13.3型の「Zenbook Pro/Zenbookシリーズ」を2製品5モデル。そして、タブレットとしても使えるライト層向けの13.3型2in1ノートPC「Vivobook 13 Slate OLED」1製品2モデルの計9製品27モデルとなっている。

 そんなたくさんのノートPCの中から今回レビューするのは、グラフィックスパワーを必要としないパワーユーザー向けという位置付けの15.6型ノートPC「Zenbook Pro 15 OLED UM535QA」(以下、Zenbook Pro 15 OLED)だ。ASUSの発表では「プレミアムノートパソコン」と呼称されている製品である。

オールマイティに使える重量級ハイパワーノートPC

 Zenbook Pro 15 OLEDは、CPUに8コア16スレッド動作のRyzen 9 5900HXを搭載したAMDプラットフォームのノートPCだ。搭載CPUからも分かる通りスペックは高めで、メモリには高クロックのLPDDR4X-4266メモリを16GB搭載し、ストレージにはPCI Express 3.0 x4接続のM.2 SSDを1TB搭載している。

 なお、単体のGPUは搭載していない。マシンパワーが高いので、動画を見たりWebサイトを見たりプライベートで画像加工をしたりといった用途から、さらにはビジネス用途まで、グラフィックスパワーを必要としない用途なら何にでも快適に使えそうだ。

 ディスプレイにはタッチパネルを搭載しており、画面を直接触って操作を行なえる。2in1ノートのようにタブレットの形にはならないので、USIペンのようなスタイラスペンには対応していない。

 それならタッチパネルは不要という気もするが、動画の一時停止や写真の拡大の操作など、あればあったで便利に使える。タッチパネルというのは、なくても大して不便ではないが、あることに慣れてしまうとないことが不便に感じてしまうタイプのものだ。プレミアムノートPCを謳う本製品としては、やはり搭載しておきたい。

 ほかにもビジネスソフトとしてMicrosoft Office Home and Business 2021を付属しており、何でも搭載していてオールマイティに使える全部入りノートPCと言える製品となっている。

 また、本製品は15.6型ディスプレイを搭載していて本体も大きく、持ち歩いて使うというタイプのノートPCではない。どっしりと据え置きで使うタイプのハイパワーノートPCである。

CPUはかなり強力で、最高4.6GHzで動作する8コア16スレッドCPUのRyzen 9 5900HXを搭載している

SSDにはWestern DigitalのPC SN730 NVMe SSDを搭載。読み出し速度最大3.4GB/s、書き込み速度最大3.1GB/sのSSDだ

【表1】ASUS Zenbook Pro 15 OLED UM535QAのスペック
モデル名 UM535QA-KY212WS
CPU Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.3GHz~4.6GHz)
メモリ LPDDR4X-4266 16GB
ストレージ SSD 1TB(M.2、NVMe、PCI Express 3.0 x4)
グラフィックス Radeon Graphics(CPU内蔵)
ディスプレイ 15.6型有機EL(1,920×1,080ドット)
主なインターフェイス USB 3.1(USB 3.2 Gen 2) Type-C、USB 3.0(USB 3.2 Gen 1)、HDMI、SDカードスロット、ヘッドフォン/マイクコンボジャック
通信機能 Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)、Bluetooth 5.1
バッテリ駆動時間 非公開
OS Windows 11 Home
付属ソフト Microsoft Office Home and Business 2021
本体サイズ 356.7×239.5×19.65mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約1.855kg
直販価格 21万9,800円

ハッとさせられるほど鮮やかな有機ELディスプレイ

 本製品の一番の特徴は、やはり有機ELディスプレイだ。その実力は実際どうなのかというと、いやはやこれは、さすがの綺麗さである。とにかく鮮やか。黒色は本当に黒く、黄色や白色は輝いているかのようで、赤色がこれでもかと存在を主張してくる。

 画面全体がハッキリクッキリとしていて、液晶と比較して例えるなら、液晶の画面を覆っていた薄い膜のようなものを取り払ったような見え方である。この画面を見ると、液晶の色って薄かったんだなあ、なんて感じてしまう。目で見た現実の世界以上のようにも見える鮮やかさ、これはなかなかすごい。

 中でも海や空、花や森林といった、色が濃くて明るめの写真や映像が特に綺麗だ。階調表現がすばらしく、夕焼けや青空のグラデーションが実に綺麗に見える。明暗差が激しい映像も得意で、花火や星空は「おぉ」と声が出てしまうほどで、液晶とは別格の映りである。撮りためた写真を映せば今までとは一味違った感動が得られ、好きな映画を見れば今までよりももっとその映画のことが好きになるだろう。

 全体的にすべての写真や動画がよりリアルに映し出される。ちなみに現実世界に存在しないもの、例えばWindowsのインターフェイスやエクスプローラのファイル表示あたりは液晶との差をあまり感じることがなかった。文字が若干見やすいかもしれないという程度で体感上は誤差レベルである。鮮やか過ぎて事務作業などで目が疲れないか心配という人は安心していい。

 有機ELの映りとは関係ないが、解像度が1,920×1,080ドットで画面サイズが15.6型と大きいので、Windowsの表示スケールを初期設定の125%から等倍表示の100%にしても文字が極端に小さくならず、画面を広く使える。これは大型のノートPCならではの使いやすいところだ。

広色域対応などの細かい仕様と有機ELの焼き付きへの対応

 本製品の有機ELディスプレイにはほかにも多くの特徴がある。ここではそれらの細かい仕様面を紹介する。搭載機能の羅列に近いので興味がない人はこの節は飛ばしてもらって構わない。

 まず、本製品は広色域に対応しており、DCI-P3カバー率が100%、sRGBカバー率は133%を実現している。取引先などとの正確な色情報のやり取りを行なえるPANTONE認証も取得しているので、色表示の正確性が求められる用途にも対応できる。

 HDR規格のDisplayHDR 500 True Blackの認証も取得しており、HDRコンテンツにも対応可能だ。コントラスト比はさすが有機ELディスプレイということで驚きの100万:1を実現しており、画面の応答速度も0.2msと高速である。

 また、低輝度での表示に強く、画面の輝度を下げても正確な色表示を行なえるとしている。ほかには、オン/オフ可能なブルーライト軽減機能を搭載しているので、長時間使用する際に目への影響を最小限に抑えることができる。ブルーライトの軽減度合いは、使用している有機ELディスプレイ自体のブルーライトも少ないようだが、一般的な液晶と比べて70%少なくなるというなかなかのものだ。

 有機ELディスプレイということで焼き付きが気になるところではあるが、これについてはいくつかの対策が施されている。1つがダークモードの設定だ。本製品ではWindowsのダークモードが出荷時にオンに設定されていて、焼き付きが起こりやすい明るい表示をなるべくさせないようにしてある。

 なお、同様にタスクバーもWindowsの初期設定とは異なる半透明に設定されており、こちらも焼き付きを軽減するためのものだ。2つ目の対策が特別なスクリーンセーバー機能の搭載である。30分以上アイドル状態が続くと有機ELディスプレイを保護するスクリーンセーバーが起動する。

 このスクリーンセーバーは、画面上のすべてのピクセルの発光をオン/オフできる特別なもので、焼き付きの可能性を低減してくれる。

 3つ目の対策機能はSamsung製の焼き付き防止技術の搭載だ。劣化し始めた素子を検出すると、その素子への電流を増やすことで正常な素子と同じ発光状態にすることができる。焼き付き防止というか、すでに焼き付いたものを校正する機能だが、まあともかくこの機能によって映りへの影響は抑えることが可能だ。

 そして最後がピクセルシフト機能の搭載である。この機能では、使用者に気付かれない程度に画面の表示内容を定期的に微妙に動かすことで焼き付きを軽減してくれる。注意して見ていたが、この機能が動いたことを確認できなかったので、本当に気付かない程度に動かしているのだと思われる。

