ニューイヤー・ブルースを乗り越え

アゴラ 言論プラットフォーム

1年の最後の日をドイツ語圏ではシルベスターと呼び、各地で人々が集まって過ぎ行く年を忘れ、賑やかに新年を迎えるのが慣例となっている。音楽の都ウィーンでは31日、シュテファン大聖堂周辺で多くの市民が集まり、新年を告げる正午零時の鐘が鳴ると、ヨハンシュトラウスのワルツを踊り、シャンペンで乾杯しながら新年を迎える。大晦日除夜の鐘を境に近くの神社に行って新年の健康と幸運を祈る人が多い日本とは違って、当地では31日は街に繰り出して、花火を見ながらニューイヤーをカウントダウンして迎える。

わが家に住むジャッキー&ポッキーからの挨拶 「今年1年ありがとう。新年もよろしくね」

2021年は新型コロナウイルスが世界を席巻し、パンデミック(世界大流行)となって多くの犠牲者を出した年だ。コロナ禍は欧州でもこれまでの伝統、習慣、慣例の全てをを打ち破った(幸い、2022年のニュー・イヤー・コンサートは無観客で開催された2021年とは違い、限定された数のファンが楽友協会に入場可能となった)。

シルベスターは本来、レストランや特定の飲食店は深夜まで営業する。“シルベスター・メニュー”と呼ばれる食事は普段の2倍の値段とちょっと高いが、1年最後のシルベスターメニューを楽しんだ後、街に出てワルツを踊って新年を迎える。今年もコロナ規制のためにその情景は見れない。政府のコロナ規制委員会が、「シルベスターは夜22時で営業閉店すべきだ」となったのだ。レストランのラスト・オーダーは21時半、22時になるとゲストは外に出ていかなければならない。シルベスターの祭りもこれではおじゃんだ。ということで、飲食業界は最後まで政府のコロナ規制に猛反対している。

ただし、新型コロナウイルスの感染動向はやはりそれを認めないだろう。多くの人々が集まり、大騒ぎする場所はコロナウイルスにとっても絶好のチャンスとなる。4回目のロックダウン(都市封鎖)明けから数日間、新規感染者数は減少したが、ここにきてウイルスの変異株オミクロン株がオーストリアでも猛威を振う気配が出てきたからだ。

政府は「家でシルベスターを過ごし、新年を迎えてほしい」と懸命にアピールしている。ウイルス学者たちは「シルベスター・パーティは危険だ」と警告を発するが、国民の中には強い抵抗がある。オーバーエステライヒ州では31日夜10時からコロナ規制反対、ワクチン接種の義務化に抗議するデモ集会が開催されるという。警察当局は、「シルベスター規制を破る国民は厳格に処罰される」と述べ、国民に自制を促している。

ところで、ニューイヤー・ブルースという言葉をご存知だろうか。社会心理学者がこの時期になると使用する表現で、「年の終わりから新年にかけ、憂鬱になり、眠れず、やる気がなくなる人々が出てくる。新型コロナウイルスの感染とその規制が長期化することで、コロナ・ブルースと呼ばれる精神的落ち込みがみられるが、ニューイヤー・ブルースも症状は似ているが、年末年始にかけての精神的、心理的落ち込み現象を意味する」という。

ニューイヤーは本来、新しい年を迎え、目標をたててスタートする時だが、ブルー(憂鬱)になる人が出てくる。理由は様々だ。欧州では年最大のイベントのクリスマスが終わり、シルベスターを迎えると、一種の“祭りの終わり”だ。興奮して緊張していた神経は解かれ、体力的にも疲れが出てくる。そのうえ、夕方4時には外は暗くなる。外で何かするといった雰囲気はない。そのうえ、コロナ・ブルースも重なってくると、人は深い憂鬱の世界に陥り、そこから出てくることが難しくなるわけだ。

ウィーン市ではニューイヤー・ブルースに陥った市民へのホットライン、相談所がある。社会心理学者は、「規律ある生活を過ごすべきだ。深夜までテレビを観て、昼頃目を覚ますような生活はよくない。家族や知人、友人と話す時間を大切に」とアドバイスしている。

ウィーンでは2021年はロックダウンで始まり、ロックダウン明けで幕を閉じた1年だった。22年に入ればオミクロン変異株の猛威を迎える。そのような中で希望を失わず、目標を立てて生きていくのは大変だ。コロナ禍も3年目を迎えるが、全てには始まりがあるように、終わりがある。この期間をニューイヤー・ブルースに陥ることなく、精神的にも体力的にも挑戦的な日々を過ごしたいものだ。

2021年の1年間、お付き合いしてくださいまして有難うございました。皆様に神の祝福がありますように。

Nastco/iStock(編集部)


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました