『鬼滅の刃』の変な商品とかないかなあ。そんな気持ちでアメリカのAmazonで「Demon Slayer(鬼滅の刃の英語タイトル)」と検索してみたところ『Immortal Demon Slayer』という映画がヒットした。何だコレ? 実写映画なんですけど。
しかも、プレビューの動画を見ると登場人物は全員アジア系だ。英語タイトルで登場人物がアジア系ばかりというところに匂い立つようなB級感を感じる。が、レビューを見てみたところ、なんと90%もの人が高評価をつけているではないか。ますます何だコレ!?
・日本のAmazonで発見
さらに、2021年12月1日時点でのレビューの内訳は、最高の5つ星が74%。高評価90%というだけでも凄いのに、その中でも5つ星の割合が半端じゃないのである。俄然見てみたい。しかし、私(中澤)は英語ができない。
『Immortal Demon Slayer』について調べてみたところ、2017年の中国映画『悟空伝』の英語版であるようだ。そこで、日本のAmazonで悟空伝を検索してみると……2021年に日本のAmazonプライムでも字幕版が見放題配信されている!
・西遊記2017
それと同時に分かったのは、どうやら、西遊記をモチーフにしたインターネット小説を元に作られた作品らしいということ。悟空の時点でなんとなく想像はついていたが、中国がガチで作った西遊記2017ってどんなものなのか。
古代中国をVFXで表現した仙人と妖怪のロードムービーみたいな感じ? 私の想像としてはそんなところで、B級である可能性や、日本人的にイマイチ共感できないドラマが繰り広げられる可能性も覚悟で見たわけだが……
・最高すぎる
結論から言うと最高すぎた。『悟空伝』は旅というよりもバトルアクションが中心になっているのだが、VFXとカンフーが混ざったようなバトルの派手さは惹きこまれるものがある。VFXと言うと、個人的には派手だが不自然になっていることも多いイメージだが、本作のVFXの自然さにはガチ感を感じた。
西遊記と言うよりドラゴンボールみたい。そのため、見始めた当初はエフェクトが売りのアクションを観る映画なのかと思ったが、これがなかなかどうしてストーリーがよくできている。
・少年マンガの熱さが詰まったようなストーリー
悟空以外のメインキャラは、当初、天宮に乗り込んだ悟空が起こした騒動を治めるために登場した3人。そのため、悟空は一貫して天宮では裁かれる側なのだが、最終的には天宮のトップである上清天尊がおかしいという方向に話がいく。
悟空はいわゆるダークヒーローとして描かれており、3人の仲間は天宮と悟空との絆の間で揺れ動く。その苦悩や死を越えていく感じは非常に胸アツだ。ストーリーがそんな胸アツ展開のスペシャルパックみたいになっているのである。
言い換えれば、もの凄くジャンプ的なベタシーンの連続。エリートっぽい楊戩(ようせん)の闇落ちとか、もはや拳を突き上げずにはいられない。普通は実写でマンガ的表現が出てきた際ちょっと引いてしまう私だが、本作は引いた距離以上に惹きこんでくる圧倒的熱量がある。
・実写にしてドラゴンボールを超えるスぺクタクル
2時間のうち1時間20分くらい戦ってるのに、これだけバトルにちゃんと意味が持たせられているのは凄い。ちなみに、最後の30分に至ってはセリフもほとんどない。
要するにガチ。圧倒的にガチ。背景がクロノ・トリガーみたいになってるのも、最後に上清天尊が女神転生みたいになるのも全てがガチ!
『西遊記』と言えば見たことあるのは堺正章と夏目雅子のドラマのみだった私。神と妖怪のロードムービーみたいなものだと思っていたが、女神転生みたいになった上清天尊をぶち壊すシーンはドラゴンボールすら凌駕するスペクタクルと言える。
正直、見終わった後、アメリカのAmazonレビューの評価の高さにも納得がいった。また、マンガやゲーム的な表現をうまく取り入れている本作は日本人にとっても見やすいものとなっていると思う。前述の通り、現在Amazonプライムで見放題となっているため、機会があればぜひ見てみてくれ。
参考リンク:Amazonプライムビデオ「-悟空伝-(字幕版)」
執筆:中澤星児
イラスト:稲葉翔子