ASUSの有機ELディスプレイ搭載製品専用の焼き付き防止機能の設定画面。PCでは同じ場所に同じ内容が表示され続けることが多いので、焼き付き防止機能の有無は重要だ

PCのアイドル状態が30分続くと有機ELディスプレイを保護するための特別なスクリーンセーバーが起動する。これはWindowsのスクリーンセーバー機能とは別の機能である

ステレオ感と立体感がある気持ち良い音を鳴らすサウンド機能

 有機ELディスプレイを見るために色々と動画を見ていて思ったのだが、この製品はなかなか気持ち良い音を聞かせてくれる。スピーカーは1Wスピーカーを本体前側の左右に1つずつ搭載しているだけだが、とてもそうとは思えない。

 特別にサウンドに力を入れている製品ではないが、ステレオ感が良く左右から鳴る音がはっきり分かるので聞いていて気持ちが良い。サラウンドに対応しているわけではないのに定位感が良く、音の方向も良く分かる。

 音質としてはノートPCらしい低音がない軽い音で、音量も最大にしてもうるさくない程度の音量しか出ない。だが、軽くても耳に刺さるような音質ではなく、音量も最大音量にしても音が割れることはなく安定している。全体に大変バランス良くまとめられているサウンド機能だ。音楽にしても映画にしても、本体のスピーカーだけで気持ち良く聞くことができる。

 また、マイク兼用の3.5mmステレオミニジャックを本体の右側に搭載しているのと、Bluetooth 5.1にも対応しているので、気軽にスピーカーやヘッドフォンを使用できる。本製品を映画などの視聴環境としてメインに使うのなら、スピーカーを追加するかヘッドフォンを使えばより満足度は高くなるだろう。

本体の前側の左右2カ所にスピーカーを搭載してる。ここだけを見ると音にはあまり期待できなさそうに見えるが、驚くことになかなか気持ち良い音を鳴らすことができる

本体の右側面には3.5mmのヘッドフォン/マイクコンボジャックを搭載している。Bluetooth 5.1にも対応しているので気軽にスピーカーやヘッドフォンを接続できる

テンキーを搭載するフルサイズに近いキーボードを搭載

 キーボードは日本語103配列のキーボードで、なんとテンキーを搭載している。そのためか本体サイズが大きいわりにはキーボードはフルサイズではなく、キーピッチは18.7mmだ。ただ、わずかに狭いだけなので打ち辛いということはなく、特に違和感なく使える。

 また、キーストロークは1.35mmで、やはり本体サイズを考えると少し浅い。とは言え、キーストロークの深さは好みが大きく出る部分なので、浅いキーストロークが好きな筆者にはなかなか打ちやすく感じた。1.35mmなら一般的な14型くらいのノートPCと比べれば深いので、ほとんどの人は気にならずに使えるのではないかと思う。

 肝心のテンキーは結構無理やり入れた感があり、そのあおりを受けて半角/全角キーやCtrlキー、¥キーやBackspaceキーなどが縦に細長い変則サイズのキーとなっている。テンキー自体も縦に細長く、テンキーを搭載するために色々と苦労したであろうことが伺える。その甲斐あって、この製品では数字入力が多い用途であっても別途テンキーを用意する必要はない。テンキーを多用する人にはうれしい仕様だろう。

 本体にはおもしろいギミックがあり、画面を開くと本体の奥側が持ち上がってキーボードが3度ほど手前に傾くようになっている。仕組みは簡単で、キーボードが持ち上がるのではなく、ディスプレイを支えるヒンジ部分が下に出っ張ることで本体自体を傾けさせる仕組みだ。

 適度な傾きは長時間使用時の疲労を軽減するということで、実際に傾きがないキーボードよりも打ちやすい気がする。デスクトップPC向けのキーボードでも通常は少し傾きがあるので、筆者のようにデスクトップPCとノートPCの両方を使う人にとっても、この仕様は結構うれしい。

 ちなみにタッチパッドは表面がサラサラとした通常サイズのボタン一体型のもので、大き過ぎず小さ過ぎず多くの人に対応できるちょうど良い大きさのものを搭載している。

 このようなボタン一体型のタッチパッドの場合、クリック操作のためにタッチパッドを軽くポンッとタッチすると、中身が空の箱を叩いたような音がするものが多い。この製品も同様で、結構ポコポコという音がして少しだけ気になった。なお、やさしくタッチすれば音は鳴らないので、筆者のタッチが強過ぎるということも原因の1つな気はする。

