上皇さまが2021年12月23日、88歳の米寿の誕生日を迎えた。19年に平成から令和への天皇の代替わりがあり、12月23日が「天皇誕生日」として祝日だったのは18年が最後。現在の天皇誕生日は2月23日だ。
だが、12月23日午前時点で「上皇陛下」「上皇さま」以外にも「天皇誕生日」などがツイッターに「トレンド入り」した。代替わりから3年経っても12月23日が平日になったことを忘れる人や、祝日であって欲しいと願う人もいるようだ。ただ、明治天皇の誕生日(11月3日)は「文化の日」、昭和天皇の誕生日(4月29日)は「昭和の日」として祝日になっている。12月23日は、なぜ「平成の日」として祝日にならなかったのか。
「上皇誕生日」だと「二重権威」の懸念
昭和天皇の誕生日だった4月29日は、昭和天皇逝去から約1か月後の1989年2月15日に参院本会議で「国民の祝日に関する法律」(祝日法)が可決・成立し、「みどりの日」になった。その5日前の2月10日に開かれた衆院内閣委員会で、的場順三・内閣内政審議室長(当時)が、改正案の提案理由を次のように説明している。
「昭和天皇が崩御されて今上陛下が即位された。従って、天皇誕生日は4月29日から12月23日に変わる。長年慣れ親しんできた、かつゴールデンウィークの最初の日である4月29日をどうするかということからいろいろ議論が起こり、これを平日に戻すということも一案だが、いろいろな方の意見を聞き、官房長官が私的に各界の有識者を集めて懇談会を開いて意見を聞いた」
私的懇談会構成員の25人全員が4月29日を引き続き祝日にすべきだとの見解だったといい、祝日の名称には
「ちょうど時期的にも緑のゴールデンウィークの始まりでもある緑の豊かな季節であるからみどりの日が適当ではないか」
として「みどりの日」を選んだとした。
平成→令和の代替わりと異なるのは、(1)天皇の逝去にともなう代替わりだった(2)天皇誕生日が大型連休の初日だった(3)代替わり後に4月29日をどうするか議論が起こった、という点だ。裏返せば、12月23日が現時点で祝日になっていないのは(1)いわゆる「生前退位」による代替わりだった(2)連休ではない独立した祝日で、4月29日に比べれば国民生活への影響が小さい(3)12月23日を祝日として残すべきだという議論が盛り上がったわけではなかった、といった事情がありそうだ。
退位を1年半後に控えた17年12月には、12月23日を平日に戻す方針が報じられている。その理由は
「上皇の誕生日を祝日にすると事実上の『上皇誕生日』になり、新天皇の誕生日と併存して国民の目に『二重の権威』と映る懸念があるためだ」(毎日新聞)
といったもので、上記(1)の要素が大きいようだ。
4月29日については、たびたび「昭和の日」への変更を求める法案が提出され、3回目の2005年に可決・成立。07年から名称が変更された。「みどりの日」は、「国民の休日」だった5月4日に移動した。