ニューノーマルはすでにノーマルとなり、街の鼓動は再び力強く脈打ちはじめている――。
そんななか日本の業界関係者たちは、2022年にどんな課題を感じ、どんな可能性を見出しているのか? この年末年始企画「IN/OUT 2022」では、DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブに伺った。
アドビ株式会社にて、バイスプレジデントを務める秋田夏実氏の回答は以下のとおりだ。
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――2021年に得たもっとも大きな「成果」はなんですか?
2021年も続くコロナ禍、収まってはぶり返す感染の波のなか、私たちの生活や仕事、教育、エンターテイメントなど多くの領域においてデジタルファーストな社会へと変化しつつある。外出が制限されるなか、オンラインの店舗でより多くの人がより幅広い購買活動を行うようになった。また、ソーシャルメディアに触れる時間も大幅に増えた。店舗で提供できた顧客体験はオンライン、デジタルへと舞台を移し、顧客体験の評価は、瞬時にSNSなどで拡散される。デジタルでは、企業・ブランドと顧客の接点が、購買前からアフターケアまでいたる。顧客体験管理(CXM)の重要性が増している。
優れたデジタル体験には、心を動かすコンテンツを最適なタイミング・人・チャネルで届ける必要がある。アドビは、Creative Cloud, Document Cloud, Experience Cloudという3つのクラウドを通じて、優れたコンテンツの制作や提供など顧客体験の実現を支援している。3つのクラウドを融合する形でより高い価値を提供すべく、アドビは2021年、「心、おどる、デジタル」という日本独自のビジョンを打ち出し、社内外で訴求・浸透を図った。優れた製品から、優れた体験を提供する、変革の支援という事例も多く出てきている。
また、社内では、依然テレワークを中心とした働き方が続いているが、そのなかで、どのように社員が力を発揮できる環境を提供できるか、自らのリーダーシップスタイルとしてきたサーバントリーダーシップの考えを中心に取り組んできた。結果、テレワーク下においても、毎年実施している調査においてエンゲージメントスコアが向上するという結果が得られている。
――2021年に見えてきたもっとも大きな「課題」はなんですか?
TeamsやZoomなどのデジタルツールを活用したテレワークが常態化するなか、どのように効果的に複数の社員が協働するか、また非対面なやりとりでもどのようにクリエイティブでありつづけられるのかが課題になってきている。
アドビでは、グローバルイベントのAdobe SummitやAdobe MAXなどは、2021年もすべてオンラインで開催した。オンラインでの開催は2年目となり、ノウハウも蓄積したことから前年以上の成功を収められた。
一方で、やはり働き方においては、対面での業務の良さも実感している。アドビでは、社員に対し、Future of Work(新しい働き方)の方針を打ち出している。デジタルファースト、デジタルと対面のハイブリッド型、そしてフレキシブルが基本となっている。今後、ハイブリッドな働き方のなかでどのようにチームとしての力を最大化していくかが課題となる。
マーケターとして注目していることは、Cookielessの問題。2023年には、Google ChromeでサードパーティCookieが使用できなくなり、サイトをまたいだ情報収集が困難となるため、従来のやり方ではユーザーを正確に把握することが難しくなる。ファーストパーティデータが一層重要になってくる。
また、アドビの調査では、消費者の約半数は企業の提供するパーソナライゼーションに満足しておらず、消費者の求める顧客体験の水準が高まっていることがわかった。一方で管理者層でのデータガバナンスに対する理解に遅れが出ているという結果も出ている。
――2022年にもっとも注力したい「取り組み」はなんですか?
2022年にアドビは創立40周年、日本法人は30周年を迎える。変化が激しいIT業界においては老舗企業だが、アドビは自らを変革することで、その時代に必要とされるものに先手を打って取り組んできた。
企業のデジタルトランスフォーメーションが進むなかで、生産性や効率性にのみ目を向けるのではなく、デジタルによって生活はより豊かで、ワクワクするものにできると考えている。優れた顧客体験を実現するには、コンテンツとデータが鍵となる。アドビの提供するソリューションであるCreative Cloudでは顧客が望む最適なコンテンツをスピーディに制作でき、Experience Cloudにより顧客ごとにパーソナライズされた最適なアプローチの実現を期待できる。アドビのソリューションを複合的にご提案することで、企業やブランドのマーケティングをシームレスに支援させていただくべく注力していく。
またチームマネージメントの観点からは、デジタルを中心としつつも対面も取り入れたハイブリッドでフレキシブルな新しい働き方の実現に向けて、チームメンバーの声に耳を傾けながらしっかりとサポートしていきたい。
Edited by DIGIDAY[日本版]編集部