キー配列は日本語103配列。テンキーを搭載しているので数字入力が多い用途にも対応できる

バックライトを搭載したキーボードなので使用時にはキートップが光る。明るさはオフ+3段階に変更できる

主要なキーのキーピッチは18.7mmで、特に狭さを感じることなく違和感なく使える

画面を開けるとヒンジ部分が出っ張って本体が手前に約3度傾く。ノートPCでも打ちやすいキーボード角度を実現する仕組みだ

タッチパッドのサイズは実測で105.0×73.5mm(幅×奥行き)。大き過ぎず小さ過ぎず万人に使いやすいサイズだ

インターフェイスやそのほかの搭載機能など

 インターフェイス類は、本体の左側面にUSB 3.2 Gen 1 Type-Aを1ポートに、HDMIを1ポート、さらにSDカードスロットを搭載している。右側面には、USB 3.2 Gen 2 Type-Cを1ポートと3.5mmのヘッドフォン/マイクコンボジャックを搭載。ACアダプタと接続するための電源端子も右側面にある。

 Webカメラは、画面上部のベゼル部分に92万画素の赤外線対応Webカメラを搭載している。Windows Helloに対応しているので、顔を登録しておけばPCの起動と同時に顔認証で一瞬でログインを行なえる。

 Windows Helloは最近のノートPCであればほとんどの製品が対応しているので、まだ体験したことがない方はぜひ試してほしい。本当に便利な機能だ。この製品の場合はWebカメラが赤外線に対応しているので、周囲が真っ暗な環境でも顔認証を行なうことができる。試してみたが、本当に真っ暗闇の中でも問題なく顔認証を行なえた。

 Zenbook Pro 15 OLEDには、AIノイズキャンセリング機能というユニークな機能があり、音声チャット時などにこちらからのマイク入力だけでなく相手側の音声にもノイズキャンセリングを適用することができる。実際に使ってみたところ、相手の音声へのノイズキャンセリングの効果は残念ながらよく分からなかった。

 一方、こちらのマイク入力へのノイズキャンセリングは結構強力で、ノイズと言っていいのか分からないが、いつもボボボボボ~と鳴っていた部屋の水槽の音がほぼ消えて自分の声だけになっていた。音声チャットをよく行なう人には結構有用で使える機能だろう。

 ASUSの製品には、もしもの故障時のための「ASUSのあんしん保証」というサポートサービスがあり、この製品も対象製品となっている。

 ASUSのあんしん保証は、製品の保証期間内に通常の保証では保証できない内容、例えば製品を落として壊したり水没して壊したりといったあらゆる故障内容に対して、修理にかかる部品代の20%の料金で製品を1回だけ直してくれるというサービスだ。

 検証費や工賃といった料金は一切かからない。保証期間は製品の保証期間と同じ購入時から1年間となっており、購入から30日以内に製品登録を行なうだけで有効になる。

 この保証はなんと言っても無料なので、他社製品に対するASUS製品の大きなアドバンテージとなっている。なお、製品購入後60日以内に1万4,800円を支払うと、この故障対応サービスの保証期間が3年になり、1年に1回3年で計3回まで部品代などもかからず完全無料で修理できるようになる。こちらに関しては自分の使い方を考えて検討すると良いだろう。

左側面には左からUSB 3.0 Type-A×1、HDMI×1、SDカードスロット×1を搭載している

右側面は左からUSB 3.1 Type-C×1、ヘッドフォン/マイクコンボジャック×1、電源端子×1を搭載

Webカメラの動作時にはレンズの左横のLEDが点灯するのでカメラのオン/オフが分かりやすい。また、赤外線使用時にはレンズの右横が大きく赤く光る(写真では白いが目で見ると赤い)

