(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国では北京冬季オリンピックのボイコット論がなお広まっているが、そのなかで連邦議会下院は、中国の女子有名テニス選手、彭帥(ほうすい、ポンシュアイ)氏を巡る事件に関して、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長を非難する決議をこのほど全会一致で採択した。
この決議は、彭帥氏が受けたセクハラや人権弾圧の疑惑に関連してバッハ会長とIOCが中国当局のカバーアップ(隠蔽工作)に加担したと糾弾した。米国の政府や世論を代弁する議会のIOCに対する全面対決の姿勢は、今後のオリンピック運営にも大きな影響を与えそうだ。
彭氏の本当の状況は不明のまま
米国議会下院本会議は12月8日、「国際オリンピック委員会(IOC)は自らの人権誓約から逸脱した」と題する決議案を全会一致で採択した。同決議案は下院外交委員会のジェニファー・ウェックストン議員(民主党)とマイケル・ウォルツ議員(共和党)によって共同提案され、外交委員会を経て本会議で可決された。
同決議は、彭帥氏が中国政府の元副首相・張高麗氏に性的関係を迫られたという趣旨のネット投稿をしたことに関して、中国政府の抑圧の動きとともに、その中国政府の行動を承認しているIOCのバッハ会長の言動を厳しく糾弾している。