世界で初めて高級キノコ「アミガサタケ」の安定した屋内人工栽培方法が確立される

GIGAZINE
2021年12月09日 21時00分



欧米では高級食材として流通しているアミガサタケは、世界各地で人工栽培方法の確立に向けた取り組みが行われており、日本でも岐阜県岩手県で屋外での人工栽培に成功した例が報告されています。そんな中、デンマークのアミガサタケ人工栽培プロジェクトチーム「The Danish Morel Project」が1年を通したアミガサタケの屋内人工栽培方法を確立したことを発表しました。

The Morel Project – The Danish Morel Project
https://thedanishmorelproject.com/the-morel-project/

The Danish Morel Projectは生物学者のジェイコブ・カーク氏とカーステン・カーク氏からなるプロジュエクトチームで、1980年代からデンマークの王立獣医農業大学コペンハーゲン大学などの研究機関と協力しながらアミガサタケのアミガサタケの屋内人工栽培方法について研究を行っていました。


研究の当初は、アメリカで1986年に登録されたアミガサタケの屋内人工栽培方法に関する特許を基に人工栽培を再現することを目的としていました。しかし、特許に記された方法では人工栽培を再現することはできず、特許に記されていない物理的・科学的・生物学的条件を試行錯誤しても再現は不可能だったとのこと。The Danish Morel Projectは「アメリカの特許はアミガサタケの特定の株に対してのみ有効な方法である」と結論付け、菌核から子実体を形成させる条件を独自に探求することにしました。

そして、1998年には子実体を形成させる適切な条件を突き止め、2004年の春には屋外で1平方メートル当たり1108gの平均収量でアミガサタケを栽培することに成功。さらに2005年の秋には屋内で1平方メートル当たり349gの平均収量でアミガサタケを栽培することに成功しました。


屋内でのアミガサタケ栽培に成功したThe Danish Morel Projectは、1年を通してアミガサタケを安定栽培できる方法を確立するべく研究を続けました。研究の過程でアミガサタケの栽培に適切な組成の土壌や、最適な温度条件、屋内栽培に適した遺伝的変異体などが突き止められ、徐々に安定した栽培が可能になったとのこと。そして2021年6月30日には1平方メートル当たり約4.2kgのアミガサタケが収穫されました。The Danish Morel Projectは「栽培方法の最適化を続けた結果、ついに1年を通してアミガサタケを屋内栽培する方法が完成したと発表できることを非常に嬉しく思います」「この方法は非常によく開発されており、栽培プロセスを適切に自動化した後、商業生産を開始できると結論付けました」と述べ、安定した屋内人工栽培方法の確立を宣言しています。


確立された栽培方法では、22週間の総栽培期間で平均重量約25gのアミガサタケを収穫可能で、年間収量は約10kgに及びます。また、野生のアミガサタケは生育条件によって品質にバラつきがあり品質が悪い場合は価値が下がりますが、確立された方法では屋内で安定した品質のアミガサタケを生産可能で、その価格は1kg当たり1500デンマーククローネ(約2万6000円)と想定されています。加えて、野生のアミガサタケでは不純物が含まれることから乾燥アミガサタケの戻し水は廃棄される傾向にありますが、屋内生産されたアミガサタケは戻し水を用いてソースなどを安全に作れるメリットがあるとのこと。


The Danish Morel Projectはアミガサタケの屋内人工栽培を商業化することに取り組む予定です。また、より良い変異体の探求や栽培プロセスの改善も進めるとされています。

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2021年12月09日 21時00分00秒 in , Posted by log1o_hf

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