AIノイズキャンセリング機能には使用環境に応じた設定が用意されており、自分の用途に合わせて最適な設定を選択できる

使ってみて気になったところなど

 Zenbook Pro 15 OLEDは全体に完成度が高く、良くできたノートPCだ。そんなZenbook Pro 15 OLEDを使ってみて、ここはちょっと気になったという部分を紹介する。

 まずは有機ELディスプレイについて。正確な色表示を行なえることも本製品の特徴の1つなので筆者が見慣れていないせいなのかもしれないが、赤が過剰に鮮やかに見えて気になってしまった。赤い花や赤いドレスなどがどうも強調されているように見えてしまう。赤が鮮やかに見えるのは有機ELディスプレイの特徴でもあるので、慣れの問題なのかもしれない。

 もう1つがキーボードだ。テンキーを搭載するために縦長の変則サイズのキーになっている場所があるが、筆者は普段変則サイズのキーがないフルサイズのキーボードを使っているため、変則キーの場所でどうしても入力ミスが起きてしまう。

 筆者の場合は特にBackspaceが致命的だった。また、テンキーも細長くてうまく使えなかった。これは慣れれば問題ない部分なので、この製品だけを使う予定の人や、そもそもあまり文章を打たない人には何の問題もない。もし文章をよく打つ人で、2台以上のPCを使う予定の人は、自分が多用するキーが変則キーになっていないか確認した方が良いだろう。

 気になったのはこの2つくらい。基本的には多くの人に使いやすい、完成度が高いノートPCだ。

驚異的なバッテリ駆動時間と大変高い冷却性能

 バッテリ駆動時間の公証値はこのレビューを書いている2021年12月29日時点では計測中となっていて未公開だ。この文章を書いたり、YouTubeで動画を見たり、Webブラウザを使ったり、PDFで資料を見たり、試しにCinebenchを実行してみたりといった使い方で約12時間30分使用できた。思っていたよりもすごく長く使用できて驚きだ。

 軽い処理が多かったので長めにはなっていると思うが、それにしてもこの製品のスペックで12時間30分は驚異的である。家の中やオフィスの中を持ち歩いて使ってもバッテリだけでほぼ1日使用できる。すばらしいバッテリ持ちだ。

 なお、充電時間はバッテリ残量が3%で強制休止状態になってから、電源を入れた状態で充電を行なって約2時間10分で100%まで充電できた。こちらもなかなか早い。

ACアダプタのサイズは実測で約137.5×68.5×24.0mm(幅×奥行き×高さ)。重さはケーブルを含めて452g

ACアダプタの仕様は20.0V/7.5Aで最大150W。ハイパワーなノートPCだけあって結構な大出力だ

 動作音はほとんどの処理でほぼ無音で、ときどきファンの音かな? というような音は鳴っていたが注意していないと気付かない程度のものだった。ベンチマークテストを実行したときにだけシューというそこそこ大きな音がしていたので、高負荷状態が続くともしかすると気になるかもしれない。だが、基本的には大変優秀な静音性能である。

 本体の熱は主に左右の後ろ寄りにある排気口から排出されており、高負荷時には排気口部分からファンヒーターかというくらいの熱い空気が出てくる。ただ、本体そのものはあまり熱くならず、排気口付近はさすがにあたたかくはなるものの、キーボードやパームレスト部分など使用中に手が触れる部分に関してはほとんど熱さを感じなかった。Zenbook Pro 15 OLEDは、冷却面が大変優秀なノートPCだ。

本体左右の後ろ寄りに大きめの排気口があり内部の熱はここから排出される。この部分以外はあまり熱くならず、使いやすさの面でも優秀な冷却機能である

あらゆる面で高い性能を持ったハイパワーノートPC

 最後にZenbook Pro 15 OLEDの性能をベンチマークテストで確認する。使用したベンチマークソフトは、UL Benchmarkの「PCMark 10 v2.1.2532.0」と「3DMark Professional Edition v2.22.7334.0」。ゲームベンチマークとしてスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」。CPUの性能を見るためにMaxonの「Cinebench R23.200」と「Cinebench R20.060」。そしてSSDのテストに「CrystalDiskMark 8.0.2」を使用した。すべてのテストはACアダプタに接続した状態で電源設定などは初期設定のまま行なっている。

