LayerXは12月10日、SaaS事業として展開している請求書AIクラウドサービス「LayerX インボイス」を始めとする「LayerX」シリーズの名称について、「バクラク」シリーズに変更すると発表した。
同社では、1月の「LayerX インボイス」リリースを皮切りに、4月には「LayerX ワークフロー」、10月には「LayerX 電子帳簿保存」をリリースし、サービスを拡充している。サービス名の改称は、サービス価値を直感的に認識できるようにするため。これにより新名称は「バクラク請求書」「バクラク申請」「バクラク電子帳簿保存」になるという。
求人にSaaS環境が記載され「バクラクを導入していない会社で働くなんてありえない」を作る
発表にあわせて説明会を実施し、LayerX 代表取締役CEOの福島良典氏らが改称の狙いなどを語った。福島氏はLayer Xインボイスとしてサービス開始以来、順調に導入社数が増えており、直近9カ月で2000%(約21倍)と成長。サービスの継続率も高く、会社の本社統合にともなう事情により利用停止となった1件はあるものの、解約社はゼロの状態を状態を維持していると説明。さらに同サービスで処理されている請求書の総額は月次140億円、年換算で1700億円規模にもなり、使われるサービスとしての手ごたえを感じているという。
LayerX 執行役員の牧迫寛之氏は、このタイミングで改称する背景として、利用企業数の増加傾向が継続されており、直近では東京以外の全国での利用が広がっているためという。リリース初期は東京のIT企業が導入しており、LayerXとしての認知度も一定数あったが、東京以外の地域かつさまざまな職種の企業が導入していくなかで、LayerXの読み方がわからないということや、インボイス制度に対応したサービスなのではという誤認も一部で発生していたと振り返る。こうしたことから、顧客に向けて提供価値がわかりやすく、何ができるサービスなのかが伝わりやすい名称に変える判断にいたったという。
バクラクの名称については、数百の候補から選定。導入企業から届いた声には「請求書処理が楽しくなった」というようなエモーショナルな反応が多く、「機能提供スピードが爆速」「OCRの処理速度が爆速」「バックオフィス業務が圧倒的にラク」といった言葉からエッセンスを取り入れて策定したという。
ブランドロゴについても働くワクワクを連想できるような親しみやすいデザインを意識して作成。キャッチコピーもコーポレート業務を楽にしたいという狙いと思いから「ハタラクをバクラクに」となったと語る。
福島氏はリブランディングに対する思いとして、「仕事で触るサービスは使いづらい」という常識を変え、「仕事で触るサービスにもワクワクを」提供したいと語る。
「会社が決めたサービスは使いづらいが、仕事だから仕方がないという諦め」という考えや、実際そういうことがあると指摘する一方、いわゆる“toC”にあたるプライベートで活用されているサービスでは、改善スピードも速く「使いやすい、なめらか、ワクワク」という言葉にイメージされるような扱いやすさがあり、エモーショナルな体験ができるものと説明。その体験こそLayerXが目指すものと強調する。
福島氏はメルカリを例に挙げ、写真を撮影すると価格やキャプションがサジェストされ、売れたら自動でメルペイにチャージされ、そのまま利用できるというシームレスな便利さがある体験と説明。一方請求書の処理については、紙をスキャンしアップロード、経理担当者などがデータは手で打ち出しを行い、仕訳や支払管理は手入力、支払いは都度インターネットバンキングなどで行うが、会社のPCでなければ接続できなくて出社する必要がある。こうした例を挙げ「これはありえない。でも仕方ないよね、となっていた」と指摘。これを踏まえて、働く時間に使うサービスもコンシューマが選ぶ時代にしていきたいという。
さらにこれを進めて、会社選びの判断になりうるツールにしていくことも重要だとする。例えば、エンジニアの求人に開発環境や使用言語があるのは当たり前であり、それが応募の判断要素になっていることに触れ、現状バックオフィスの求人にSaaS環境は書かれることがまずないが、ある企業が求人の使用環境として「Layer Xインボイス」と書かれていたことが嬉しかったとし、それが当たり前に書かれるような状況になり、「バクラクを導入していない会社で働くなんてありえない」を作りたいと展望を語った。
今後について、直近ではバクラクシリーズの導入目標について、1年後をメドに3000社超を目指すとともに、採用やマーケティングの強化を図る。さらにその先のロードマップとして、請求書受取を基点として、BtoB取引市場全体にサービスを拡大していく方針を示す。それぞれの領域における体験にこだわり、自社サービスでの展開やパートナーとの協業施策などはメリハリを付けて進めつつ、使いやすいプロダクトを提供していくとした。