 PCMark 10の結果を見てみると、App Start-up ScoreとSpreadsheets ScoreとPhysics scoreのスコアが突出して高い。App Start-up Scoreはソフトの起動時間の速さを測るテストで、Spreadsheets Scoreは表計算ソフトを使用する際の演算性能を測るテスト、そしてPhysics scoreはゲームでの物理演算性能を測るテストだ。OpenCLが使われているのでGPUの影響がないわけではないが、いずれも主にCPU性能が大きく反映されるテストである。特にPhysics scoreはすべてのCPUコアにスレッドを割り当てて演算を行なうため、マルチスレッドの処理性能が大きく反映される。

 というわけで、さすが8コア16スレッドCPUのRyzen 9 5900HXを搭載したノートPCである。CPUの性能が高く、特にマルチスレッド性能が大変優れているということが分かる。

【表2】PCMark 10 v2.1.2532.0の結果
PCMark 10 Extended Score 5,550
Essentials 10,653
App Start-up Score 14,947
Video Conferencing Score 8,755
Web Browsing Score 9,240
Productivity 10,087
Spreadsheets Score 12,366
Writing Score 8,229
Digital Content Creation 7,218
Photo Editing Score 10,519
Rendering and Visualization Score 7,351
Video Editting Score 4,865
Gaming 3,307
Graphics score 4,321
Physics score 22,963
Combined score 1,389

 3DMarkでは、PCMark 10と同様にCPU性能を測るNight Raid CPU ScoreとTime Spy CPU Score辺りのテストで良い結果を出している。一方、GPU性能が反映されるテストでは単体GPUを搭載していないわりにがんばってはいるが、GeForce GTX 1650辺りと比べてもちょっと太刀打ちできない程度の性能だ。まあ、このノートPCで重めのゲームをプレイするということはないと思うので、この結果自体は特に問題ないだろう。

【表3】3DMark Professional Edition v2.22.7334.0の結果
Night Raid Score 17,444
Night Raid Graphics Score 18,613
Night Raid CPU Score 12,866
Wild Life Score 8,501
Time Spy Score 1,457
Time Spy Graphics Score 1,274
Time Spy CPU Score 7,948

 続いては実ゲームのベンチマークソフトであるファイナルファンタジーXIVの結果だが、最高品質と高品質(デスクトップPC)の結果がそれぞれ「設定変更を推奨」に分類されるスコアとなり、この2つの設定ではプレイすることが厳しいという結果となった。

 CPUに内蔵したグラフィックス機能を使うノートPCなので当然と言えば当然の結果である。一方、高品質(ノートPC)では「普通」に分類されるスコアとなり、標準品質(デスクトップPC)と標準品質(ノートPC)では「やや快適」に分類されるスコアとなった。つまり、この辺りのゲーム設定にすればファイナルファンタジーXIVを問題なく遊べるということだ。

 重めのゲームが厳しいということに変わりはないが、ファイナルファンタジーXIVが遊べる性能ということは結構色々なゲームを遊べる性能ということなので、もしZenbook Pro 15 OLEDでゲームを遊びたいといった場合でも、結構大丈夫ということになる。

【表4】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークの結果
1,920×1,080ドット最高品質 3,554
1,920×1,080ドット高品質(デスクトップPC) 3,769
1,920×1,080ドット高品質(ノートPC) 4,731
1,920×1,080ドット標準品質(デスクトップPC) 6,074
1,920×1,080ドット標準品質(ノートPC) 6,079

 次はCPUのレンダリング性能を測るCinebenchの結果だ。Cinebenchでは、Cinebench R23.200の方がCinebench R20.060よりもテスト時間が長く、高負荷状態が続いた場合の熱の影響が加味されたテストとなっている。

 結果としてはノートPCとしてはかなり優秀な結果となった。シングルコアの結果は4コア8スレッドCPUのCore i7-1165G7辺りとほぼ同じスコアだが、Ryzen 9 5900HXは8コア16スレッドCPUなのでマルチコアのスコアがCore i7-1165G7辺りのCPUの倍以上になっている。

 マルチスレッド処理の効率が良いようで、以前テストしたCore i7-1165G7のCinebench R23.200スコアではシングルコアに対してマルチコアのスコアが約3.83倍だったのだが、このRyzen 9 5900HXの場合は約8.25倍とコア数以上のスコアを出している。PCMark 10の結果と同様に、Ryzen 9 5900HX、つまりZenbook Pro 15 OLEDはマルチスレッド性能が大変高いノートPCと言える。

【表5】Cinebenchの結果
Cinebench R23.200
CPU (Multi Core) 12,334
CPU (Single Core) 1,495
Cinebench R20.060
CPU 4,855
CPU (Single Core) 584

 最後はストレージの性能を測るCrystalDiskMark 8.0.2の結果を見てみよう。冒頭で書いたように、Zenbook Pro 15 OLEDはWestern DigitalのPC SN730 NVMe SSDというM.2 SSDを搭載している。公称速度は読み出し速度が最大3.4GB/sで、書き込み速度が最大3.1GB/sだ。

 結果を見てみると、大体公称値通りの性能が出ていることが分かる。シーケンシャルのリードとライトの値は、一般的なノートPCが搭載しているSSDと比べるとかなり速く、特に書き込み速度が速い。

 一方、ランダムリードとライトは、シーケンシャルリードの速さに対してランダムリードが若干遅い。とは言え、標準的な速度は出ているので体感レベルで気になることはないだろう。つまり、Zenbook Pro 15 OLEDのストレージ性能はかなり高い。

【表6】CrystalDiskMark 8.0.2の結果
1M Q8T1 シーケンシャルリード 2,885.26MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト 3,112.81MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード 2,054.42MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト 2,482.90MB/s
4K Q32T1 ランダムリード 450.20MB/s
4K Q32T1 ランダムライト 595.48MB/s
4K Q1T1 ランダムリード 45.23MB/s
4K Q1T1 ランダムライト 141.18MB/s

ノートPCに画面の綺麗さと性能を求める人に最適

 まずZenbook Pro 15 OLEDは、ノートPCをあまり持ち歩かない人のためのノートPCだ。このノートPCが同じカテゴリのノートPCと比べて特別に重いというわけではないが、15.6型ノートPCとして特別に軽いというわけでもない。15.6型サイズというのはそもそも持ち歩くサイズではないので、据え置きで使うことをおすすめする。

 Zenbook Pro 15 OLEDは大変高い性能を持ったノートPCだ。CPUは速く、メモリも速く、ストレージも速い。そしてメモリ容量もストレージ容量も十分に多い。単体のGPUを搭載していないことだけが欠点だが、この製品のCPU内蔵GPUは重いもの以外ならゲームを遊べるくらいには高性能だ。

 動画を見る、Webサイトを見る、趣味で写真や動画を編集する、ビジネスソフトで仕事をする、というようなノートPCの多くの用途に高い性能で対応できる。なにをやっても大体快適だ。この製品を買っておけば、何年間かは分からないがかなりの長い間、ノートPCに対して遅いという感情を持つことはないだろう。

 ほかには見た目も良い。高級感があるノートPCなので、ただ置いてあるだけで部屋の中が少し洗練された雰囲気になるような気がしてくる。スタイリッシュなデザインで使っていて気持ちがいい。このノートPCを使っている自分がデキる人間のように思えてくる。とにかく雰囲気最高のノートPCだ。

 そして何と言っても有機ELディスプレイ。驚くほどの鮮やかさ。引き締まった黒。液晶ディスプレイと比べると、薄いベールを取り払ったかのようなハッキリとした画面。一度見た写真や映画が一段階美しくなったような体験ができる。そんな環境を手に入れられるのが、有機ELディスプレイを搭載したZenbook Pro 15 OLEDの大きなメリットである。

 この性能やデザインや映像体験に21万9,800円を出してもいいなと思った人には大変満足度が高いノートPCになるだろう。

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